※本稿は、富岡幸雄『消費税が国を滅ぼす』(文春新書)の一部を再編集したものです。
国民所得に対する租税収入は低くなってきている
世界をグローバリズムの潮流がおおい、その深化が進んだ平成の時代、日本の税制の構造も大きく変化しました。強く指摘しておかなければいけないのは、30年の間に「国の財源調達」「所得と富の再配分」「国民経済の安定」の3つを使命とする税制が翻弄され、大きくゆがめられてしまったという点です。
なによりも深刻なのは、税の財源調達機能が低下してしまったということです。それを示すのが、「租税負担率」の低下です。この数字は、個人の所得や企業利益を含めた国民全体の所得の総額である「国民所得」に対する、租税収入の占める割合です。この数字が高ければ国民の税負担は高く、低ければ収入の割に税負担が低いという意味です。
財務省の資料をみると1989(平成元)年度には27.7%だったものが、2003(平成15)年度には平成では最低の20.6%を記録しています。税収総額がバブル期を超えて過去最高の60兆3564億円となった平成30年度の租税負担率は、24.9%と、平成元年の水準には及ばない数字です。
平成の30年間で消費税は3%から5%、5%から8%と2度も税率がアップしていますが、それでも租税負担率は下がっています。税収が伸びても、社会保障費の膨張による歳出増に追いつけず、国と地方の財政赤字は拡大する一方です。そして、その赤字は将来の世代に回されているのです。
かように財源調達機能が低下したのは、平成の30年間で行われた税制の変更が、税収の構造を変質させてしまったからです。個人所得税の税率も1989(平成元)年は50%でしたが、2015(平成27)年には45%へ下がっています。しかし、それよりも法人税の地盤沈下は著しいものがあります。