ルパン三世 ナザリック狂想曲   作:マモー

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第2話

「はーるばるやって参りましたユグドラシルー!」

 

 ユグドラシルの世界にルパンの声が響いた、と言ってもボイスチャットではあるが。

 ユグドラシルにログインしたルパン一味の前にはリアリティ溢れる古めかしい街並みが広がっていた。

 初心者が最初にログインする『はじまりの街』その中心部である泉の前だった。

 

「コレがゲームの世界、か」

 

「よく出来てはいるがやはりゲーム」

 

「まぁ、そう言うなよ五ェ門。次元、おめぇだってアースビルん時みたいなゴーグルでゲームやるよりゃマシってもんだろぉ?」

 

「金庫室の幻覚ゴーグルか、あんなのはもうゴメンだぜ」

 

「幻覚ゴーグル?」

 

「あぁ、そう言えば五ェ門ちゃんはあん時居なかったっけかな?」

 

 ルパン、次元の言う通り二人はかつてダグラス財団の超高層ビル最上階金庫室で人間のありとあらゆる感覚器官を欺くバーチャル防衛システムによって恐ろしい体験をしていた。

 ちなみに五ェ門はその時ゴーグルを着用していないので知らなかったようだ。

 

「んで? ルパン、そのデータとやらが何処にあるか目星はついてんのか?」

 

「まぁーったく?」

 

「はぁっ!? じゃあどうすんだよ!?」

 

 次元がルパンに詰め寄るが当の本人はどこ吹く風である。

 

「そぉれをこれから見つけようってんじゃぁないの、情報収集しやすい様にわざわざドッペルゲンガーなーんて種族取ったんだからよ」

 

 ルパンの言葉通り、ゲーム上の種族はドッペルゲンガーになっている。

 通常であればレベル1のプレイヤーが選ぶことのできない種族ではあるが、そこは資金があるルパン、それなりに課金してその見た目すら本人のリアルの姿そっくりに変更済みである。

 

「ったく、ゲーム初心者のクセして最初っから課金かよ」

 

「そーゆー次元も五ェ門も課金してんじゃないの。ちゃっかりしてんだからもぅ」

 

「俺ァリボルバーが好きなんだよ。俺はコイツを裏切らねぇし、コイツも俺を裏切らない」

 

「左様、ゲームと言えど刀を持たねば修行にならん。しかし、やはり我が半身は斬鉄剣のみ。くっ……」

 

「相変わらずお固いこって」

 

 次元も五ェ門も種族こそ人間ではあるが、装備品はリボルバー拳銃と刀を課金購入済みだった。

 本人達は愛用しているコンバットマグナムや斬鉄剣でない事に若干の不満が有る様だが、あくまでゲーム、仕方ない事である。

 

 すると周りを行き交っていたプレイヤー達がルパン達を見て何やらヒソヒソと言葉を交わし出す。

 

「おいルパン。なんだか様子が変だぞ?」

 

「あーれま、どうしちまったんだ?」

 

「歓迎的な雰囲気では無さそうだ」

 

 辺りの不穏な空気に警戒するルパン達だったが、通りの向こうからやって来た鎧の一団がルパンを指差して声を張り上げた。

 

「おい! こんな所に異形種がいるぞ! やっちまえ!!」

 

「「「おーっ!」」」

 

「な、何だぁ!? 何だぁ!?」

 

 いきり立ったプレイヤー達に急に襲われるルパン達は一目散に走り出した。

 

「おいルパン! 一体全体こりゃどーゆーこった!? お前何やらかした!!」

 

「うるへーっ! 俺が知るかぁそんなもーん!!」

 

「ルパン! 状況がわからん、ここは一度別れるぞ」

 

 五ェ門の言葉にルパン達はそれぞれ違う道へと駆け込んだ。

 しかし、鎧の集団は全員そのままルパンを追いかけて行ってしまう。

 

「なーんで全員こっちに来んだよぉーっ!!」

 

「「ルパン!」」

 

「次元ー! 五ェ門ー! 情報収集頼んだぜーー!!」

 

 ルパンはそう言い残し街の外へと消えて行った。

 

 

 

……………。

 

 

 

「まぁったく、いきなりなぁーんだってんだ」

 

 はじまりの街近くの森。

 その木々の下をトボトボと歩くルパンの姿があった。

 散々と追い回され、なんとかここまで逃げて来たのだ。

 本来ならログインしたてのレベル1のプレイヤーが低レベルとはいえ自分より上のプレイヤーの集団から逃げ出すと言うのは本来不可能と言っても過言ではない、これはルパンのリアルでのステータスの高さゆえになせる事だった。

 

「そぉれにしても、一体どこだここぁ? 世紀の大泥棒が迷子たぁ、みぃっともねぇったらありゃしねぇってんだよなぁ」

 

 初めてのユグドラシル、地理もわからず走り回ったおかげであろうことか、かの大怪盗は森で絶賛迷子であった。

 ぶつぶつと文句を垂れながら森を歩くルパン。

 すると近くの茂みからボロいローブを纏った人影がこちらを見ているのに気が付いた。

 その人物も気付かれた事を理解してからおずおずと両手を上げてこちらへやって来た。

 

「あのー、すいませーん。異形種プレイの方ですよね?」

 

「なんだぁ? イカにもタコにも異形種ってヤツだっけどもがなぁ? おたくどっちらさんよぉ?」

 

「いやぁー、同じ異形種の人がいて良かった。街から飛び出してくるのが見えたんでまさかと思ったんですが」

 

 そう言って被っていたフードを下ろすとそこには真っ白な骨の顔があった。

 

「ぬわぁ!?」

 

「いや、私もプレイヤーですからね? 貴方と同じ異形種ですからね?」

 

 驚いて半歩下がるルパンにその骸骨は苦笑しながら語りかける。

 

「バッキャロー! ビぃックリさぁせやぁがってぇ、一言先に言っとけぇってんだ!」

 

「あ、えと、ごめんなさい?」

 

 かなりの剣幕で怒鳴るルパンに骸骨男も仕方なくも謝るしかない。

 

「でぇーもよ? なぁーんで俺が異形種だってわかったんだ? 見た目は金掛けて人間にしてんだっけどもがなぁ?」

 

「え? あの、見た目のスキンだけ変えても、隠匿系の魔法かスキルが無いと見ただけですぐにわかりますよ?」

 

「なんてこったい……」

 

 ガイコツのその言葉に落ち込むルパン、見た目もリアルの姿そのままにする為に課金したのだ。

 

「はは……ゲーム初心者なんですか? 私も最近初めたんですけど。あ、モモンガって言います」

 

「モモンガちゃんね。んで、なんの用よ?」

 

「いや、あの、よかったら一緒にプレイ出来ないかなーなんて、ハハ。あ、あの、お名前は?」

 

「俺か? 俺の名はルパン三世、かの怪盗アルセーヌ・ルパンの孫だ」

 

「ルパン?」

 

「おいおい、まさかお前さんルパンの名をしらねぇんじゃねっだろなぁ?」

 

「す、すみません」

 

「がっくし……」

 

「あ、あの! す、すぐに調べますから!!」

 

 そう言うや、モモンガはすぐにコンソールを開き何やら調べ始めた。

 

「あ、ありました。えーっと、ルパン三世? ……へぇー、概要見ただけでも凄い人なんですねぇ」

 

「そーでしょうとも、そーでしょうとも!」

 

 モモンガの褒め言葉に気を良くするルパンであったが。

 

「ファンなんですか?」

 

「ファっ、ファンだってぇ!?」

 

「え? いや、だってルパン三世ってもう百年以上前の人物ですし。実際、あまりの史実にアニメ化や映画化もされてますし……あ」

 

 そこまで言ってモモンガは思い当たる。

 つまりそう言う事か、と。

 つまりこの人はルパン三世のなりきりプレイヤー、つまりこれはロールプレイなのだ、と。

 

「へぇー、未来じゃ俺様映画になんてなってんの、肖像権の侵害じゃないかしら?」

 

「未来? あー、そう言う設定なんですね」

 

「なに?」

 

「いえいえ、なんでも無いですよ」

 

 ルパンがモモンガに思いっきり気を使われていた時、茂みからさっきまでルパンを追いかけていた集団が飛び出して来た。

 

「「あ」」

 

 その先頭の人物とルパンはバッチリと目があってしまう。

 

「さ、さっきの異形種!! 仲間が居たのかぁ!?」

 

「げぇっ!? とっつぁん程じゃ無いにしろしっつけーってんだよ!!」

 

「まさか異形種狩り!?」

 

「逃げるぞモモンガ!」

 

「え? ちょっ、まっ!!」

 

「逃すかぁ!!」

 

 こうしてガイコツを加えて二度目の追いかけっこが始まったのだった。

 


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