米・欧・日が支援するウクライナ「ネオ・ナチ政権」の正体 
〜 オデッサの虐殺(7)〜 

【連載の趣旨について】
 本ブログで連載しているウクライナ関連のシリーズは、敢えて我が国のマスコミの論調とは反対の視点から書いているものです。
 私は、ウクライナに関する我が国のマスコミ報道は余りにも事実を無視した一方的なものだと思っています。
 読者の皆様は、マスコミ報道と本シリーズの記事、そしてできれば、ネットや雑誌などの他の記事を比較し、何が真実かをご自分で判断して頂きたいと思います。(U)
  
(2) アメリカのウクライナ介入とネオナチ・ユダヤ連合政権

 この度のウクライナ騒乱が、アメリカによる継続的なウクライナ介入の到達点であることは先に指摘したとおりである。
 この点を少し立ち入って振り返ってみよう。

 ⅰ) ビクトリア・ヌーランドに見るアメリカの介入(1)

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Usukraine.org   
Ukraine in Washington: US-Ukraine Foundation
Conference(2013.12.13)での発言の様子

 アメリカ国務省の次官補で「欧州・ユーラシア担当」のビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は、今回の騒乱において女性らしからぬ興味深い活躍を見せている。
 彼女の父方の祖父はユダヤ系ロシア移民で、夫君のロバート・ケーガン(Robert Kagan)の父親(著名な歴史学者ドナルド・ケーガン)もユダヤ系リトアニア人だったそうだから(wikipedia による)、彼女は元々、スラブ系ユダヤ社会とは縁が深い人物なのである。
 
 彼女の活躍ぶりを追ってみよう。

 ①
 昨年11月30日以降、デモ隊は過激さを増し、官公庁舎を占拠するに至っていたのだが、そのさ中の12月11日、ヌーランド国務次官補は、在ウクライナ・アメリカ大使ジェフリー・パイアット(Geoffrey Pyatt)を伴ってマイダン(独立広場)を訪れ、デモ隊や機動隊員にクッキーを配った(クッキーには何か象徴的な意味でもあるのだろうか)。

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December 11, 2013
npr.org

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 rt.com

 これは、アメリカと西側各国政府がヤヌコビッチ政権側の強硬姿勢を非難し、デモ隊に激励のメッセージを送っていた時期のことだから、ヌーランドたちのパフォーマンスはアメリカ政府による露骨で直接的なデモ支援、すなわち内政干渉と言うほかはない。 

 また、ネオ・ナチの武装デモ隊が火炎瓶などを使用し、機動隊と激しい衝突を繰り返している実情を思えば、その主戦場とも言うべき独立広場に出向くことは極めて危険な行為なはずである。
 それにも拘わらず、大使とともに自らクッキー配りを行うということは、“ネオ・ナチも親ロシア勢力も自分たちを襲うことはない”との絶対的な確信があったことになる。
  この判断の根拠は、「ヤヌコビッチ政権と親ロシア勢力は暴力的な勢力ではない」という確信と、アメリカとネオ・ナチ武装勢力との間になされた明確な意思疎通以外には考えられないであろう。

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veteranstoday.com 
「ダークサイド(悪の世界)にいらっしゃいよ。クッキーがあるからさあ・・」

 ②
 彼女は、クッキー配りの2日後(12月13日)にワシントンで開かれた「US-ウクライナ基金」(NPO団体)の会議において、「1991年のウクライナ独立以後、アメリカはウクライナを民主化するために50億ドルを拠出してきた。」と述べた。(注1)
 この発言は、アメリカが20年以上にわたって、ウクライナに対する内政干渉のために多額の資金を拠出してきたことを、自ら公式に暴露したものである。

 ③ 
 1月28日(注2)、ヌーランド国務次官補は、駐ウクライナ大使ジェフリー・パイアット(Geoffrey Pyatt)との電話で今後のウクライナ政権の人事について相談し、その中でEUを「クソッタレ」と罵ったのだが、これがハッキングされて2月4日、youtube上に公開された。(注3)

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jasonlknoll.com                 

 EU諸国、特にドイツのメルケル首相はこの発言に強く反発したため、ヌーランドは、2日後の2月6日にEUに謝罪するとともに、ヤヌコビッチ大統領と会談して握手をし、一方では3つの野党の代表と会見して彼らを激励している。

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  cagle.com 
「ヴィクトリア・F☆ck the EU・ヌ-ランド」と怒れるメルケル

 元々、外交とはそういうものだと言ってしまえばそれまでなのだが、こうした一連の動きの中には、表向きは笑顔を振りまいて握手もし、友好関係の強調や、紛争の平和的解決などを提唱しながら、陰では相手を徹底的に痛め付けようとする大国のエゴイズムの典型を見てとることができるであろう。

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AFP

(この項続く)(U)

              (注)
(注1) 
  ☆ 次のビデオで7分30秒からこの発言がなされている。
  ☆ 国務省の公式議事録は以下。
  Remarks at the U.S.-Ukraine Foundation Conference (December 13, 2013)
  ☆ 報道「米国はウクライナの『民主主義支援』に50億ドル拠出した」(「ロシアの声」4月22日)

(注2) この日付は、小手川大輔「ウクライナ問題について」による。
  ☆ 上記youtubeの英文と日本語の書き起こし。
  ☆ AFP「米国務次官補が『EUくそくらえ』、電話盗聴され暴露」
    (AFP:2014年02月07日 発信地ワシントンD.C.)