小中学校に行っていない外国籍の子どもが二万人近くいる可能性が、初の調査で分かった。外国人労働者の受け入れを拡大した今、国は本腰を入れて学びの受け皿を広げる必要がある。
憲法で義務教育の対象は「国民」となっている。だが同時に国は「初等教育は義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること」と定めた国際人権規約に加盟している。
そのため地方自治体は希望する子どもについては、学校で受け入れてきた。ただ、日本語も分からず来日した家族にとって、学ぶ意欲があったとしても日本の学校に入り、さらに学び続けることには、さまざまな困難を感じてきたのではないか。受け入れる自治体の熱意にも濃淡がある。
学校に行っていない可能性がある子どもが最も多いのは東京都で八千人近くいる。住民基本台帳上、義務教育段階にある子どもの三割以上に上る。大阪や神奈川、愛知など外国人労働者が多い都市部は軒並み多い。
その中には、住民基本台帳には載っているのに、教育委員会がその情報を共有しておらず、親に問い合わせすらできていない事例も多数ある。一方で、二千人以上の子どもがいる浜松市は八十五人にとどまる。同市は不就学家庭の訪問調査を実施している。
外国人の子どもへの教育が「義務」ではない以上、どこまで人や予算を投じればいいのか、地方自治体の側には困惑もあるだろう。
特段の指導体制を整備していない自治体の中には、人員や予算、ノウハウの不足を挙げるところもある。
都市部では、外国人の人数に体制が追いつかなくなっており、地方では、どのように受け入れていけばいいか決めかねている。そんな実態が見えてくる。外国人労働者の受け入れ拡大を国策として決めた以上、国は地域の実情に応じ早急に支援のありようを定め実行するべきだ。学び直しの機会を増やすため、夜間中学の整備も急務だろう。
過去に実態調査をした研究者によると、学校に行かない子どもたちは、家に引きこもっていたり、幼い弟や妹の世話をしているという。働いている子もいる。
今後、定住する外国人が増えれば、社会の担い手となることも増えていくだろう。子どもの将来の幅を広げることは、地域や社会の可能性を広げることにもつながっている。
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