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2019-10-09

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・いまの小学校の校庭は、そんなふうではないだろうが、
 ぼくのおぼえている小学校の庭には、なにもなかった。
 どこかに鉄棒やブランコがあったような気がするけれど、
 あとは真ん中あたりに、なにかのじゃまをするように、
 妙に枝ぶりのいい松が植えてあって、それは
 「一本松」と呼ばれて校歌にも歌われていたものだった。

 なにもない校庭に、ズック靴の底を引きずるようにして、
 大きく、「日」という文字のかたちに線を描いたら、
 それはドッジボールをはじめるぞという合図だったし、
 同じように、大きな正方形の4つの角に、
 小さな四角を3つと、将棋のコマのような5角形をひとつ、
 やっぱり靴底で地面に描き出せば、
 それは、野球をやろうぜという招待を意味していた。

・校庭に、だれかが足を引きずって線を描き出す。
 なにもかもが、そこからはじまる。
 小学生のときから、それはあんまり変わらない気がする。
 地面に、線を引く。
 ボールを持ったやつや、バットを持ったやつが集まる。
 グラブだって、けっこういくつも集まってくる。
 そして、なによりも、選手たちの笑顔がそこに集い、
 あのプールの柵をこえたらアウトだとか、
 ファール36本でアウトだとか、
 校舎の窓ガラスを割ったら「べんしょう」だとか、
 いくつものローカルルールの下で試合ははじまる。

 この1年くらいの間、ぼくらは、靴をひきずるようにして
 いくつかのラインを描いていた。
 ルールも、それに合わせて考えてきた。
 仲間うちで、試合がはじまってからのたのしさや、
 そこに集まってくれる観客のことなんかを想像していた。
 いろんな人たちに声をかけているうちに、
 エース投手や、強打者や、校庭の管理人さんや、
 バットを振り回したい人たちが集まりはじめている。
 こりゃぁ、いよいよ、「プレイボール!」できるぞ。
 来年あたりの試合の予定が立ちはじめてきた。
 この1年、不器用に線を引いてきてよかったなぁ。
 おもしろい試合が、いっぱいできそうだ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
人が集まる、それはたのしいから。まぁ、見ててください。


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