年間150軒の蕎麦を食べ歩く「蕎麦の達人」
こんにちは、ふつかよいのタカハシです。
まだまだ暑いこの季節、無性に恋しくなるのが「蕎麦」ではないでしょうか。
のどごしの良いものからつるっとさっぱり食べられるものまでその種類はさまざま。
今回は、年間150軒の蕎麦を食べ歩くという前島敏正さんにお話を聞くことにしました。
前島さんは、食べ歩きだけでなく、蕎麦に関する歴史や雑学にも詳しい、いわば「蕎麦のソムリエ=ソバリエ」。
現在は蕎麦打ち講座を開いたり、月1で蕎麦に関して学ぶ「ソバリエサロン」という勉強会を行なっているのだとか。
──前島さんは週に3日、年間で150軒もの蕎麦店を食べ歩いているそうですね。正直なところ、それだけ蕎麦を食べていて飽きたりされないのでしょうか。
前島:飽きますよ(笑)。ただ、たくさんある蕎麦の中から自分好みの味わいのものを見つけたときの感動が忘れられなくて続けています。
──味わいって、蕎麦店によってまったく異なるものなのでしょうか? 大変お恥ずかしながら、どれも似通っているかと思っていたのですが……。
前島:はい、蕎麦は産地によって特徴が全く違うんです。白い蕎麦粉が特徴の更科蕎麦、東京下町がルーツのやぶ蕎麦、喉越しが良い砂場蕎麦など、実にさまざまです。
──それだけ種類があったら、どれが真に美味しい蕎麦なのかわからなくなってしまいそうです。前島さんにとっての「良い蕎麦」って何ですか?
前島:各々の好みによるかとは思いますが、僕は粗挽きの蕎麦が好きですね。蕎麦本来の甘みや歯ごたえをしっかり感じることができるので。
──私も、自分にとってのベスト蕎麦を見つけたい……。ところで、今日選んでいただいたお店「紫仙庵」は、前島さんもイチオシの冷やかけが絶品なお店だそうですね!
前島:そうなんです。蕎麦つゆに使われる調味料の「かえし(煮返しの略称)」を出汁で割ると蕎麦汁ができるのですが、ここ紫仙庵の蕎麦はかえしを入れず、出汁だけでつくった蕎麦汁なんです。味が濃くなく、スッキリした味わいが楽しめるのがいいですね。
「蕎麦前」を板わさや鴨と一緒にいただく
▲合鴨ロースト(1,000円)
▲板わさ(850円)
──蕎麦を食べる前に、まずはおつまみからと。鴨の旨味がぎゅっと濃縮されたローストに、ぷりっぷりの食感が楽しめる板わさ。どちらも素晴らしい味わいですね。
前島:蕎麦はでんぷん質なので、不足しがちなタンパク質を板わさや鴨で補い、蕎麦前(※蕎麦屋で飲むお酒のこと。 蕎麦「前」とあるように、お蕎麦を食べる前にいただくのが普通)を飲むのがおすすめなんですよ。どこに行っても必ず頼んでいます。ちなみに、蕎麦前は吟醸の冷やが一押しです。香りがキツくなく、料理の味を邪魔せず楽しめるので。
▲十割蕎麦の梅おろし蕎麦(1,250円・夏季限定)
▲昭和27年建造の一軒家を改装したという紫仙庵。ふと窓の外を見ると広がる美しい庭園に、いっとき現実を忘れられます
──最高の楽しみ方ですね。そしてついに蕎麦登場。打ち立ての麺がたまりませんね。細麺なので、ツルツルと食べられます。みょうがや大葉など、薬味のアクセントも絶妙ですね。
前島:ほどよい酸味が効いた南高梅がまた、美味しいですよね。これを少しずつ崩して食べるのが大好きなんです。
ソバリエ前島さんが選ぶ珠玉の名店10選【都内編】
──それでは、日々いろいろな蕎麦店で食べ歩きをしていらっしゃる前島さんから見て、ここは間違いない! と太鼓判のお店を10店舗選んでいただきたいと思います。まず1つ目のオススメはどちらですか?
前島:今までまわった2,000軒をもとに自作したデータベースから、珠玉の蕎麦店を選んできましたよ! まずは新富町にある「木挽町 湯津上屋」。清涼感たっぷりの「すだち蕎麦」が僕の一押しメニュー。通常、厚切りのすだちを出す蕎麦店が多いのですが、この店は薄切りなので食べやすく、清涼感が楽しめる。出汁が丁寧にとられている蕎麦も絶品ですよ。
①木挽町 湯津上屋 (新富町)
──すだちにも切り方の違いがあるとは! 厚切りでオススメのお店はありますか?
前島:でしたら池尻大橋の「土山人」は外せないですね。「冷やしすだち蕎麦」(※4月末から9月末までの展開)は器に散りばめられたすだちの輪切りが綺麗で、見た目にも美しいんです。
サバ節は臭みがあるので通常あまり入れないのですが、ほんの少しつゆに加えると味が締まって深みが出る。そのバランスが絶妙なんですよね。
②土山人(池尻大橋)
──他に、美しい蕎麦が楽しめるお店はありますか?
前島:今回取材でお邪魔した「紫仙庵」さんがその点では非常に素晴らしいお店です。喉に染み渡るすっきりとした味わいの冷やかけ蕎麦が楽しめるんですね。ご主人自らじっくり選別した玄そばはもちろんのこと、お手製の器も美しく、ひとつとして同じものがないのでこちらも合わせて注目です。
③手打蕎麦処 紫仙庵(目黒)
──さっぱりした冷やかけも、良さそうですね。このお店は内装も素敵ですし、ぜひ個人的にもまた来たいお蕎麦屋さんです。他に、スッキリした蕎麦を食べたい時にオススメのお店はありますか?
前島:それなら、西大島にある「手打ち蕎麦・銀杏」のトマト蕎麦が一押しです。スライスしたトマトが器いっぱいに敷き詰められていて、インパクト大! トマト本来の酸味が効いて爽やかな味わいです。江戸前のあさりを使った「冷製そば」も刻み生姜との相性が抜群で……。
④手打ち蕎麦 銀杏(西大島)
前島:あとは、新宿御苑前にある「富の蔵」。「九条ネギと大根おろしの夏限定そば」は、福井産の二八蕎麦を使っているのですが、香り高くコシが効いた食感です。九条ネギ、大根おろしと共に天かすを蕎麦に絡め、最後につゆをかけていただくのがオススメですよ。
⑤富の蔵(新宿御苑前)
──蕎麦は産地によって味が全く異なるとのことでしたが、二八蕎麦にも違いがあるのでしょうか?
前島:もちろんです。例えば「酒彩蕎麦初代」の蕎麦は北海道産の二八蕎麦を使っているのですが、喉越しがよくつるっとしたタイプ、風味が深い粗挽きタイプの2種類から選べるので食べ比べてみると味の違いがわかりやすいかもしれません。つゆは甘めで、焼きナスや白髪ねぎと合うんですよ。
⑥酒彩蕎麦初代(恵比寿)
──なるほど。他に、甘めのつゆに合う蕎麦店でおすすめはありますか?
前島:でしたら、神楽坂にある「芳とも庵」ですね。大豆を潰してふやかし、味噌汁のように仕上げた「呉汁(ごじる)」を使った蕎麦が美味しいです。蕎麦本来の風味だけでなく、大豆のほのかな甘みが感じられますよ。
⑦芳とも庵(神楽坂)
──呉汁、初めて知りました! 他に、本格派の蕎麦を食べたいとき訪れるお店はどこですか?
前島:西麻布にある「そば割烹さとう」ですね。一流ホテルや旅館、都内の名店で経験を積んだ店主が手がけた蕎麦が絶品です。アラカルトも選べるのですが、旬の食材を使用したおまかせコースと共に食べる蕎麦が特にオススメですよ。コシがあって食感が楽しめる正統派です。
⑧そば割烹さとう(西麻布)
前島:あとは、「玄菱」。石臼挽きの手打ち蕎麦が味わえるのですが、100%国産そば粉を使用する徹底っぷり。揚げたての香ばしい穴子の天ぷらと冷たい蕎麦が奏でるハーモニーがたまりませんよ!
⑨玄菱(神楽坂)
──美味しそうすぎてため息で。一風変わった蕎麦を食べたいときに訪れるお店はどこですか?
前島:都内にいくつか支店がある「そば助」です。どんぶり一面に韓国のりが敷かれて自家製のラー油と合わせて食べる、まるでラーメンのような味わいの蕎麦が楽しめます。今まで出会ったことがない新進気鋭の蕎麦店です。
⑩そば助(大塚)
奥深すぎる蕎麦の魅力
取材前は、「蕎麦の味わいって正直そこまで大きく変わるものだろうか」と思っていた筆者。ですが、産地や作り手によってまったく特色が異なることがわかりました。
食感や薬味とのハーモニー、出汁の味わいや組み合わせによって何百、いや、何千通りもの楽しみ方ができる「蕎麦」。
そりゃあ、虜になってしまうのも無理はありません。
今すぐ蕎麦屋に行ってこよう!
店舗情報
紫仙廬
住所:東京都目黒区下目黒6-6-3
電話:03-3712-8555
営業時間:17:30~21:00(ラストオーダー20:30)
定休日:月曜日、火曜日
書いた人:ふつかよいのタカハシ
三度の飯より酒が好きなライター。主戦場は赤提灯酒場。365日中、300日は飲酒。1人でも多くの人と盃を交わすための我が人生。合言葉は「約束はいらない、酒場で会おう」。酒情報を楽しく発信する「酔いどれnote」やってます。
- Twitter:@f_y_takahashi
note:ふつかよいのタカハシの今日も酔いどれ