プロ野球唯一の400勝投手、金田正一さんが6日、急性胆管炎による敗血症のために86歳で死去した。本紙記者が語る金田さんの意外な一面とは-。
私が金田さんを取材するようになったのは、巨人担当をしていた2007年2月から。金田さんが巨人キャンプを訪れた際、原監督に「この方を知ってるか?」と聞かれた内海(現西武)が「カネムラさん」と間違えた、あの一件がきっかけだ。
この時の金田さんの反応は本当に意外だった。血気盛んなイメージがあっただけに、怒るのかと思いきや、穏やかに笑っていた。後に内海に聞いたのだが、これが縁で気にかけてくれるようになり、原監督を通じて時々アドバイスを送ってくれるようになったという。私たち報道陣にも「あの子はいい子だ。守ってやれ」とよく言っていた。内海は名前を間違えたことを「人生最大の汚点」と悔やみつつ「気にかけてもらえるのはムチャクチャうれしい」と心から感謝していた。
10年ほど前、球場に知り合いを連れてきた金田さんに「写真を撮ってくれ」とカメラを渡された。それを受け取った私は「あれっ、金田さん、これ、液晶ってどこにありますか」と聞いたら、突然左手でバチーンとビンタされた。そして「わしゃ、フィルムじゃ!」と言って、なぜかニコニコしていた。
訳が分からなかったけど、400勝を挙げた左手でビンタされる貴重な体験は、今では自慢です。ご冥福をお祈りします。(現中日キャップ・井上洋一)