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【政治】

幼保無償化 根強い懸念 「待機児童増」「保育の質低下」

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 幼児教育・保育の無償化が今月から始まった。政府は子育て世帯の負担軽減で出生率が上がることを期待する。だが、待機児童の増加、保育の質の低下への懸念は根強い。保護者らは制度見直しや保育士の待遇改善を求めている。 (坂田奈央、大野暢子)

 安倍晋三首相は四日の所信表明演説で、幼保無償化について「七十年ぶりの大改革だ」と胸を張った。衛藤晟一少子化担当相は「子育て世代に大胆に政策資源を投入する。少子化対策の大きなステップだ」と強調し、子育て層にも目配りする「全世代型社会保障」の第一歩に位置づける。

 これに対し、子育て層は「まず待機児童の解消を」と訴える。待機児童は減少傾向ながら、四月時点で約一万六千人となお高水準にある。希望施設に入れず保護者が働くのを諦めるなどした「潜在的な待機児童」は約七万三千人で、二〇一五年の公表以来最も多い。

 無償化によって待機児童が増える可能性もある。無償なら子どもを預けて仕事を始めたいと考える保護者が出てくれば、保育施設が不足するからだ。

 保育の質を確保できるかどうかも問題だ。保育士の配置が厚生労働省が定めた基準以下の認可外施設も、五年間は無償化される。保育士数や保育計画が基準を満たさない施設で子どもの人数が増えれば、目が行き届かなくなる恐れが増す。

 財源は消費税ではないものの、企業主導型保育所も無償化の対象だ。運営基準が緩く、書類審査のみで認可される。内閣府の一八年度調査では、全体の八割に問題があり、健康診断の実施や安全対策が不十分な例が目立った。立憲民主党の阿部知子衆院議員は「企業型保育所は問題点を十分に検証されておらず、保育の質も担保されていない」と警鐘を鳴らす。

 施設の種類に関係なく、保育士の待遇改善は引き続き課題となる。厚労省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の月額平均給与は約二十四万円で、全産業平均より九万円以上低い。

 市民団体「保育園を考える親の会」の普光院(ふこういん)亜紀代表は「保育士の処遇を改善して配置人数を増やさないと、子どもにしわ寄せがいく」と指摘。「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「無償化財源を一部でも保育士の待遇改善に回すべきだ」と訴える。

 

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