米政府、中国政府機関に禁輸措置 ウイグル人弾圧に関与と
アメリカは7日、中国当局による新疆ウイグル自治区でのウイグル人弾圧に関連し、28の中国政府機関や企業への禁輸措置を発表した。今後は、米政府の許可なしに米企業から商品の購入ができなくなる。
米商務省によると、禁輸対象となったのは、「人権侵害や虐待行為に関与している」政府機関や監視機器の技術会社など、合わせて28の機関や企業。
複数の人権団体は、中国政府が主にイスラム教徒のウイグル人を収容所内でひどく虐待していると主張している。一方、中国側はこうした収容所は、過激思想に対抗するための「職業訓練所」だと反論している。
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アメリカは過去にも、中国企業などへの輸出を規制してきた。
今年5月、ドナルド・トランプ政権は国家安全保障上の懸念があるとして、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への輸出を規制した。
弾圧行為に関与
米商務省の発表によると、禁輸対象となったのは、新疆にある公安省など20の地方政府機関と、世界でも有数の監視機器メーカー「ハイクビジョン(Hikvision)」や「ダーファ(Dahua Technology)」、「メグヴィー(Megvii Technology)」など、顔認証技術に特化した企業8社。
「中国政府によるウイグル人やカザフ族、そのほかのイスラム教徒の少数民族に対する抑圧や大規模な恣意(しい)的拘束、ハイテク監視技術」に関わっていると、商務省は説明している。
現在、貿易戦争の渦中にあるアメリカと中国は、10日にワシントンで閣僚級の貿易協議を行う予定。
新疆で何が
中国政府は、新疆のウイグル人は過激主義に対抗するために設けられた「職業訓練所」に通っていると説明する。
しかし複数の人権団体や国連は、中国政府が最大100万人のウイグル人や、ほかのイスラム教徒を収容していると主張している。
こうした中国政府の弾圧行為に対し、アメリカなどの国々から非難の声が高まっている。
ロイター通信によると、マイク・ポンペオ米国務長官は2日、中国は「国民に対して、神ではなく政府を崇拝するよう要求している」と非難した。
今年7月には、国連人権理事会(UNHRC)加盟の22カ国が、ウイグルやイスラム教徒の処遇について中国政府を批判する共同書簡に署名した。
ウイグル人とは
ウイグル人は、民族的にはチュルク系のイスラム教徒。主に新疆ウイグル自治区に居住しており、同地域の人口45%を占める。人口の40%は漢民族。
1949年に毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言。かつて新疆に存在した東トルキスタン共和国への侵攻の末、中国は同地域を再び支配した。
ここ数十年、中国の多数派民族の漢民族が多数、新疆に移住しており、ウイグル人は自分たちの文化や生活が脅威に直面していると感じている。
新疆は正式には、南側のチベット同様、中国内の自治区に指定されている。
<解説>中国のAI大手を標的に――カリシュマ・ヴァスワニ、BBCアジアビジネス担当編集委員
今回のアメリカによる禁輸措置は紛れもなく、最新技術分野での中国の野望を損なうことになる。少なくとも短期的には。
中国は自分たちの未来を人工知能(AI)産業に託しているが、米政府は今回、そのAI業界の大手各社を対象にしたからだ。
その一方で、AIのアルゴリズム・トレーニングに用いられる部品の製造は今のところ、インテルやモヴィディウス(Movidius)、エヌヴィディア(Nvidia)といった米企業に集中している。
そして、米政府が米技術の技術提供を規制すればするほど、中国企業はますます自給自足を追求するようになる。
今年5月にファーウェイが輸出規制の対象となった直後、中国企業は携帯端末用基本ソフト(OS)の独自開発を始める方針を明かした。米グーグルのOSを得るには米政府の許可が必要となるためだ。
OS以外にも、米技術の代替となる技術開発が進められている。
米中貿易戦争は、技術分野にまで拡大している。消費者はいずれ、「完全に中国製」の製品か、「完全にアメリカ製」の製品か、そのどちらかを選ばなくてはならなくなる。