iPodの父、開発秘話をツイート。iTunesのWindows対応も振り返る
ジョブズもビジネスのため「宗教的な感情」を捨てたとのこと
後にiPhoneが開発される基礎となった、携帯デジタル音楽プレイヤーのiPod。その「父」(Father of the iPod)として知られるトニー・ファデル氏が、iPod開発の裏話についてTwitterでいくつか質問に答えています。
ファデル氏は2001年にiPod開発の責任者としてアップルに入社し、2006年〜2008年にiPod上級副社長を務めた人物。そもそも同氏がHDDを搭載した携帯音楽プレイヤーを開発する会社Fuseを創業し、それがアップルに買収されたことがiPodの始まりとも言われています。
まずファデル氏は、iPodやiPhoneが成功したのは適切なタイミングで発売されたからだと分析。市場のタイミング等から最初のモデルを10ヶ月以内に出荷すると決めてそれを守ったとのことで、当時のスティーブ・ジョブズCEOも驚いたそうです。
そうしたiPod開発の上で、部品サプライヤーとの交渉は重要でした。iPodの内蔵HDDについては東芝と3年間の長期契約を結び、iPod nano内蔵のフラッシュメモリに関してはサムスンと40億ドルもの契約を締結。これらの交渉は、数年後のiPhone開発にとっても重要だったと語っています。
さらにiPodがあれほどの成功を収められたのは、毎年多くの新機能を備えたハイエンドモデルを提供しつつ、人々がアップルのエコシステムに入れるように安価なモデルをいくつか販売したことだと述べています。このあたり、iPhone 11シリーズの「高価なProモデルと比較的安価なエントリーモデル」路線に受け継がれていると言えそうです。
2000年代初頭と言えば、まだソニーが携帯音楽プレイヤー市場をリードしていた頃です。アップルもそれは懸念していたものの、ソニーは自社(SME)の音楽CD売上が落ち込むことを恐れすぎたあまり、社内の政治力学で踏み込めなかった。世界初のデジカメを発明したKodak(2012年に経営破綻、後に再建)を思い出すーーファデル氏はそう振り返っています。
興味深いのは、iPodやiTunesをWindowsに対応させたこと。iPodは当初FireWire接続を使用したMac専用のデバイスであり、PC用のiTunesはありませんでした。しかし、ビジネスの次の段階に行くために「宗教的な」感情を捨てなければならなかったと述べています。
ジョブズ氏にも「宗教的な」こだわりはあったそうです。それを説得したのが、彼の個人的な親友であり世界的に有名なITジャーナリストのウォルト・モスバーグ氏だったとのこと。
一度はアップルを追われたジョブズ氏が、復帰後にはiPodやiPhoneなどを大ヒット製品を送り出して会社を復活に導けたのは、若い頃には乏しかった「他人に耳を傾ける姿勢」を身につけたからかもしれません。
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