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2019-10-08

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・もう絶対に破れない記録をたくさん残して、
 金田正一投手は遠くへ行かれました。
 ぼくはお会いしたことはありませんが、
 マウンドに立ってその試合を支配している姿を、
 ひとりの子どもとして観戦していたことがあります。

 金田さんの記憶は、数字の記録によって確かめられます。 
 何年か前のことですが、すっかり老人になったぼくは、
 金田正一投手の通算400勝という記録のことが、
 あらためてとんでもない数字だと気づき、
 そんなことが可能だったかどうか、
 じぶんの頭で考えてみたいと思いました。
 だって、年間20勝しても(現在ではほとんど無理)、
 それを20年続けなければ400勝にならないんですから。
 いまのプロ野球のイメージではありえないことですが、
 ほんとうに、事実としてあったんです。

 1950年からスタートして、1969年までの20年間。
 8勝、22勝、24勝、23勝、23勝、29勝、25勝、28勝、
 31勝、21勝、20勝、20勝、22勝、30勝、27勝、11勝、
 4勝、16勝、11勝、5勝と勝ち星をあげています。
 足し算すると400勝、まちがいありません。

 では、と、おとなになったぼくはさらに考えるわけです。
 400勝の投手は、奇跡のような記録を残しましたが、
 敗戦投手になった回数は、どれくらいなのだろうか? 
 これも、調べたらすぐに出てしまいます。
 400勝投手の敗北の数は、ほぼ300の、298敗でした。
 7試合したら、4試合勝って3試合負けるという勘定です。
 勝率でいうと5割7分3厘です。
 星取表のように図にしたら、以下のようになります。
 ○●○●○●○ ほとんど「勝ったり負けたり」ですね。
 偉大な成績の、伝説の投手でも、
 400勝の大記録には、裏地のような298敗があるのでした。
 ぼくのこどもっぽいイメージとしては、
 400勝って、100敗くらいのつもりだったのですが、
 それより200も余計に負けているのです。
 これ、実はぼくはすばらしいことだと感じています。
 いちばん負けた人こそが、いちばん勝った人! 
 見事、最多敗戦記録保持者も金田正一投手だったのです。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ますます「接戦上等!」の意を強くしています。接戦大将!


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