消費税率引き上げに伴うポイント還元制度が混乱気味だ。消費者、店側双方から「仕組みが分かりにくい」など不満が出ている。消費減への防止効果は不透明で、国は制度の再説明をすべきだ。
ポイント還元は、対象店でクレジットカードやスマホのQRコード決済などをした場合、購入額の一定割合を国がポイントとして戻す制度だ。中小店舗は5%、外食など大手企業のフランチャイズ加盟店は2%還元される。大手スーパーや百貨店は対象外である。
対象店は約二百万店あるが、増税スタート時の参加店舗は約五十万店。経済産業省は対象店情報が分かるようホームページ(HP)や検索アプリで公開している。
しかし、還元率やキャッシュレス決済の方法の誤記が相次いで見つかった。対象店の地図上の位置が平等院鳳凰堂(京都府宇治市)の真上になっていたケースもあった。経産省は訂正作業を進めているが、国の根幹である税制への対応としてはあまりにもずさんだ。
制度の狙いは増税による消費の落ち込みを防ぎ景気を下支えすることだ。だがキャッシュレス決済を組み込んだことで、効果が薄れる恐れが現実味を帯びている。
国は現在約20%の国内キャッシュレス率を二〇二五年までに40%に高める計画。店頭での省力化や現金決済に不慣れな外国人客への対応が推進理由だ。
ただ日本は紙幣偽造はほぼ不可能で盗難の危険も低いため現金決済への信頼が高い。負担緩和とキャッシュレス化を同時に狙ったのなら無理があったのではないか。
増税後も多くの中小店が対象になっていない。直営店が対象外の大手コンビニは会社負担で全店還元を実現するなどしている。だが余力のない中小は対応が難しい。
登録したくても方法や制度内容を理解していない店舗がないか。登録後もキャッシュレスへの対応に苦慮しているケースはないか。国は中小の実態を改めて細かくチェックし支援する必要がある。
一方、消費者もスマホを持っていない場合は還元が受けにくく、所持していても利用能力で差が出る。利用明細も複雑でどう還元されたのか分かりにくい。
ポイント還元は公平、簡素といった税の原則から外れた制度だ。それ故、国はより丁寧な制度の周知徹底を間断なく続け、不備があれば直ちに修正すべきだろう。
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