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昭和２２年　空襲で何もかも失った喜美ちゃんの家族は多額の借金を抱えて大阪から信楽にやって来ました。
タヌキとの出会いあり。
お父さんが暴漢から助けた草間さんとの出会いあり。
新しい学校にもなじみ…。
信楽で初めての冬を迎えたところでしたが…。
（喜美子）ただいま。
（マツ）お帰り。　お風呂たいてくれる？
（工藤）琵琶湖の向こうまで行かされてなぁ体　えらい冷えてもうてん。
（本木）お父さん帰ってくるまでおらせてもらいます。
大阪から来た借金取りです。
「どないしよう…」。　震える思いで懸命に考える喜美ちゃんです。
♪～
♪「涙が降れば　きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火　どうかここにいて」
♪「私を創る　出会いもサヨナラも」
♪～
♪「日々　恋をして胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら　笑うのよ　赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も　涙に負けるもんか」
♪～
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
「どうしてやろうか」と喜美ちゃんは考えます。
「これをくべたらお湯の温度は２度上がる。これやと３度。これも　これも　もっともっとくべたら…」。
うう…　ううっ。　熱っ！
もう悪いことはしません！　帰ります。熱い…。
♪～
・（工藤）おい。
ここは年寄り　おらんのか？
えっ？
・おじいちゃんや　おばあちゃんおらんのか？おい　聞いてんのか！？聞いてます！
おじいちゃんも　おばあちゃんもうちが生まれる前に亡くなりました。
あ～　お母ちゃんの方のおじいちゃんと　おばあちゃんは元気にしてるみたいやけど…会うたことはありません。
何でや？
さあ？・ああん？
詳しいことは知りません。
年寄りがおったら身の丈に合わん借金はするな言うて止めてくれたのにな。
・あかんで　返せん借金するんは。
・大阪で材木売る商売に手ぇ出してうまいこといったら２倍にして返します言うたん　そっちやで？
それを２倍どころかうやむやにして逃げよった。
・おい　聞いてんのか！？聞いてます！
・わしにもな　５歳になる娘がおる。
そっちから見たら　わしは借金取りに来た怖くて悪い男やろ？
せやけど　うちの娘から見たらそっちの方が約束破って　金返さん　悪い男や。
・分かるか？どんな人間でも　ええ面　悪い面がある。
怖い男に見えても　優しい男かもしれん。
・もうええで。　ちょうどええ湯加減や。
ありがとうな。
♪～
あ…　お父ちゃんのお酒…。
飲みたい言われて…。
（本木）うん。うまい　うまい。
ゆで卵　うちも食べたい！
何や？
ゆで卵　全部　食べんといて下さい。
何で？だって　それ　うちで買うた卵や。
そんなことは金返してから言わんかい！
（直子）怖い！喜美子！？
妹は　思うようにならんとかんしゃく起こします。
空襲の時に怖い目に遭わせてしもうたから…。
そん時のことが忘れられんで…。
心が弱いところがあるんです　妹は。
そやから　頼みます！
１個でええ。妹に　ゆで卵やって下さい！
やって下さい！
♪～
　回想　（工藤）怖い男に見えても優しい男かもしれん。
♪～
誰がやるか！
優しい男ちゃうのん！？
はあ？　何　言うとんねん　お前。
あ～！
あっ　痛たたた…。な…　直子！直子！
あのガキ！
待て～！直子～！
（本木）待て～！
待て～　このガキ！よっしゃ　捕まえた。
おらぁ　おとなしくせえ！　クソガキ！嫌や！
（草間）嫌がってるでしょう　放しなさい！あん？
あっ　痛たたた…。痛い　痛い　痛い…。
草間さん！？
ああ…　くっ。
大丈夫？
この…　何さらすんじゃ！
おらぁ！
それは　あっという出来事でしたが喜美ちゃんの目には　まるで空を飛んでいくかのように見えました。
うわあ…　ああ…　ああ…。
（常治）オゥちゃん！
（大野）あら　お帰りなさい！えらい早かったですな。
はよ終わったさかい　帰ってきた。
これ　買うてな。あっ　喜美ちゃんと直ちゃんの？
あ～　かわいらしい。　喜びますな。
高かったでぇ　はよ渡しとうてな。
それと　あれ。えっ？あれや　あれ！
（２人）ラジオ！それ　それ　それ！
いや～　もう　べらぼうに安い中古の掘り出しもん。
手に入ったん？ええ。　頂いとった８００円できれいに収めましたわ。
早う！　もう早う！ちょっと待って下さい。
今　きれいに磨いてましたけ…。こんなん持ってきてもうた。
はよ　はよ　はよ。　早うしてよ　もう！アッハッハ。
ほな　これ借金の一部にさせてもらいまっさ。
ほんまにええんでっか？お宅のお金でっしゃろ？
こちらには　お金に代えられないご恩がありますから。
（工藤）年寄りの代わりにこんな　ええ人おってよかったな。けど　残りの借金は　まだまだあるで？しっかり返さんとな？
約束破ったら　また追いかけてくるでぇ。
ああん？
子どもに　そんな　やめて下さい。
約束します！
借りたもんは　必ずお返しします。
♪～
ほな　退散しよか。はい。
♪～
（本木）こいつ…。
ええもん持ってまんなあ？
川原常治さん　ですよね？
無駄足ならんで済みました。また来月もよろしゅう。
ちょお待ってくれ。　どういうこっちゃ？
草間さんいう方が訪ねてきたとこに居合わせまして。
草間…。
しょうむない男の代わりに１，０００円ばかし払うてくれはりましたわ。
ほな。ほな！
♪～
柔道！？　あれ　こうやって投げ飛ばしたん柔道いうのん？
うん　柔道の技の一つだよ。
魔法みたいやったなぁ！本当は　よくないんだよ？
やむにやまれず　思わずね…。ええやん！　うちも投げ飛ばしたい！
気に入らんやつ　エイッ！　エイッ！フフフッ。
うちにも　教えて下さい！えっ？　女の子が柔道…。
女は柔道やったら　あかんの？教えて下さい！
いや～。喜美子。
草間さん　困ってはるやないの。
・（常治）ただいま。お父ちゃんや！
お帰んなさい。　早かったなあ。
草間さん　覚えてる？　会いに来てくれた！
へえ～　そうか。
あのあと大阪で　割のいい通訳の仕事を見つけて働いていました。
ある程度　貯金もできたので東京に戻ろうかと…。
その前に改めて　ご挨拶に。
東京行ったらなかなか会われへんやろ？
東京は遠いし日本の真ん中やからな。
日本の真ん中は大阪や。
お話　よう分かりました。
直子を助けて頂いたこともほんま申し訳ない。
感謝いたします。ああ　いえ…。
そやけど　お金は困りますわ。
なんぼなんでも　借金の一部を草間さんに払うてもらうようなことは…。
そう　おっしゃるだろうと思いましたが…。
大阪で暴漢に襲われた時助けてもろた借りを返したいて草間さんの強いお申し出やの。お金が欲しくて助けたわけやない。金額　１，０００円でしたな。
８００…と…。
こんな　お金…　どこに…？
８５０円あります。
あ…　ここに　３０あったわ…。　８８０円。
残りが　１２０円…。
あの　今夜は　ここに泊めて頂くのでその宿代というのは　どうでしょう？
そんなんは　もらえません。１泊１００円で。
それで　残りの２０円は僕の　借りを返したいという気持ちで…。
いや…借りいうのは…。
受け取って下さい。　お願いします。
え…　いや…　ほな　残り２０円　返しますわ。どっかに　２０円…。
川原さん　本当に　もう　それで。いや　あと２０円だけ。
受け取ったらええやん。
草間さん　くれるいう２０円もろといたら　ええやん。（マツ）喜美子。
何で　受け取らへんの？喜美子　ええから！
あかんねん！　もう。せやから　何で！？あかんもんは　あかん！何でや！
（たたく音）黙っとけ言うとるやろ！
♪～
何で…。
何でや！？