大佛次郎の旧茶亭、売却を模索 難しい維持、保存を前提
作家の大佛(おさらぎ)次郎(1897~1973)が接客に使った旧茶亭(神奈川県鎌倉市雪ノ下1丁目)が売りに出されている。
1919年築で、市の景観重要建築物だ。大佛のめいで養女の野尻政子さん(90)と、その息子の芳英(よしふさ)さん(70)が維持に不安を感じ、保存を前提に買い取ってくれる人を探している。
JR鎌倉駅から徒歩9分、かやぶきの木造平屋建て147平方メートルの旧茶亭は1千平方メートル超の敷地に立つ。鶴岡八幡宮への参道近くにあり、門や板塀が続く周辺は「かまくら景観百選」に選ばれている。
大佛はこの茶亭で、里見紝ら鎌倉文士や出版社の編集者らをもてなした。名人と評判のすし職人を呼んで客に散らしずしをふるまい、客が「こんなぜいたくはない」と感激したとも伝えられる。その後は家族が管理を引き継ぎ、近年は週末だけ「大佛茶廊」として喫茶営業したり(9月で閉店)、鎌倉風致保存会が一般公開したりしてきた。