アルベドさん大勝利ぃ!【完結】   作:神谷涼

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 いよいよ最終回です!



最終回:このあと滅茶苦茶セックスした

 

「どうだアルベド。これで私と真に対等の――おぼぉ!?」

「このクソ骨ぇぇっ!!!!」

 

 アルベドの拳で、顔を撃たれモモンガは吹き飛んだ。

 ギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが手放され、中空に浮かぶ。

 地底の岩場にその身がぶつかった。

 

「おま、ちょ、そこは平手だろ。今までで一番ダメージ受けてる!」

「あ゛ぁ゛?」

 

 一瞬、顔と首がかなりまずい状態になったが。淫魔の再生能力は、こと外見についてだけは無駄に高性能だ。血反吐を吐いた口の中が即座に治り、首も元に戻る。HPはかなりの量が減っていたが……。

 アルベドは兜を解除し、モモンガが見たことのない顔で睨んだ。

 

「こわっ!」

「おのれの所業の方が怖いわ! このメンヘラがぁ!」

 

 全身から紫のオーラが立ち上り、口は裂け、まさに般若の顔。

 ドスドスと、地響きすら立てながら歩み寄ってくる。

 モモンガは身をすくめるしかできない。

 

「待って、いやちょっと待って! 話し合お――」

「待つか!」

 

 襟首を掴み、持ち上げる。

 そして希望通りの平手打ち。

 神器級(ゴッズ)の全身甲冑で、篭手(ガントレット)のまま。

 一度では終わらない。

 

「ぶごっ! おばっ! ぢょ、ぢが! これ、ぢが!」

「クソマゾを喜ばすと思ってんか? あ゛?」

 

 抗議するモモンガの腹を膝蹴りして、手を離した。

 

「あっ、がっ……おっ……おっ……お前なぁ! 大事なところっ、をっ、赤ちゃんが、いたらっ……」

「さんざん種付けされたのはこっちじゃ、ボケぇ!!」

 

 うずくまったモモンガを蹴り転がす。

 仰向けになったその身は、髪も乱れ、ローブもはだけている。

 100レべル戦士職の攻撃によってできた痣のいくつかは、まだ再生しきっていない。

 その凌辱直前と言わんばかりの媚態に、アルベドは思わずごくりと喉を鳴らしかけるが。

 

「あ、こ、これは、そうじゃなくて……」

 

 事前にモモンガは〈上位変身(グレーター・ポリモーフ)〉を使っていた。

 しっかりと〈魔法持続時間延長化(エクステンドマジック)〉も併用している。

 アルベドを“変えた”後――するつもりだったのだ。

 それは、さんざん殴られ蹴られて硬くなり。

 ローブからはみ出していた。

 

「………クソマゾがっ!!」

 

 舌打ちと共に、アルベドが踏みつける。

 

「ひぎゃっ! いっ! あっ!」

「踏まれてッ! 脈打たせてッ! 恥を、知りなさいッ!」

 

 げしげしと踏むが、むしろモモンガの吐息には艶が混じり。

 アルベドも、己の吐息が熱くなっていると自覚した。

 

「だ、だってっ」

「やかましぃ! いつもいつも、勝手な決めつけで動いてっ!」

 

 一際、強く踏みつける。

 

「いぎぃぃ!」

「勝手に結婚しといてっ! なんで奴隷になりたがってるの! クソマゾがぁ!」

 

 踏みつけたままギリギリと、踏みにじる。

 

「っくぅぅ、だ、だって……ぇぎぃ!」

「しかも、何が奴隷として奉仕よ! 仕事の邪魔ばっかりして! 頭おかしいんじゃないの!」 

 

 抗議しようとしては踏みつけられ、言葉を封じられるモモンガ。

 そこからは、ひたすら言葉と足の連撃。

 

「仕事自体、あんたがしないから、私がしてたんじゃない!」

「あの邪魔でどれだけ、私がハブられたかわかってる!?」

「奴隷とか言って、勝手なプレイ要求ばっかり!」

「急に生やして、逆に奴隷になれって言いだして!」

「私が混乱しても、お構いなしで犯してくれて!」

「ルプスレギナとクレマンティーヌにいじめられ続けてるの気づいてないと思ってるわけ!?」

「他の女にも手出して! 誰にでも股開くクセに、私には勝手に嫉妬して!」

「ついには私を書き替えてっ!! 洗脳でも何でもすればよかったじゃない!」

 

 言いたいことが溢れてくる。

 

「本ッ当に大っ嫌い!!」

「っ~~~~!!」

 

 吐き捨てるように言うと同時に、甲冑のブーツが白く汚れた。

 

「そういう、ところが本当に嫌い! この変態がッ!」

 

 もう一度踏みつけようとした時。

 足の下からモモンガが身を翻し、素早く立ち上がる。

 そんな動きをすると思っておらず、アルベドはたたらを踏んだ。

 一つだけ。

 モモンガは呪文を唱える。

 

「……〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉」

 

 逃走ではない。

 対象はアルベド。

 

「え?」

 

 突然だったせいか。

 NPCとしての名残か。

 他の理由か。

 アルベドは抵抗しなかった。

 

「同意ある時のみ可能な裏技だが……抵抗しなかったな」

「なッ」

 

 アルベドは“肉体のみ”転移し。

 モモンガの腕の中にいる。

 装備は全て、地面に転がっていた。

 裸体の、雌の匂いを立ち昇らせる体に、手が這い。

 モモンガをいたぶり、発情していた場所へ、無遠慮に這い込む。

 

「私も言いたいことを言わせてもらうぞ、このビッチが!」

「んにゃっ、ちょ、やめなさ、ひぃっ」

 

 同じ淫魔の指が、アルベドを攻める。

 反論を抑え、モモンガも言う。

 

「お前が結婚式のキスで変なことしてくるから、おかしくなったんだろうが!」

「最初はもっと普通に恋愛とかしたかったのに!」

「しかもあの後、シャルティアが絡んできても抑えもせずにっ!」

「私はお前に一途でいたかったのに、ソリュシャンやルプスレギナも呼んでっ!」

「仕事なんか、最初から私に回してこなかったじゃないか!」

「クレマンティーヌに襲われたのも、お前の手引きだろうが!」

「勝手に裏で他の女ばっかり連れて来て! 二人っきりになりたかったのに!」

「主らしく振舞えっていうから奴隷扱いしたらしっかり感じてたクセに!」

「だいたい地上で休暇して、なんで男漁りするんだ!」

 

 ひとしきり言い切って。

 深呼吸して。

 きっ、と正面からアルベドを睨む。

 モモンガの目に、涙がにじむ。

 

「私だってな! 私だって、お前のそんな所は、大っ嫌いだ!」

 

 しかし。

 肩を掴んだまま離さない。

 指はもう、そこから離れているが。

 アルベドも、振り払わない。

 

「けれどな、それでも……私は……アルベドが好きなんだ」

「私は嫌い、だけど。好きじゃないわけじゃ……ないわ」

 

 互いに目をそらし。

 少しだけ互いを見て。

 目をそらす。

 

 少しずつ、互いを見る時間は増える。

 

「嫌いだが……愛している、アルベド」

「私は……あなたを……」

 

 モモンガは、返事を聞かなかった。

 その勇気がなかったし。

 さんざん痛めつけられた股間も、再生を終えた。

 

 だから。

 とりあえず。

 このあと滅茶苦茶セックスした。

 初めて、対等に。

 

 

 

「やっぱり、なんだか納得いかないんだけど」

「なら、言ってくれ。私たちは……これからずっと、喧嘩していくんだからな。もう遠慮はなしだ。本音でちゃんと話し合おう」

 

 地底湖の湖岸。

 二人、裸で寝そべる中。

 アルベドが唇を尖らせた。

 

「他の守護者にどう顔を合わせればいいの? 私、あなたと同じ立場になったのでしょう?」

「……なんとかする」

 

 いぶかしげな横目で見るアルベド。

 

「対等なんだから、デミウルゴスの報告、これからはあなたが読むのよね?」

「……なんとかする」

 

 モモンガが目をそらす。

 

「ソリュシャンはともかく、クレマンティーヌとルプスレギナはどうするの?」

「…………なんとか、する」

 

 今度は明らかに間がある。

 

「ねぇ、あなたって――」

 

 高々と音を立て、モモンガの頬を平手で叩いた。

 

「何も考えてないんじゃない!」

「な……わ、私は元々、ただの社畜だぞ! ちゃんとあらいざらい説明しただろ!」

「それでも、家庭作るつもりなら責任感持ちなさいよ!」

「持つつもりだったんだ!」

「結果、毎日毎日だらだらと色に溺れて! 仕事しなさいよ!」

流れ星の指輪(シューティングスター)は私の仕事の結晶そのものだぞ!」

「そういう意味じゃないわよ! バカ!」

「バカって言う方がバカだろ!」

「バカバカバカバカバカ!!!!」

 

 さっそく喧嘩が始まり、二人で裸のまま転げまわるように叩き、髪を引っ張る。

 その様子は、さっきよりは和やかで。

 じゃれあう猫のようでもあり。

 どこか嬉しそうにも見え。

 やがて、ぜぇぜぇと、疲れ切った状態で息荒く互いを見つめ合い。

 このあと滅茶苦茶――

 

 

 

「きぃー! まーた、おっ始めやがったでありんす!」

「ちょっとぉー! アルベドのブスだけ優遇されすぎよん!」

 

 地団太を踏む二名はともかくとして。

 

「まさに雨降って地固まる、ですな」

「母上ェッ、よう~やくっ、わかり合えたのですね……なんとめでたい日でしょうッ!」

「隠れて何してるかと思ったら、子供みたいなんだからもー」

「統括殿が四十二人目の御方として取り立てられるとは……私も忠義に励まねば」

「つ、次はやっぱりデミウルゴスさんかなぁ」

「話題ニ名前ガ出テイルノハ、アノ人間ト、ルプスレギナダナ」

「んー。でも、しばらくはクーちゃんと外仕事に出た方がいいかもっすねー」

「私も側付をしばらく辞退し、扉の外で待つべきかしら」

「あの、側室の私の名前が、御方の会話に出てこないのですが……」

 

 フレンドリーファイアを恐れ、攻性防壁を止めたモモンガ。

 浮かれ祝う中とはいえ。

 ニグレドがおり、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)がある以上、他のNPCらから見られぬはずもなく。

  

 

 

 何度目かの喧嘩と交わりの後。

 モモンガが――そろそろベッドのある私室に戻ろうか。でも装備の回収とか面倒だし、このままでもいいかなぁ……などと考えていた頃。

 

「はぁ……ところで、あなた気づいてる?」

「ああ、もちろんだ! おまえに、そう呼んでもらえてうれしい!」

「はぁ?」

「ずっとモモンガ様って呼んでただろ? “あなた”って呼ばれると、夫婦って気がするじゃないか」

 

 本当に嬉しそうに、モモンガが笑った。

 

「ばばばば、バッカじゃないの!」

「これについては、バカでいい」

 

 さんざん喧嘩して、愛し合った相手を抱きしめる。

 

「バカ……って、そうじゃなくて。例の鏡はプレアデスに持たせてるし、姉さん――ニグレドも報告会にいたのよ? これずっと……たぶん最初から、見られてるわよ」

「………………あーーー」

 

 モモンガは、間の抜けた声しか出せなかった。 

 

「そのくらい、最初に気づきなさいよ」

「おまえは最初から気づいてたのか?」

「当たり前じゃない」

 

 自信たっぷりに胸を張るアルベド。

 その貌を見て、モモンガは微笑んだ。

 

「なら、いい。おまえが恥ずかしくないなら、私がすることもされることも……恥ずかしいわけがないだろう」

「ちょっ、恥ずかしくないとか言ってないでしょ!」

「よーし、じゃあさっそくもう一回仲良く……」

「このバカッ……ぁっ♡」

 

 平手打ちの音が響くが。

 すぐに甘い声が漏れ始める。

 

 もちろん、このあと滅茶苦茶セックスした。

 

 

 

 ナザリックは平和である。

 きっとずっと、おそらくは、とこしえに。

 





 36回、D&Dクラッシックにおけるカンストレベル「36」で終わらせようという、目的が達成できて幸いでした。

 最初からアルベドさんの勝利条件は「対等な恋愛関係になる」。
 どちらかが、一方的に都合いい関係にはしたくなかったので。
 お互いに言いたいことを全部吐き出して、ちゃんと喧嘩して、毎回普通に仲直りっクスできる関係になるのがゴール。
 たぶん二人とも、これからも浮気しまくりますが、毎回喧嘩して元鞘で同じベッドに寝るでしょう。
 明らかにいちゃついてるじゃん……ってやり取りも、場所を問わずするようになります。今までのは、いちゃつくというより、露出プレイでしたからね。

 モモンガさんが陥りかけてた暗黒面の到達点が、先日の「ラナーさん大勝利」ですね。ラナーさんは、“対等の恋愛”とは逆ベクトルのゴールとして、完結前に見せる必要あると思ってました。
 ラナーさんは元より「対等の恋愛」なんて望んでないので、あれで大勝利なのですが。
 モモンガさんは、一方的な奴隷になろうとしても、主人になろうとしてもうまくいかず。
 今回の結末を選んだ形です。
 なお、「願い」が問題あってアルベド消滅したりしたら、モモンガさんは即自殺してました。

 ともあれ二か月ほどの連載でしたが、読んでくださった皆様、感想や評価くださった皆様、誤字脱字報告くださった皆様には、本当にありがとうございます!
 しばらくは本来のお仕事の原稿の方に専念し、一段落するか……気分転換したくなったら番外編か新しい話を投稿しようかと。それでは、ひとまず本作、完結とさせていただきます!

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