【喩姫】
四方に小細工馳せらす、一知半解な比喩が目立つ
正に「遼東のいのこ」が仕組まれた文
主軸が曲がりだす様な、偽りばかりを並べた下手な比喩は要らない
自称ばかりが詩を並べる、意図無かれ主義の詞人共よ
少しは構成に気を払え
頭上を仰いで、早々に差を知れ
暁に降りし、詠み人の名は喩姫
言葉のみで制す「あいうえお」の詩想犯
さて今日はどんな比喩で罵ろうか
【深淵】
舌で影をなすその形とは何か 膜をさするのが物語の中身か
紙の上に紙にのり眼下を見下ろすのすら 欺瞞だが今度は詩の朗読か?
雄弁に杖を掲げる卑猥さを 誇らしげに誰の腹へ突き刺したと
蛇のような瞳で語るとは しかも図々しく己の詩をひけらかすのか
偽りの定義を自我照らす鏡を持ち 自我に問え、肉をまといにやけた姿紐解き
その醜悪に蝕まれ朽ちろ 蜻蛉の斧も続かず見透かされる机上
【喩姫】
鏡に映るは、春を詠む女神の肖像画
何も案ぜずともこれは詩の朗読だ
あなたは舌先の文字しか見えぬ色眼鏡で詩をどう読む気か
詩とはimageが形をなす無形の彫刻碑だ
眼前に座るは自活を知らない無機物な刺客かな
はたまた杖を自ら刺されに来たサディスティックな自虐家か
否定しか知らない者など詩劇には要らない
型にはめられた心得を剥がせ
そして、
例え醜くとも己を晒せ
所詮は束の間の支配の後に、終劇には無様に姜れる身
雌が雄を喰らう蜻蛉の摂理
【深淵】
嗅覚を逸した鼻の先に未だ消えぬ 己を晒せぬ忸怩からか同じ舌が見える
惨憺たる矮小の美化も辞さずに 妄想とやらへ何のつもりか媚び出す詩
体温なき非現実を依然と看過できぬ 最早形而上の祭壇に立つ危険を孕んでいる
遅々として進まぬ実感へその憧憬が とぼとぼと歩むなら一旦目を戻すべきだ、生ぬるい現実へ
革靴に善意詰め旗を振る聖者達 “汝の道はまだ途中でしかない”
憐みに酷似した嘲笑を浮かべ 呟くのだろ、“彼らのは想像力かね?”
無の羅列を見つめる肉塊は 腰掛けた椅子が何か気付けずに腐りな
この深淵の瞳に写る彫刻碑は 粘ついた糸で踊る傀儡と嘘吐きだ
【喩姫】
鼻腔に御怠慢な概念を詰めたまま一体何を嗅いだんだ?
晩春に響くは、敵愾心を着こなした上での哀願か…?
何を唄おうとあなたに寄り添うは形而下の疎外感だ
根拠を喉元に置き忘れた盲滅法が虚空を舞う
これより諭すは、競争馬の牛歩学
聞け
進歩とは、喘いだ数だけの苦悩が歩数を成す
そして、
常に物書きとは優雅に葛藤と錯綜の地べたを這う
後ろ向く目など元より付いてはおらぬ
椅子があれども、腰掛けはしないさ
休まず歩む道半ば堀当てた光は、
この道の続きを照らす灯火
この道の上に終点などありはしない
冠と、れんがの間に立ち、
ただ繰り返すは、意の範疇をも凌駕する、際限無い自己探求のみだ
深い悲しみの淵に映るは
解れた意図が操りし傀儡か
【深淵】
振り返ることのない苦悩 優雅に地べたを這う心が必要
苦悩が、喘ぎが僕らを歩かせるという 濁音と共に反吐と化すバケツの水
勇気と希望、それは現実を見るのとは違う 僕には光なき道を歩む覚悟が何時も側にある
“民よ、集えよ”と宣言する眩い表明が 摂理にすらなるのか、ただ無知の癖にか
そして紙の上の紙に立ち上がり 僕の紙を取り語る“虚無など焼いちまいなさい”
己を見、何時しか蛇の瞳をそこに見て これは僕ではないなどという独り言を聞いて
瓦礫が感覚をがらがらと打つ 体温には存在しない新たな恐怖
かつての僕と酷似した 貴方が居る道路上に今
何が見えているのだろう 僕は冠とれんがの間にて明主を待とう