ライター講座 受講者作品 2019年10月8日

高架下に書かれた壁画「高架下絵巻」の秘密を探ってみると、いつの間にか都市について想いを馳せていた

街中を歩いていて気になることがある。いや、街中というより、駅のすぐ近く、高架下のことである。いや、高架下というのも正確ではない。もっと言えば高架下の壁面に描かれている、あの、不可思議な絵画のことである。

※この記事は記事投稿コーナー「自由ポータルZ」にて開催した「春のライター通信講座2019」で制作した作品です。

エッセイスト、ライター。街を歩きながら考えたことを文章にしています。街+αで見えてくるものを書き留めたいです。
ゲンロン批評再生塾第3期では、ディスカウントア「ドン・キホーテ」をテーマにした文章で審査員特別賞を受賞。
マクドナルド壁画の考案者でもあります。
仲俣暁生主宰のマガジン航、オモコロ、サンポー、LOCUSTなど多方面で執筆中。


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出会い

それは例えば

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こんなものだ。

視界一面を覆う巨大な画面。そこに堂々と、雄大に描かれる宇宙の様子。そこはハート(=愛)に満ち溢れていて、まるでアウタースペースにでも浮遊したかのよう。壁画左に描かれている地球がこちらを見つめてくる。

この壁画の向かい側には、

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こんな壁画もある。さきほどまで宇宙にいたかと思えば一転して水中に迷い込んだかのようだ。水中もまた、ハートで満ちている。

否、ここは宇宙でも、あるいは水中でもない。


ここは恵比寿である。

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壁画の横には「渋谷消防署恵比寿出張所」の文字が。ここは恵比寿なのだ。恵比寿様と思しき消防隊員のあっけらかんとした笑い。

これは絵ではない、絵巻なのだ

一体この絵画はなんなのだろう?いや、これはそもそも絵画なのだろうか?いや、絵画というには大きすぎる。一目で見切ることができないし、カメラでもその全貌を写すことができない。
一目で見切れないほど巨大で、そして細長い絵。確か、そんな絵があったような……。そうだ、それは絵巻物だ。これは絵画ではない、見まごうことなき「絵巻物」なのである。
しかも高架下に出現する「高架下絵巻」だ。

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延々と連なるその様は、まさに「絵巻物」。

高架下絵巻とは、高架下の壁面に描かれた横長の壁面絵画のことである。いや、あたかも昔から存在していたかのように書いているが、それは僕が今、勝手に考えた定義である。それは横に長すぎて一目で見ることができない。だからこそ、それは「絵巻物」なのである。そこに描かれている絵柄はなんでも良い。とにもかくにも高架下に何かが描かれていればそれは高架下絵巻なのである。しかもそれは往々にしてペンキが剥げかけ、古めかしく、どこか哀愁を漂わせるものだ。

日常に潜む「高架下絵巻」

この「高架下絵巻」、みなさんも意識はせずともどこかで見たことがあるのではないだろうか?
案外にそれは私たちのすぐ近くに存在する。

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愛すべき高架下絵巻たち。愛すべきボロボロ加減。

今回はこの謎多き「高架下絵巻」について、その種類やら、あるいは成立やらを、できる限り探ってみることにしよう。

我々は高架下絵巻の由来を示す文書を見つけてしまった

元祖高架下絵巻(私が最初に発見しただけなのだが)ともいうべき恵比寿の高架下絵巻に話を戻そう。これを発見した私はぼうっと立ちすくみ、この魅惑的な画面に吸い込まれるように全体を眼で舐め回し、そこから詳細な情報を得ようとする。しかし残念なことに詳細な情報の記載はない。唯一の情報源になりそうなものは、宇宙の傍にあるこのマーク。

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恵比寿様……

恵比寿だから恵比寿様だという理屈はわかる。しかし注目して欲しいのは、その下、黒字で「恵比寿地区町会連合会美化推進委員会」という記載があることだ。そしてさらにその下の「Design by Vantan」という署名。

つまりこの絵画は「恵比寿地区町会連合会美化推進委員会」による街の「美化運動」の一環として描かれたものなのである。しかしこの絵画、美化のために作られたというわりには、

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ピーポくん(街を守る側だ)の身体中にシールが貼りまくられ、美化とは程遠い様相を呈している。私は高架下絵巻のこうした側面をこよなく愛しているが、美化運動という面で見たときに、それは成功しているのだろうか……。

しかし、この美化運動は一体いつぐらいに行われていたのか?

そう思って調べてみたところ、なんとその詳細がはっきりとわかる資料が発掘されたのである。
それが「しぶやの環境 28-29」という渋谷区が発行している小冊子である。

極秘文書「しぶやの環境 28-29」

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さっきから小見出しが陳腐なオカルト番組のようであるが、それは気にしないで欲しい。とりあえず盛り上げようと頑張っているのだ。

先ほどの小冊子に話を戻そう。この「しぶやの環境 28-29」によれば、渋谷区では区全体を挙げた街の美化運動の取り組みとして、1998年4月1日より「渋谷区きれいなまちづくり推進協議会」を設置したという。その政策に基づいて、それぞれの町会や商店会が中心となり「地区美化推進委員会」が組織された。つまり、恵比寿の高架下絵巻に描かれていた「恵比寿地区町会連合会美化推進委員会」はこの地区美化推進委員会の一つとして発足したのである。漢字が多いが、ついてきているだろうか。かくいう僕はだんだん分からなくなってきた。

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我々は決定的な証拠をつかんだ

つまりこの絵巻物は街の美化運動の一環として、1998年以降に描かれたのだ

高架下絵巻をめぐる2つの仮説

もう一つ注目したい。それが「Design by Vantan」という表記である。

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「Vantan」

つまりこれは「Vantan」という何者かによって描かれたということだろう。そこでこの「Vantan」なるものを調べてみると……。

あった。

「Vantan」は恵比寿に校舎を置くデザイン学校のようである。

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ホームページもあります

なるほどだんだんと情報が繋がってきた。
つまり、この絵巻物は、渋谷区の美化運動の一環として、恵比寿の町内会が主体となり、地元のデザイン学校にデザインを依頼した絵巻物なのである。

ここまでの情報を基にして、高架下絵巻に関する2つの仮説を立ててみよう。

1    都市の美化運動と関わっている
2    地域振興と関わっている

という2つである。まだこれは仮説である。しかし少しずつ私たちは絵巻物の真相に近づいてきたのかもしれない。しかし真面目にやればどんなにくだらないことでも面白くなってくるものである。

高架下絵巻のミッション〜街を明るくせよ

先ほど考え出した「高架下絵巻物」に関する仮説の一つ目、「都市の美化運動と関わっている」ということについてだが、なぜ「高架下絵巻」は都市の美化運動と結びつくのだろうか。

我々はそのことを示唆する重要な証拠を発見した。それは高田馬場にある高架下絵巻でのこと。まずは、その絵巻物をご覧いただきたい。

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おお、すごい。手塚治虫のキャラクターがぎっしりと描かれている。高架下絵巻特有のボロボロさという観点で見るならば、少しこぎれいすぎるかもしれない。それでも圧巻の絵巻物である。この絵巻物は先ほどの恵比寿の絵巻物とは異なって、その来歴が同じ壁面に詳細に書かれている。

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一部引用してみよう。

これまで高田馬場早稲田口は、鉄道の高架下ということもあり、駅前空間として暗い印象を与えていました。そこで、平成17年、地域住民や商店街の人々によって「高田馬場駅早稲田口の環境整備に関する地域会議」を立ち上げ、歩道や鉄道ガード下の環境整備実現に向け、話し合いの場を設けました。

その話し合いの結果として、高架下に壁画を設けることになり、そのデザインは、

アトムとの縁から、(株)手塚プロダクションにご協力いただきました。アトムは漫画の設定では高田馬場が生誕の地として描かれており、新宿区未来大使にも任命されるなど、繋がりの強いキャラクターです。

なるほど。時期は少しずれるものの、恵比寿のパターンとほとんど同じ流れである。

つまり、街の美化運動→地域に関連のあるデザイン事務所へのデザイン発注という一連の流れである。そしてこの記述からわかるのは、絵巻物が数多く描かれる「高架下」とは従来「暗い印象」に満ち溢れており、それゆえ、そこに明るい楽しげなデザインを施し絵巻物化することによって、それが街の美化運動になるというロジックである(本当に高架下が明るくなるかはおいておくけれども)。

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確かに明るい。そう考えると仮説として立てた①の「都市の美化運動として」という視点は、あながち間違っていなさそうである。

そしてそのデザインを決定するときに、高田馬場にゆかりの深い「アトム」(そういえば、高田馬場駅の駅メロも『鉄腕アトム』のテーマだ)を選定しているというところに、②の仮説である「地域振興」のありようも看取ることができる。

意外にもこの2つの仮説、的を得ているのかもしれない。

高架下絵巻を陰で操る組織、それは……

さて、「高架下絵巻」に関する真相へと、我々は徐々に近づいてきた。
それは街の美化運動と地域振興が一体となって生まれ出たのではないか。

ただし、この書かれている絵柄については、まだ一考の余地がある。というのも、高架下絵巻を観測する限り、地域にまつわる絵柄やその地域周辺のデザイナーによるデザインというのは、実は少数派で、その多くは次のようなデザインである場合が多い。

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なんと素朴な……!

先程までの本格的なデザインとは異なり、「圧倒的手書き感」がすごい。宇宙に浮かぶ銀河鉄道999的な乗り物である。

これは誰が書いたのか。正解は、

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「品川区立品川小学校6年生」。

そう、小学生である。

そう、高架下絵巻の作者のマジョリティは、「学生」なのだ。まさに高架下絵巻を操るドンこそ、学校なのである。

小学生の手による高架下絵巻をご覧に入れよう。上目黒の高架下にて。

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題して

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みんなのパラダイス。

確かに楽しそうな動物や魚たちで絵巻はひしめき合っている。
しかしこの動物たちの目……。

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なんとも言えない雰囲気。なんというか、こう、虚無である。

この絵巻には製作年度と、それが誰によって作られたのかが明記してある。高架下絵巻物調査員としてはなんともありがたい仕様である。

それによると、この絵巻物を製作したのは「区立日野第2小学校」の「1年生・4年生」。

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画面左上に「区立第二日野小学校」と書いてある。お分りいただけただろうか。

1年生と4年生が合同で製作したのであろう。ただし、それ以上の情報は分からない。一体なぜこの場所に絵巻物を製作することになったのか、そうした情報は、ここからでは何も分からない。

先ほど掲載した銀河鉄道999的な絵巻物もそうである。あの絵巻物の傍らには、

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こう書いてあった。剥がれかけの壁面がなんとも言えない良い味わいを出しているが、これによれば製作者は品川区立品川小学校小学6年生。そしてその横には「壁面美化工事」という、先ほどの仮説にも通ずるようなことが書いてある。

つまり、壁面の美化を進めるときに用いられたのが、品川小学校の6年生たちだったわけである。

このように、高架下の壁面にはプロのデザイナーや画家の他にも、「学生」という立場の作家が多く絵巻物を書いているようである。

高架下絵巻が川崎にやってきた

しかしなぜ、学生たちがこのような壁画制作に勤しむ例が多く見られるのか。なぜこうした壁画制作が教育に取り入れられているのか。その実態は、壁画の制作年度の多くが10年以上前ということもあって、なかなか掴みにくい。しかし私がそのようなことを考えている矢先、大変興味深いレポートが発掘されたのである。

その名も、

「地域を活動の場とした中学生による美術作品制作の意義」

ドストライクな名前のレポートではないか。なんといっても活動の場は「地域」なのである。この文章は『現代社会文化研究』という論文集の中に収められているらしい(ちなみにネット上でも閲覧することができる)。
そしてこの文章の小見出しを見ていくと「実践例 中学生によるトンネル壁画制作」というこれまた高架線絵巻物調査員にとっては願ったり叶ったりな見出しがあるではないか!
そこでは川崎の中学生の手による高架下絵巻制作のプロセスが詳細に書かれている。

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高架下絵巻を製作した「川崎市立臨港中学校」。私はわざわざ行ったのである。本気なのである。

発端はこの中学校の美術の先生と、地域の人との雑談からだったという。地域の人が言う。

「学区内に不審者が出没するトンネルがあるので、そこに絵を描く事で不審者が近寄りにくい雰囲気に変えることができないだろうか」

大変なこともあったものである。学校の近くに不審者が現れるトンネルがあったらしい。不審者の出現を防ぐために、トンネルの雰囲気を明るくして欲しいというのが地域の人の考えである。

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「不審者が出没する」とされていたトンネル。周辺は昼間でも暗い

これは、先ほど見た高田馬場や恵比寿の高架下絵巻物にも通ずる考えだろう。つまり街を綺麗に、明るく、美しくしようという広義の「環境美化」である。

そこで、その話を聞いた美術の先生は中学校の「総合の時間」を使用してそのトンネルに高架下絵巻物を作る計画を立て、実際に絵巻を製作した。それがこちら。

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美しい桜、

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緑の野原にはひまわりが咲き、

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紅葉を経て、雪景色。

その名も、

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「春夏秋冬」。

四季折々の景色が描かれている。
この壁画が、中学校の「総合の時間」に描かれたのである。

高架下絵巻の生みの親、「総合の時間」

ここで重要なのは、「総合の時間」という言葉だ。

「総合の時間」

どれぐらいの方がこの授業を体験/記憶されているだろうか。これは平成10年の学習指導要領(義務教育の内容を定める法令文書)で誕生した科目だ。指導要領では、「地域や学校,児童の実態等に応じて,横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動」をしなければならないと書かれている。

つまり、それぞれの教科の枠を超えた学習をしなければならないわけだ。

その具体的な活動内容としては、「自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・実験,見学や調査,発表や討論,ものづくりや生産活動など体験的な学習」とあり、なるほどそれならば高架下絵巻物を作るということも地域と関わり協力しあいながら(社会科)、美術作品を制作する(美術)ということで十分に「総合の時間」の学習になるというわけである。

そう言えば、先ほどから開陳している小・中学生制作の高架下絵巻の製作年度は、全て平成10年より後、つまり「総合の時間」が誕生してからのことである。全ての絵巻物を見たわけではないから(というかそんなことは不可能だと思うのだけれども)断言はできないが、小中学生制作の高架下絵巻は、この「総合の時間」と深い関係があるのではないだろうか。
それは、高架下絵巻の製作過程において、「環境美化」、「地域振興」という社会科の要素と、絵の製作という美術の要素が本来的に結びつ機、教科横断的な様相を呈しているために、小中学校における「総合の時間」の内容として取り入れられたのかもしれない。

全くもって大発見である。あの高架下絵巻にはこうした教育の事情も作用していたのだ。しかし、恵比寿での高架下絵巻の発見からよくここまで話を広げられたな、と思う。自分で自分をほめたい。

高架下絵巻よ永遠に

というわけで、高架下絵巻について大真面目にいくつかの観点から調査を進めてみた。その結果わかったことは、その誕生のプロセスと発生要因である。

その誕生の背景には第1に、暗いイメージのある高架下を明るくしようという「環境美化」の目的がある。その目的を果たすために、地域に関係のある絵柄や、あるいは地域に関連のあるデザイナーがそこに明るい絵を描く。あるいは、小・中学生が総合の時間の一環としてそこを無垢な絵で埋め尽くす。

こうして多くの高架下に絵巻が生まれていく。とはいえ、最初の方で指摘したように多くの高架下絵巻はすでに数十年も前に製作されたものであり、「都市美化」を標榜している割には、すでに絵巻そのものがボロボロになり、あまり街を明るくできていないという例も散見される。

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高架下を明るくしようとしているが……?

そういえば先ほど引用したレポートでは、「総合の時間」で高架下絵巻が取り入れられたのは一時期の「ブーム」であって、ブームを過ぎた後は衰退していったという旨が書かれている。
理由は単純。それを実現するためまでのプロセスが複雑で大変だったからだということらしい(かなり大雑把にまとめているが)。

そうした事情もあり、多くの高架下絵巻は当初の目的からは程遠いようなボロボロ加減――私はそれもそれで好きなのだけれど――を呈しているのだ。

しかし、こうした古めかしいタイプの高架下絵巻は、今こそ見ておくべきだろうと思う。なぜなら、それらはどんどんと消滅していく恐れに直面しているからだ。

(ここからは筆致が真面目になります。悪しからず)

目下、東京はオリンピックに向けた再開発の波が押し寄せている。そんな中、都市は移り変わり、高架下絵巻界にも新しいムーブメントがやってきている。
それを説明するために、池袋にある「ウイ ロード」を例に挙げよう。
これは池袋の東口と西口を結ぶ高架下のトンネルだが、つい最近までは薄暗く、そして高架下絵巻も無い道路だった。

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かつての池袋のウイロード。明かりはあったが薄暗かった

しかし池袋での再開発に歩調を合わせるように、現在そこでは高架下絵巻が絶賛製作中である。

しかもその高架下絵巻はいかにもな「インスタ映え」を狙ったおしゃれなものである。

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おしゃれな絵が施されたウイロード
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「東アジア文化都市2019」という催しの一環としてウイロードも綺麗になるという

おそらく今後、新しい高架下絵巻が生み出されるにせよ、それはかつての高架下絵巻にあったような小学生・中学生らしい手書きの絵や、どこか昭和の香りが漂うデザインではなくなるだろう。そうした古いタイプの高架下絵巻が令和型の「インスタ映え」絵巻に取って代わられるかもしれない。

それ自体は別に否定することではない。でも、レトロな香りがプンプン漂う古い高架下絵巻にも私は愛着がある。
そんな高架下絵巻は、今見ておかなければ無くなっていくかもしれない。

(真面目な部分ここまで)


……と真面目に書いてきたものの、高架下絵巻を見るのにこむずかしい理屈は絶対に必要なわけではない(知っていればもっと楽しめるけれど)。重要なのは、街中を歩いていて突然、高架下絵巻に出くわすときの喜びと驚きである。

もし、皆さんも街を歩いていて高架下絵巻を発見したら、その驚きを覚えておくために、それを写真にパシャリと収めよう。

で、僕にその写真をください。

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※「コネタ」は2006年4月から「特集」と同じ扱いになりました。

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