悪いが止められないと思う人間もいる
結局そのほぼ全員が止めようとする者の敵に回るんだ
マフィア並みの不人気だろ
(ジェームスからティットへ)
私が『パーム』を知ったのは、『オールスター・プロジェクト』が連載されていた時だ。雑誌で毎月読んでいるうちにハマっていった。
数年がかりで『お豆の半分』から『星の歴史』を揃えて、『愛でなく』はリアルタイムで買っていた。
その後しばらく買うのを忘れていたら、『蜘蛛の紋様』の第3巻にプレミアがついてしまったので、その巻だけ電子版を買う(安くなった時に紙版も買いましたが)。
初めて読んでから30年近く経ってようやく『蜘蛛の紋様』までたどり着いたけれど、結果的に良かったような気もする。
高校生の時に『蜘蛛の紋様』や『TASK』を読んでも、私はおそらく理解できなかった。
本作では大量の伏線が回収される。
今まで「憎い人間など誰もいない」というジェームスの心理がよく分からなかったけれど、農場での監禁生活から刑務所出所に至るまでの経緯を知ると、そういう一種の「境地」にたどり着いたのも納得できる。
作品の舞台である1980年代、「西側ではない」ことは「東である」ことと混同されていた。だから資本主義を批判する彼の真意を理解できずに、作中でメディアや大衆は、短絡的に彼に「コミュニスト」のレッテルを貼ってしまう。
ジェームスが死ぬことは作中で既に定められているので、「一人の天才」が世界を変えるわけではないことも、知っている。
それでもやはり、私は彼らの生き様に惹かれ、その行く末を見届けたい。
『パーム』の登場人物ほど壮絶な人生でなくとも、生きているとどうしても「漫画を読む時間がない」という時期がある。
そして、再び漫画が読めるようになった時に、
「あの続きを読みたい」
と思わされる作品というのは、真の名作だと思う。
背表紙の色は、白→青→黒と変化。
★★★★★
【検索用】パーム蜘蛛の紋様 獸木野生 6