『おしん 一挙再放送▽第26週・自立編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド)
- オレ
- お前
- 雄坊
- 大奥様
- 庄治
- 田倉
- 竜三
- 加代
- 手伝
- お内儀さん
- 佐賀
- 自分
- お加代様
- 加賀屋
- 女子
- 世話
- 今日
- 心配
- 田植
- 一緒
『おしん 一挙再放送▽第26週・自立編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
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おしん 一挙再放送▽第26週・自立編[字]
主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。
詳細情報
番組内容
おしん(田中裕子)に、やっと心やすらぐ日々が訪れていた。寒い季節に始めた露店商の仕事は、決して楽ではなかった。しかし、自分の腕で稼いで食べることができ、誰にも気兼ねすることなく、息子の雄(ゆう)と二人きりの暮らしができるのは、佐賀でつらい日々を過ごしてきたおしんにとって、天国のように思えた。そんなある日、おしんのところへ、健(ガッツ石松)の恋人・ミドリ(玉井碧)が突然どなりこんできた。
出演者
【出演】田中裕子,並樹史朗,ガッツ石松,玉井碧,渡辺美佐子,高森和子,北村和夫,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一
♬~
(テーマ音楽)
♬~
やっと おしんに
心安らぐ日々が訪れていた。
ちょうど寒い季節に始めた
露天商は
決して 楽な仕事ではなかった。
…が 自分の腕で稼いで
誰に気兼ねも要らない
雄と二人きりの暮らしが
できるのは
佐賀での1年余りの毎日が
つらかっただけに
おしんには 天国のように思えた。
そして 厳しい冬も過ぎ
大正14年の春が来た。
(おしん)どうして そうやって
石を入れるの? 石 入れたら…。
(たか)あっ 精が出るわね!
お師匠さん!
この近くにね
古くからの お客さんがいてね
その お客さんの お嬢さんが
今日 結婚式だったんだよ。
久しぶりで
文金高島田 結ってきた。
あら~。
一度 様子 見に来たいと
思ったんだけど なかなかね。
いや ホントに こちらも
御無沙汰致しまして…。
お互いに忙しいから。
でも よく続いてるね。
おかげさまで これしか できる事
ありませんから せいぜい
一生懸命 やってるんですけど…。
(雄)駄目!
どうして?
じゃあ それ 洗ってて。
散らかってますけど
どうぞ 中 入って下さい。
雄坊も すっかり ちょっと
見ない間に大きくなって…。
ほら お土産だよ はい!
はい 開けてあげるね。 よいしょ。
あ~ おいしそう。 早速 頂きます。
雄ちゃん 大丈夫かい?
ええ。 もう 近所のおにいちゃんや
おねえちゃんと一緒に
自分も一人前のつもりで
遊び歩いてるんですよ。
いや~ 店の人たちにも
かわいがって頂いて。
佐賀にいる時は おばあちゃん子で
心配したんですけど
最近は 人見知りも
しなくなりました。
よかったじゃないか。
まあ 立派なもんじゃないの。
誰の世話にもならずに ちゃんと
こうやって うちまで借りて…。
私の心配なんて
取り越し苦労だったね。
お師匠さん 食べる物さえ
ぜいたく言わなければ
ちょっとずつ
お金 貯まるようになりました。
私 やっぱり ありがたいなと
思って…。
自分が一生懸命やってたら
分かって下さる方がいるんですね。
まあ 続けられるだけ
続けてみて
お金が貯まったら
田倉 呼ぼうかと思ってるんです。
こっちで 商売 始められる
めどがついたら
田倉にも 一日も早く来てもらって
3人で 早く暮らしたい。
竜三さんは 元気なのかい?
ちゃんと 便りは あるの?
あの人も
何だか 忙しいらしくて…。
でも こっちで商売できる
めどがついたら
必ず あの人 出てきてくれると
思うんです。
じゃあ 手紙は ないのかい…。
私の気持ちは 伝えてあるんです。
それさえ分かっててもらえたら
私は それでいいと思って…。
まあ あんたが信じてるんなら
何にも 私は言う事はないさ。
(健)お内儀さん!
雄坊 泥だらけだ。
転んだらしいんだが
泣きもしねえで。
さすが
お内儀さんの子どもだよ!
根性あるよ 雄坊は!
すみません。 拭こうね。
あっ お師匠さん。
ちょっと ご近所へ
寄ったもんだからね ついでに。
いつも
雄たちが お世話になって…。
いや~ あっしは ちょっと
お膳立てをしただけで
あとは
お内儀さんの腕と努力ですわ!
よいしょ。
お内儀さん これ 引っ張りだ。
そろそろ 春らしい色が
いいんじゃないかと思って。
あら~ すみません いつも。
そうね。 冬の物 いつまでも
着てる訳にもいかないし
ちょうど よかった。
あの~ おいくらですか?
いや いいんだ いいんだ。
あっしの気持ちだ。
いや それ 困ります。
ホントに いつも そうやって
頂戴してばっかりで…。
もう これ 商売物なんだから。
いや。 雄坊 ハトポッポ 見に行こうか。
なっ!
雄坊は ポッポちゃん 好きだもんな。
よし ポッポちゃん 見に行こう!
よいしょ!
(たか)行っといで。 ♬「ポッポッポ」
いいね 雄。
♬「ハトポッポ」
健さんは 相変わらず 親切だね。
よく 気が付くんです。
雄も もう すっかり
懐いちゃって…。
ねえ 春物… まあ いい柄!
早速 今日から 着ていこうかな!
おしん…。
そりゃ まあ 親切に
してもらうのは いいけどさ…。
そりゃ 私はね 健さんも おしんも
よく知ってるから 信じてるよ。
だけどさ 世間の口っていうのは
うるさくってね。
お師匠さん?
だって どうして 健さんと私が?
そりゃ そうだけどさ。
そんな事 言ったら
健さん びっくりしますよ!
ポッポッポに なっちゃいますよ!
(清)まだ 気分は
ようならんとね? えっ?
あ~ もう 熱は なかとこれ。
まあ 風邪ば ひいたとは
休めていう事さい。
たまには ゆっくりすっともよか。
どがんね?
福岡の師範学校ば 一番で出て
小学校の先生しよっとよ。
年は 27ばってん
そいで 行き遅れたと。
有田の窯元の娘で
生徒にも慕われとっていうけん
そら 心の優しか女子やろう。
まあ 美人っちゃ言えんばってん
人間 顔じゃなか。
殊に 女子は 心ばえが肝心さい。
おしんのごと 気の強か女子は
女房には向かん。
あっちでは 再婚でも構わんって
言いよっとじゃっけん。
(大五郎)ないが 見合いか!
竜三には おしんという女房が
おっじゃろうが!
「おしんとは 離別する」って
竜三の言いよっとですよ。
こっちで せんだっちゃ
おしんの方で
とっくに
縁ば切っとっじゃなかですか。
お前も お前たい。
おしんの便りば待つ前に
お前が聞いてやっとが
亭主っちゅうもんじゃなかか?
おしんの世話になっとっとこは
分かっとっじゃろうが。
(清)ふうけらしか!
どうせ おしんに 帰ってもらう
つもりのなかとない
何ば言うても 無駄ですたい!
お前が しっかりしとらんけん!
竜の 一体 どこが悪かて
言うとですか?
(大五郎)オイはな…。
もう よか!
オイの事は
もう ほっといてほしか!
♬~
健さんも疲れてるのに
すみませんね ホント。
いや~。 けど 雄坊は いい子だ。
お内儀さんが 店 やってる間
一人で遊んでるんだから。
母親が忙しいの
分かってるのかしらね。
あの… よかったら
お茶でも飲んでいって下さい。
雄坊 寝かせたら
すぐ 帰りますから。
どうぞ。
今日も よく売れたんですね。
うちの どんどん焼き
覚えて下すった お客様が
だんだん 増えてきたみたい。
子どもたちの顔なじみだって
いるんだから!
お客は 正直だ。 うまいもんは
ちゃんと知ってるんですよ。
お内儀さんが
いろいろ 苦心していなさるから。
あ~あ 少しずつでも お金 貯めて
せっせと働いてね
早く 雄に
父親の顔 見せてやらなきゃ。
田倉だって
きっと会いたがってるわ 雄に。
田倉さんは 果報者だ。
お内儀さんみてえな お人に
そんなに思われて…。
なっ 雄坊!
おいで。 はい ねんねだよ。
よいしょ。 おやすみ。
お前 何しに来たんだ!?
こんな所へ!
何しに来たは ないだろう!
ずっと前から
おかしい おかしいと思ってたら
やっぱり あんた この女と!
お前!
慌てたって 遅いよ!
あんた この女と
まるで夫婦じゃないか! チクショー!
よくも 私って女がありながら
こんな女と!
(健)危ねえ! 雄坊がいるんだぞ!
何が 雄坊だい!
あんた 父親気取りで
このガキ連れて 歩き回ってるって
言うじゃないか!
この女と一緒に ガキまで
背負い込もうって言うのかい?
人を踏みつけにしやがって!
もう~!
チクショー! 泥棒! 泥棒猫!
何だと!? お内儀さんに向かって
なんて事を!
だって そうじゃないか!
人の男を寝取りやがって!
それも 露天商の権利が
欲しいばっかりに 色仕掛けで!
あんた! あんたが…
あんたが 店 出すために
この人が いくらのお金
使ったのか 知ってんのかい?
知ってんのかい!?
仲間の連中 説得するのに
毎晩毎晩 酒 飲ませて!
黙れ! 俺はな 俺が お内儀さんの
力になりたくて やった事なんだ。
お内儀さんから
何にも言われた訳じゃねえ!
みんな 俺が勝手にした事だ!
お前が考えてるような事なんて
これっぽっちも ありゃしねえや!
へえ! あんた
この女と何にもないのに
何もかも 面倒 見てやったって
言うのかい? ふん! バカバカしい!
どんな世の中に
そんなバカな男がいるもんかい!
きれい事 言ったって
通りゃしないよ!
男ってのはな 本当に惚れた女には
指一本 触れねえだって
どんな事でも
できるもんなんだ!
力になれるだけで
ありがてえんだよ!
よくも ぬけぬけと!
それじゃ やっぱり あんた
この女に惚れてるんじゃないか!
人を こけにしやがって!
ああ! 惚れて 何が悪い?
俺は 惚れてるから
お内儀さんの手だって
握った事は ねえんだ!
お前とは違うんだよ
お内儀さんは!
あ~ そうかい! そりゃね
私は あんたに だまされて
女中代わりに
こき使われてるだけの女だよ。
でもね… でも あんた一人に
尽くしてきたんだ!
この女のように
亭主持ちのくせして
ほかの男と おかしくなるなんて
そんな ふしだらなまねは
した事は ないよ!
何だと!? ふしだらとは何だ!
もう一遍 言ってみろ
ただじゃ置かねえぞ!
あ~ 何度でも言ってやるよ!
ほかの男と おかしくなるなんて
ふしだらでなくて 何なんだよ!?
出るとこ出たら 姦通罪っていう
立派な罪になるんだからね!
このアマ! 言っていい事と
悪い事があるんだぞ!
この野郎 もう一遍 言ってみろ!
健さん やめて!
お願いだから やめて!
この人を連れて 帰って下さい!
お内儀さん…。
お願い! 帰って!
見せ物じゃねえや!
帰って下さい…。
(泣き声)
お内儀さん。
帰って…。
あっしは…。
帰って!
♬~
おしんの胸に 激しい
嫌悪と後悔とが渦巻いていた。
ただ 生きる事に必死だった
おしんの陰で
一人の女が
傷ついてしまっていた事が
おしんには やりきれなかった。
「もう 健さんの世話にはなれない。
なっては いけないんだ…」。
健の おしんへの気持ちを
知ってしまった事も
おしんには つらかったのである。
♬~
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(健)昨夜は
申し訳ございませんでした!
このとおりです!
あの女には 二度と
もう あんな事させねえ!
こらえて下さい!
健さん… 私が いけなかった。
つい 健さんの親切に
甘えてしまって…。
あんなに 迷惑かけてるとは
知らなかった…。
本当に ごめんなさい。
迷惑だなんて…。 あっしは
お内儀さんのお役に立てるのが
うれしくて やった事ですから
どうか
気にしねえでおくんなさい。
大体 あの女に あんな事
言われる筋合いは ねえんです。
そんな事 言っちゃいけないわ。
あの人は 健さんの世話を
ずっと していらしたんでしょ?
奥さんも同じじゃないの。
大事にしてあげなきゃ。
だからって お内儀さんに向かって
あんな失礼な事を!
健さん。 私たちは
何とも思ってなくたって
私が 健さんに
こうやって甘えてたら
世間の目には
どんなふうに映るのか
私 やっと分かった。
お内儀さん…。
それに 私 露天商の仲間入り
させてもらいながら
あの世界の事
ちっとも分かってなくて…。
店 出せるようにするために
健さんが
どんだけ お金 使ったのか
ちっとも 知らなかったの…。
これで足りるとは
思ってないんだけども
今の私には これだけしか
できないから 勘弁して下さいね。
こんなもん… こんなもんを
返してもらおうと思って
やった事じゃありません!
でも 私の気が済まないのよ。
お内儀さん!
お仲間の人たちには
後で お礼と お別れに
行くつもりなんだ。
まさか
露天商まで やめるって訳じゃ…。
これ以上
健さんに 迷惑かけられないわ。
人の口は 怖いわね。
私も まだ 田倉の女房でしょ。
何だかんだ つまらない噂でも
田倉の耳に入るような事に
なったら やっぱり…。
別れて暮らしてるだけに
そういう事は 気を付けなきゃ…。
健さん…。
本当に ありがとうございました。
楽しい仕事だった。
結局 健さんの好意
無にするような事になって
ごめんね。
でも… 健さんの事
一生 忘れないから!
よく分かりました。
もう あっしが お止めしても
どうにもなりゃしねえんですね。
お内儀さんは 一度 言いだしたら
お聞きにならねえ お人だから…。
ただ これだけは 頂けません!
あっしだって お膳立ては
あっしがするって約束で
始めて頂いた事なんですから。
でも… これは
私の せめてもの気持ちなのよ。
じゃあ 返して頂いた事にして
こいつは
一旦 納めさせて頂きます。
これは
改めて あっしから 雄坊へ。
雄坊には 随分 慰められました。
あっしは 小さいうちから
家族ってものが なかったから…。
あっしから
雄坊に お礼の気持ちです!
健さん…。
(戸が開く音)
(雄)母ちゃん!
雄坊とも お別れか…。
雄坊… 早く大きくなって
父ちゃんに抱いてもらうんだぞ。
また 会おうな。 雄坊… 雄坊…。
(雄の しゃべり声)
うん?
(たか)山形へ帰るって…。
やっぱり うまくいってないのかい
今の商売?
だから
言わないこっちゃないんだよ。
いくら おしんが
しっかり者だからって
あの世界は 特別なんだから…。
でも まあ
かえって よかったじゃないか。
そりゃ 健さんは いい人でも
あんまり 世話になっちゃ
どうかって 気にしてたんだ…。
だけどさ… だからって
山形へ帰る事は ないだろう。
うちにいりゃ いいじゃないか。
雄ちゃんの お守りしながら
ぼつぼつ 手伝ってくれたら
それでいいんだよ。
そのうち
手の方も よくなるだろうしさ。
≪(幸子)あっ 駄目 雄ちゃん!
危ないわよ! 雄!
≪(幸子)大丈夫です!
私 ちゃんと見てますから!
(たか)頼んだよ!
≪(幸子)はい! すみません。
あれですもの お師匠さん。
もう…。
雄 抱えて こちらに
お世話になったんじゃ
ご迷惑かけるばっかりです。
やっぱり
そんな事 遠慮してんだね。
山形 帰って 母に雄を預けて
私 外へ出ます。
もう一度 親不孝するつもりに
なりました。
そりゃ おっ母さんなら
雄ちゃんの面倒も
黙って見てくれるだろうけどさ…。
だけど あんな山奥じゃ
働くっていったって
仕事もないんじゃないのかい?
その気になったら
田んぼでも畑でも
よそのうち 手伝いに行ったって
食いぶちぐらいは…。
佐賀での事を思ったら
何でもできます。
やっぱり 自分のうちへ帰るしか
道がないのかね 女には…。
子どもを持つって
大変な事なんだね…。
おしんにとっては
父 作造の死以来
4年ぶりの帰郷であった。
その4年の間に
結婚 大震災 2度の出産と
おしんには 何十年も生きたような
苦労の連続であった。
そして とうとう
その苦労に押しひしがれ
身も心も疲れ果てての
惨めな故郷への敗北の旅であった。
(ふじ)郵便 来たが?
(とら)来てねえ。
おかしいな。
便り 出したのに そろそろ
返事が来てもええのにな。
(庄治)親が心配するほど 子どもは
親の事など 気にかけてねえって。
んでも 半年近くも
音沙汰がねえっていうのは…。
何か あったんだべが…。
「便りのねえのが ええ便り」って
言うでねえが。
おしんも 2人目できたら
ゆっくり 筆など持つ暇ねえべよ。
貞吉 行くぞ!
よし 行くぞ!
(貞吉)よいしょ!
母ちゃん。
達者で よかった。
おしん!
村は ちっとも変わってねえな!
昔と同じだ!
ほんてん おしんか?
今も お前の噂してたんだ。
よく帰ってきたな!
兄ちゃん 変わりねえが?
言ってくれたら
オレが 駅さ迎えに行ったのに…。
荷物は チッキで送ったから
これだけだもの…。
んだら しばらくはいられんのが?
よく 里帰りの暇 もらえたな!
この間も 便り 出したのに
返事 来ねえでよ。
毎日毎日 気が気でなかった。
いがった いがったな!
雄か? 大きぐなって!
長旅で疲れたべ。 入れ!
おしん 下のおぼこは
連れてこなかったのが?
ああ。 いろいろ 訳あってね…。
あ~ 大きぐなって!
そうですか。
山形へ帰られたのですか…。
聞いても
教えて下さらなかったんで
それで どうなさったかと…。
私も 詳しい事は
聞いてないんだけどさ…。
一体 どういうつもりなんだろうね
おしんは…。
健さんには 何でも話してると
思ってたんだけど…。
あっしが いけねえんです。
ただ どんな思いで
山形さ帰られたのかと思うと…。
田倉の旦那も 旦那だ…。
いつまで お内儀さんと雄坊を
ほっておくつもりなのか…。
そうなんだよね…。
竜三さんと一緒に暮らせるのを
あんなに
待ってたっていうのにさ…。
(幸子)郵便が来てました。
はいよ。
ちょっと… 竜三さんからだよ。
まあ 嫌だ。
「噂をすれば影」って言うけど
本当だね!
おかしいね。 「おしんが うちに
世話になってないか」だって…。
あら 嫌だ。 佐賀を出てから
梨の礫なんだって おしん…。
そんなバカな!
私には ちゃんと 竜三さんには
手紙 出してるって
そう言ってたのに…。
(清)早う 支度ばせんね!
(竜三)見合いはせんて
言うたろうが!
そんない 一生 一人でおるて
言うとね?
おしんは お前の事てん
もう 忘れてしもうとっさい!
竜~!
雄が生まれる時は
オレが行ってやれたけんど
下のおぼこの時は
何にもしてやれねえで…。
男の おぼこか? 女子か?
女の子だった。
なして 連れてこなかったんだ?
佐賀の おっ母様が
見てて下さるべけんど
まだ 乳が恋しいだろうによ。
(ふじ)おしん?
♬~
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(庄治)おしんが
帰ってきたんだって?
たまげたな! 随分 突然だな!
風呂 入ってたもんだから。
今 とらと子どもたちが
入ってるけんど
上がったら
母ちゃんも おしんも入るとええ。
湯から上がったら
すぐ 飯に すっから。
明るいうちに 風呂 入らねえと
暗くなったら
ランプ もったいねえからな。
それでも 5日に一遍 立てる
湯のある日に帰ってきて
おしんは 運がええな!
あ~ いつまで いるんだ?
嫁の身分で そうそう
うち 空ける訳にもいかねえべ。
母ちゃん おしんの事ばっかり
心配してたんだぞ。
いがったでねえが
顔 見られてよ。
んでも あんまり 引き止めたら
駄目だぞ。
おしんだって
姑も亭主もいる体なんだから。
(ふじ)おしんは
ここで暮らす事になった。
佐賀には 帰らねえ。
まあ 働く事は考えるとして
しばらくは ゆっくり休め。
おしん…。 お前 田倉のうちば
出されて 帰ってきたのか?
んだら 竜三さんと
夫婦別ればして?
ほだな事で ねえ。 竜三さんと
暮らす時も来るけんど
しばらくは 行くとこがねえがら。
おかしいでねえが!
竜三さんと
夫婦別れしたんでねがったら
なして 竜三さんと一緒に
いねえんだ?
竜三さん どこにいるんだ?
女房 構わねえで 何してんだ?
(ふじ)まあ これには
いろいろ 事情があって…。
後で ゆっくり 話すから…。
そら 帰ってきた者を
今すぐ出ていけとは言わねえ。
んでも おしんは 田倉の人間だ。
田倉の家にやった女子だ。
うちに 世話になるんだったら
田倉の方から 挨拶ばしてくるのが
筋ってもんだべ。
品物 預けるんでねえ。
人間には 口がついてるんだ。
飢え死にさせる訳には
いかねえんだからな!
(おしん)すまねえ 兄ちゃん…。
私と雄が食べる分ぐらいは
なんとかするから…。
お前に 何ができるって
言うんだよ!?
夫婦別れしたのでねがったならば
田倉の方で しかるべき事ば…。
おしんと雄が食うぐらい 何だ?
血 分けた妹が
困って 帰ってきてるんでねえが。
黙って してやるのが
きょうだいってもんでねえが?
ほだい 米が惜しいのが?
惜しいから言ってるんではねえ!
食わせてやりたくても
小作に 米がねえのは
おしんが おぼこの頃から
何にも変わっちゃいねえんだ。
よく ほだな事を!
お前が 小作の衆の先頭に立って
地主様と掛け合って
今では 小作が6割ももらえる事に
なってるんでねえが!
米がねえとは言わせねえ。
なんぼ 米 作ったって
世の中 物 高くなる一方で
食うために残してある米だって
高え物と換えるんでは
いつまで あるか…。
よく分かってる。
佐賀でも
小作が つらいのは 同じだった。
申し訳ないと思ってる 兄ちゃん。
なるべく 迷惑かけないように
するから…。
おしん 何 遠慮してるんだ?
お前が このうちに尽くした事
考えたら
1年や2年
タダで食わせてもらったって
釣りが来るんだ。
大きな顔してれば ええんだ。
うちの貞吉と同じ年だってな。
これから 食い盛りだ。
(ふじ)なして あだな
情のねえ男になったのか…。
おしん 庄治の事は 気にするな。
なっ。
兄ちゃんも 小さい頃から
貧乏に泣かされてきたからな。
兄ちゃんが悪いんじゃねえ。
貧乏っていうのは 人間 変えるな。
自分の家族 養うだけでも
精いっぱいなのに
私らみたいな やっかい者が
転がり込んできたんだ。
文句の一つも言いたくなるべよ。
≪(とら)湯さ
入ってけらっしゃい!
姉さんだ…。 挨拶しとかねえとな。
≪(とら)早く 入ってけろず!
冷めると また 余計な薪
くべらなんねえんだからよ!
急だったからよ 飯も足んねぐて
みんなで分けたんだ。
兄ちゃんたちは?
もう 食ったは。
おしん オレの分も食え。
いや 私も これだけあれば…。
明日は
白い飯 食わせてやるからな。
そだな米 どこにあるんだ?
何年ぶりかで
帰ってきたんでねえが。
白い飯ぐらい 食わせたって…。
いや 麦飯で十分だ。
ちっちゃい頃は
大根飯だったでねえが。
小作も 麦飯 食べれるように
なったなんて
ぜいたくになったもんだな。
おしんは 女子だから
どこへでも行ける。
好きな事もできる。
長男は つまらねえ。
どだな貧乏小作でも
うちと親は 見らんなんねえ。
せめて 麦飯ぐれえ
食えるようになりてえと
小作は 小作なりに
苦労してきたんだ。
おまけに きょうだいが
転がり込んできたら
貧乏だけは継いだっていうのに
面倒 見らんなんねえ。
長男ぐらい
引き合わねえもんは ねえな。
明日から オレたちは
所帯 別にするがらな。
飯 食う度に
こだな嫌み 言われたんでは
おしんも たまったもんではねえ。
別に 飯ば作るって言うのか?
ああ。 おしんと オレの分は
オレが ちゃんとするがら。
へえ~。 そだな米
どっから持ってくんだ?
飯ば炊く薪は
どっから 切ってくんだ?
ちゃんと もらうもんは もらう。
オレだって お前と同じように
田んぼや畑 やってんだからな。
んだべ? お前は働いて
おとらと おぼこを食わせてる。
オレは おしんと雄を
食わせるがら。 文句 あるのが?
私も 野良に出るから…。
お前に手伝ってもらうほど
田んぼも畑も ねえよ!
(庄治)誰が どれだけ働こうが
秋の取り入れまで
うちには 決まったもんしか
ねえんだ。
それも足りねえのに
余分な人間が増えたんだ。
所帯ば 別にするのもええけんど
そこんとこば
よ~く考えてもらわねえとな!
好き勝手な事されたんでは
いつか みんな
食えねえようになるんだからな!
おしん 兄ちゃんの事は
気にするな。
お前は
このうちば建てたんでねえが。
庄治が その事が
気に入らねえんだったら
銭で返してもらえ。
その銭で 米が どれだけ買えるか
分かんねえがらな。
(とら)誰だ!?
何してんだ!?
芋 出してるんだ。
あだな飯では 腹 もたねえがら
おしんに 芋 煮てやるんだ。
もうすぐ 芋 煮えるがらな。
せっかく帰ってきたのに
こだなものしか なくて…。
母ちゃん 私の事は ええって…。
客で来てる訳じゃねえんだから。
心配 要らねえって…。
オレは お前に
できるだけの事は してやりてえ。
してやらねえと 罰 当たるべ。
母ちゃん…。
遠慮してたら 庄治と とらに
干ぼしにされてしまうぞ。
ちゃんと言ってけろ! 勝手に
あだなまね されたからじゃ
オレが なんぼ 1人で
始末したかて 追っつかねえ!
今に 納屋の中
空っぽにされてしまうぞ!
おしんさんが この家さ
どだな事してきたかは
オレは 知らねえけんど
オラださ関わり合いのない事だ!
んだべ?
それに このうちだって
オラださ建ててくれた訳ではねえ。
おしんさんが
死んだ お父っつぁんのために
してくれた事だべ?
ほいづば
オラださ 恩 着せられたって…。
全く 今頃になって
帰ってくるなんて…。
たとえ 佐賀のうち追い出されても
一旦 嫁さ行ったら
石に かじりついてでも
辛抱するのが 女子の道だのに…。
おしんさんは わがままだ。
オレだって 何べん 里さ
帰りたいと思ったかしんねえ。
んでも 里だって
ここと同じように
暮らし 楽でねえと思ったから
ここで辛抱するよりほか
ねえと思ったから…。
やっぱり ここも帰ってくる所では
なかったのかもしれない…。
また ほだな事 言って…。
仕立物も髪結いもできねえ
手して…。
おまけに 雄ば抱えて…。
お前が なんぼ 強情っ張りでも
誰かの世話になんねえと
生きていかれねえんだぞ。
んだら 親の所にいるのが一番だ。
こだな時のために 母ちゃん
ここで頑張ってきたんだ。
んなら いっそ
震災の時に帰ってきた方が
いがったかもしれねえな…。
地獄だったべ?
かわいそうにな…。
鬼だ 田倉のおっ母さんは…。
私が悪いんだ。
最初から反対されていたのに
まさか 田倉のお母さんと一緒に
暮らすような事になるとは
思ってもいなかったから
たか くくって
あの人と一緒になって…。
そら お母さんにしてみれば
反対したいのは やまやまだ。
私は私で
佐賀の旧家の嫁ってもんが
どんなもんかも分かんないから
佐賀の お母さんにしてみれば
普通の事でも
いじめられてるような気が
してな…。
はい 母ちゃんも ほら 飲め。
(ため息)
おしん…。
うん…。 もうな
何にも 誰も 恨んでいない。
昔 材木問屋に奉公してて
私が逃げ出して
脱走兵の兄ちゃんに
助けてもらった事が あったべ?
うん…。
あの俊作兄ちゃんには
いろんな事 教えてもらったんだ。
人を恨んだり憎んだりしたら
一番つらいのは 自分だって。
恨んだり憎んだりする前に
その人の気持ちになって
許してやるんだって…。
私…
佐賀の
お母さんの気持ちも分かる。
佐賀の お母さんにしてみれば
私みたいな嫁が来て
情けなかっただろうし…。
私のせいで みんな
つらい思いしたんだよね。
佐賀の お父さんも お姉さんも
あの人も…。
申し訳ないと思ってる。
おしんが そだな気持ちなら
母ちゃん もう何にも心配しねえ。
竜三さんと一緒に暮らせる日まで
ここで 辛抱して…。
母ちゃん
お前に 不自由はさせねえがらな。
芋 食え。
母 ふじの思いやりは
久しぶりで
おしんの寂しい胸に
温かく しみた。
…が 自分の事では 今まで
黙って耐えてきた ふじが
おしんを かばおうとして
強い態度になっているのが
おしんには ありがたいと同時に
不安でもあった。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(とら)何してたんだ!?
(ふじ)米 といでるんだ。
なして おっ母さんが
ほだな事を! 今までどおり
オレが支度して みんなで
うちで食ってもらうから!
今日から 所帯は別だって
言ってあるべ。
後で みそと しょうゆは
もらいに行くからな。
なにも 別にする事は
ねえでねえが。 二重手間だべよ!
お前の指図は 受けねえ。
んでも…。
お前らと一緒では
おしんが気兼ねだ。
ろくなもんも
食わせてもらえねえがらな。
お前らも その方が 気楽だべ。
(おしん)おはようございます。
母ちゃん
私は どんな事でも辛抱する。
私の事で 兄ちゃんや姉さんと
気まずくなるような事だけは…。
お前は 心配する事はねえって。
ここは お前のうちじゃねえが。
ゆっくり 休んでたらええ。
今まで さんざん
つらい思いしてきたんだ。
親の所で 気ぃ遣う事はねえ。
だからって
遊んでる訳にもいかねえべよ。
うちで手伝う田んぼも畑も
ないんだったら
どっか よそへ働きに行く事
考えねえとな。
雄ば連れて 働きに出るって
言うのが?
そら~ その気になれば
女中奉公だって
製糸工場もあるけんど
雄ば連れて 住み込む事は 無理だ。
うん。 よく分かってるんだ…。
ただ 母ちゃんが
雄 預かってくれたら
私は 町へ働きに行ける。
ぼんやりしてる訳にも いかねえ。
おしん オレが 雄を預かる事は
何でもねえ。
んでも
雄が分別のつく年になるまで
母親が そばにいてやるのが
本当でねえが?
雄が かわいそうだ…。
(庄治)ああ! はあ~。
はい これ 母ちゃん。
おしんは 子守しながら
うちさ いるのが?
寝て食って ええ身分だな!
とらだって同じでねえが。
とらは 2人の子どもの面倒
見らんなんねえ。
オレだって お前が おぼこの頃は
お前の手 引いて
はるさ おぶって
野良仕事 出たもんだ。
母ちゃん…。
オレは 今まで黙ってた。
んでも お前が遊んでるように
嫌み 言われたんでは
黙ってる訳には いかねえ。
とらの かい性のねえ事
棚に上げて
おしんに言うんだったら
とらさ働かせてから言え。
(りき)おしんちゃん?
おしんちゃんでねえが!
おりきさん!
おしんちゃん 帰ってきてるって
聞いてよ! まさかと思ったんだ。
いや 今日にでも
挨拶に行くつもりだったんだ。
元気そうで何よりだなっす。
(りき)はあ~ んだったのが…。
いや オレ おふじさんに
おしんちゃんからの手紙
よく読んでやってたから
佐賀の方は
うまくいってるもんだとばっかり。
酒田の加賀屋さんでも
おしんちゃんの便り 見て
皆さん 安心しておられだのによ!
加賀屋の皆さん お元気ですか?
ああ みんな 元気だ。
大奥様も まだまだ
しっかりしておいでになる。
ただ お加代様が いまだに
旦那様ば
うちさ お入れにならねえんだ…。
そら 外で 女子ば こしゃえて
子どもまで
できてしまったんだから
お加代様も 愛想尽かしなさるのも
無理ねえけんど…。
加賀屋の跡継ぎ できねえのが
大奥様の悩みの種なんだ。
お加代様も
しんの強いお方だから…。
おしんちゃん 一遍
大奥様さ 顔 見せてさしあげろ。
お喜びになるぞ。
いや 加賀屋さんには
私が 山形に帰ってる事は…。
心配 おかけするだけだから…。
ほだな事!
会いたくない こんな時に…。
せめて 笑って話せるように
なってから…。
おしんちゃん… 分かるって。
ここさ帰ってきたって
昔とは違うもんな。
承知して帰ってきたつもり
だったんだけどね。
ただ 私も
ブラブラしてる訳にもいかなくて…。
雄 連れて どっか
働きに行ける所ないかしら?
おりきさん 顔 広いから…。
田んぼや畑の手伝いだったら
雄 連れて 雄 遊ばせながら
できると思うんですよ。
まあ 10銭か20銭…
米1合か2合かでもいい。
野菜で もらったって
構わないんだ。
雄と私の食いぶちに
なるんだったら…。 んだべな。
なんぼ おしんちゃんが
尽くしてきた うちだからって
いざ 世話になるとなったら
冷てえもんだからな。
お願いします。 ああ。
あの~ 心当たりなくねえがら。
いや~ ここのうちの田んぼ
手伝ってるより
他人の畑ば手伝った方が利口だ。
銭でも物でも くれるからな!
ハハハハ!
≪(雄の泣き声)
あれ? 雄坊でねえのが?
(雄の泣き声)
あの…。
(とら)おしんさん!
雄坊ば ちゃんと
子守してもらわねえと 困っず!
貞吉さ あめ 持たせたら
雄坊が取り上げたんだ!
人の物を盗むなんて まんず
めんごくない おぼこだこと!
貞吉 行くぞ!
自分の おぼこさ
物 やるんだったら
雄坊にも やるのが
本当でねえが!
それば 見せつけるような事
ばっかりして!
おしんちゃん オレが
ええ働き口 探してやるがら。
なっ! なっ!
(ふじ)おとら!
おとら ちょっと来い!
母ちゃん どうしたの?
おりきさんから 聞いたんだ!
おとらのやつ 許しちゃおけねえ!
とらさんが どうかしたの?
貞吉にだけ 菓子やって
雄に やらねえで
雄が盗ったって 雄ば折檻したって
言うでねえが!
子どものケンカだ あれは。
母ちゃんが ほだい
怒る事ではねえ。 いいや!
同じうちに
同い年の おぼこがいるんだ。
分け隔てするような事して!
ええんだ そんな事は。
いぐねえって!
つまらねえ事だと思うべけんど
おぼこには 一番つれえ事だ!
これからも ある事だ。
雄が ゆがんでしまうでねえが!
言う事だけは 言っとかねえと!
何か 用か?
お前!
用でねえ! 母ちゃん 母ちゃん!
母ちゃん!
母ちゃん…
頼むから 私や雄の事で
波風立てるような事は
しねえでけろ!
お前が遠慮する事は ねえって!
私が いづらくなるだけでねえが!
おとらのやつ 自分が 財布のひも
握ってる事を ええ事にして!
母ちゃん 雄と私の事は
私が働いて 何とでもする。
それで ええって。
おしん…。
おりきさんがな
どっか 手伝いに行けるように
世話してくれるって
言ってるから
それで 雄の菓子ぐらい
買ってやれるようになる。
兄ちゃんや姉さん 当てにするのが
間違ってるんだ。
母ちゃん!?
母ちゃん!
母ちゃん…。
米ば 銭に換えて
雄の菓子 買ってやる!
やめてけろ!
母ちゃん ほだな事したら
また 兄ちゃんに…。
庄治だけの米でねえ!
母ちゃんだって ちゃんと働いて
出来た米でねえが!
菓子なんか 要らねえよ!
菓子なんかな!
雄だけの菓子でねえ!
オレは 今まで 自分の物は
欲しいと思った事は ねえ!
んだから 銭ば欲しいと思った事は
ないけんど…。
庄治と とらが あだな人間だ。
おしんや雄に
冷たく当たるんだったら
母ちゃんが 欲しい物は
何でも買ってやるからな!
♬~
ほら 雄!
あめと ねじり棒と 麦焦がしだ。
着物も あるんだぞ。
古着だけんど
あんまり着てねえそうだ。
知り合いから譲ってもらって…。
みそと砂糖もある。
これで とらに いちいち
もらいに行く事もねえがらな。
魚の干物も買ってきたぞ。
今夜 焼いてやるがらな。
そんなもん 要らねえよ~!
畑のもんばかりでは
若え者は 体 もたねえがらな。
でも…。
(ふじ)心配 要らねえって!
オレは 今まで黙ってきた。
とらだって 米ば 銭に換えて
好き勝手やってるでねえが。
文句 言われる筋合いは
ねえって! ほれ!
≪(金づちで打つ音)
(金づちで打つ音)
庄治! そら 何のまねだ!?
そだなとこさ 南京錠 つけて!
このところ
急に 米や豆が減ってよ。
誰か盗むやつがいるんでねえかと。
不用心だからな。
盗人などで ねえ。
オレが 少しばかり
もらっただけだ。
ほだな事する事は ねえべ!
まあ 用心する事に越した事は
ねえって。
母ちゃんも これから
要る物があったら
おとらさ言ってけろ。
おとらが 鍵 持ってるからな。
庄治 お前 おしんにしてやるのが
ほだい惜しいのが!? 母ちゃん…。
ここにある物はな 俺たち家族が
命つないでいかんなんねえ物だ。
たとえ 母ちゃんでも
好き勝手な事されたんでは
俺たちだけでねえ
母ちゃんたちだって
困る事になるんだ!
母ちゃんには それが
分かってねえようだからな!
庄治!
かいづ 明日の米と麦だ。
うちは 庄治さんが男だから
ちょっと深く
もらっていくけんど
お互い 食い延ばしていかねえと
秋の取り入れまでには
あと半年も あるんだからな!
ほれ!
庄治のやつ
あだな女子の尻さ敷かれて!
母ちゃん 一旦 うち出た者が
里 当てにしたのが
間違いだった。
私が働けば済む事だ。
おしん。 母ちゃん
いつまでも かい性なくて…。
何 言ってるんだ~!
母ちゃん いてくれて
どんだけ 慰められてるか…。
ありがたいと思ってるんだぞ!
大丈夫だ。 働く事なんか
何でもねえんだから!
母ちゃん!
間もなく おりきの世話で
おしんは 手の足りない農家へ
手伝いに行くようになった。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(おしん)危ないよ。
ほら 危ないよ。
(雄)開けてないよ。
うん。 開けて。
(ふじ)帰ったのが。 遅かったな。
いや~ 今日 地主さんのとこで
建て前あったから
みんなにも 振る舞いあって…。
後片づけ
最後まで手伝ってたんだ。
疲れたべ?
田んぼや畑するより
よっぽど 気ぃ遣うわ。
そのかわり
これ お祝いのお餅 頂いた。
御祝儀も 1円も頂いて…。
それは お前が持ってろ。
母ちゃん お前から もらったの
まだ あるがら。
いや ええって。
何か要る物あったら
買ってもらうから。
明日から 田んぼだ。 今日 行った
地主様のとこで頼まれた。
うちも そろそろだな。
あ~ だったら
うちの田んぼ 手伝わねえとな。
ええって。 毎年 オレと庄治と
とらで 間に合わせてきたんだ。
お前は 庄治に
何にも してもらってねえ。
自分で稼いで 自分で食ってる。
手伝う義理は ねえべ。
ほか 行きゃ
50銭も 銭 もらえるんだ。
ただ働きする事は ねえ。
さあ 雄 そろそろ 飯にするが。
うん。
んでも 雄 連れて
田植えは 大変だな。
いや~ もう 慣れた。
雄 ひもで 木に くくりつけてても
この子 泣かないし
私の姿さえ見えてたら
もう 安心して遊んでる。
分かってんのかな
母親が働いてるって事を…。
雄は 聞き分けのええ おぼこだな。
んでも きついんでねえが?
疲れてるみたいだぞ。
つらかったら 休めよ。
取り返しのつかねえ事になったら
大変だからな。
大丈夫だ まだ 若いんだもん。
でも こんな暮らしが
いつまで続くんだか…。
ただ食べるためにだけ働いて
これから先 どうなるんだか…。
(清)はあ~ 山形さい帰ったて
言うてきたけん
いよいよ 竜三の事は 諦めたて
思うとったとばってん
まだ こがん しつこか手紙ば
よこして 性懲りもなしに…。
どこまで しつこか女子やろか!
竜三は
そろそろ 諦めかけよっけ
口ん裂けたっちゃ おしんの
手紙の事は 言うぎでけんよ。
竜三のためじゃっけんね。
この前 見合いばした
学校の先生の事も
まんざらじゃなかごた。
うまくいってくるっぎ あたいも
肩の荷の下りっとばってん。
お父さんの
いくら 反対しんさったっちゃ
竜三さえ
その気になってくるっぎ
お父さんてん
何も 文句は言えんたいね。
学校の先生 しとっくらいの娘ない
頭も よかろうし
田倉の家の嫁と言うても
恥ずかしゅうは なか。
(恒子)うちさい来んさっぎ
どうせ 野良仕事ば
しんさっとでしょうもん。
学問てん 要らんとじゃ
なかですか。
そん人の来てくるっない
野良仕事てん さすっもんね。
早う 子どもば産んでもろうて
よか孫ば 育ててもらうさい!
ハハハハハハ!
(庄治)おしん!
今日から うちも田植えだ。
今年は お前がいてくれっから
助かるな。
すまねえ。
私 頼まれた所 あって…。
おしん!
約束してしまったんだ。
ほだなバカな話があるか!
猫の手も借りたいぐらい
忙しい時に
うちの田植えしねえで ほかの
うちの田植えするって言うのか?
うちで田植えしたって
一銭にもならねえ。
それとも お前が
おしんが手伝ったら
ほかで手伝ったのと同じ銭
くれるって言うのか?
母ちゃん…。
早ぐ行け 遅ぐなるから。
よくも
そだな冷てえ事が言えるな。
今年は うちは 赤ん坊いるから
おとらに 田植えは無理だ。
おしんば 当てにしてたのに…。
なっ 雄は とらが預かるって
言ってるから。
自分勝手な事 言ったって駄目だ。
冷てえのは どっちだ?
血 分けた 困って帰ってきた妹を
ろくに 面倒も見ねえで…。
おしんはな 自分で稼いで
自分で食ってるんだ。
今日 行かねえで
信用 無くしてみろ。
仕事 来ねえでねえか。
それとも お前が食わせんのか?
おとらに田植えさせろ。
乳飲み子 抱えてても
できねえはずは ねえ。
母ちゃんは
何べんも してきたんだからな。
誰が食う米でもねえ。
お前たちが食う米でねえか。
おしんば 当てにするのは
大間違いだ。
とら! 田植えの支度しろ!
何 グズグズしてんだ!
(とら)なして
オレが行かんなんねえんだ?
(庄治)いいから 早くしろ!
(とら)やんだ!
おしんさんが いるでねえか!
今日は 田植えに
なんねえかもしれねえな。
おとらも負けてねえがら。
母ちゃん やっぱり
うちの田植え 手伝う。
ええって。
だって 私の事で ケンカされたんでは
もう いづらくて いられねえ。
いや~ いがった! もう
田んぼさ 出はったかと思ってよ。
昨日 酒田さ行ったら 加賀屋の
大奥様が倒れなさったって
もう 大騒ぎなんだ。
いや オレ おしんちゃんが
山形さ帰ってきてる事
加賀屋さんさ また心配かけると
思って 話してねえんだけんど
おしんちゃんは
大奥様に 大恩あるし
できたら 見舞えぐらい…。
多分 もう長くねえって。
いや~ おしんちゃんにも
都合ば あるべから
無理にとは言わねえけんど…。
伺います。
私だって 大奥様に お会いしたい。
おしん…。
今日は 田植えの約束があるから
行けねえけど 明日には 必ず!
んだな。 親よりも 大事なお人だ。
親よりも めんこがってもらった。
どだな事したって行かねえど…。
(赤ちゃんの泣き声)
(赤ちゃんの泣き声)
姉さん すまねえなっす。
(庄治)何 グズグズしてんだ!?
日 暮れるぞ!
(庄治)早くしろ!
ほんてん 汽車賃は あるのが?
露天商をしてた時に貯めたお金が
いざって時のために 残してある。
ホントは 健さんに返さなくちゃ
いけないんだけども
雄の餞別にって くれたんだ。
それならええけんど 母ちゃん
米も 自由にならねえがら
お前に 一銭の銭も持たせて
やれねえで…。 こらえてけろ。
そんなもん もらおうと
思ってねえって!
母ちゃん それよりも
私がいない間 兄ちゃんと
ちゃんと仲良くしないと駄目だよ。
一人だったら寂しいし
何があるか分かんないんだから…。
心配 要らねえって。
お前は すぐ出てって
すぐ帰ってくるだけでねえが。
雄は 置いていけ。
オレが 面倒 見てやるから。
母ちゃんだって 田んぼ まだ
残ってるのに 邪魔になるだけだ。
ほだな事…。 オレが 何人のおぼこ
育てたと思ってるんだ。
でも 加賀屋の皆さんにも
雄の顔 見て頂きたいし…。
お前が 雄 連れていきたいんなら
オレ 何にも言わねえ。
雄 早ぐ帰ってこい。
めんこい顔して 寝て…。
♬~
(とら)ええ身分だな
おしんさんは。
人が 一番 忙しい時に
好きなとこさ行けてよ!
何 言ってる? おしんは
物見遊山に行くんでねえ。
勝手して すまねえなっす。
気にする事ねえって。 ほれ。
気を付けてな。
♬~
ごめんください。
お加代様に
お会いしたいんですが…。
あんた 誰?
私 田倉しんと申します。
田倉?
はい。
「おしんが来た」と
お加代様に伝えてもらえますか。
(加代)おしん?
御無沙汰致しました。
あ~ よく来たこと!
大奥様の お加減が悪いって
聞いたもんで…。
おばあちゃんの事 聞いて
来てくれたのが?
大奥様は?
今度は もう
みんなも諦めてんだ…。
せっかく来てくれたのに
おしんの顔も分かるかどうか…。
お~。
(みの)おしん…。
お前 佐賀から
わざわざ 来てくれたのか?
誰が知らせたんだ?
おりきさんから聞いて 母が…。
それにしても 早かったのう。
そげな事は どうでもええんだ。
おばあちゃん
おしんが来てくれたんだよ。
ほら おしん。
おばあちゃん ほら おしんだ!
おばあちゃん。
駄目だ ず~っと 眠り続けてて…。
まだ 正気さ戻らねえんだ。
(加代)おばあちゃん おしんが
来てくれたんだよ。 おばあちゃん。
大奥様 おしんです。
(加代)おばあちゃん…。
おばあちゃんの
一番 好きな おしんが
来てくれたっていうに…。
(みの)しかたねえんだ。
お医者様は できるだけの事は
して下さってるんだ。 んでも
心臓の悪いのは
どうしようもねえんだそうだ。
このまま もしもの事あっても
おばあちゃんは 大往生だ…。
くには おしんにとって
俊作兄ちゃんとともに
大恩人であり 人生の師であった。
もはや もの言わぬ くにを
見つめながら
おしんは もう一度…
せめて もう一度だけ
くにに 礼を言いたかった。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
加賀屋の大奥様 くにが
危篤と聞いて
おしんは 雄を連れ
酒田へ飛んできていた。
…が くには
倒れてから こん睡状態が続き
もう おしんの声も
くにの耳には 届かなかった。
看病に疲れている
清太郎 みの夫婦に代わって
その夜 おしんは
くにに付き添っていた。
(おしん)大奥様…。
(加代)おしん…。
少し 代わろう。
大丈夫です。 お加代様は
お店が お忙しいでしょ?
お疲れになったんでは
ないですか?
すまねえのう…。
だけど おばあちゃんも
おしんに 世話してもらって
本望だろうのう…。
おしんを 誰よりも
めんこがってたんだもの…。
あんなに
かわいがって頂いたのに
何のご恩返しもできずに…。
そんな事は ねえんだよ。
田倉さんと一緒になった時も
男の子ができた時も
それは うれしそうだった…。
おばあちゃんは
おしんの事は
安心してるんだ。
大奥様!
おばあちゃん!
(くに)おしんか…?
はい。 おしんです。
(くに)どうして こげな所さ…。
佐賀にいたんでは ねえのか?
おばあちゃんの見舞いに
来てくれたんだ。
うまくやってるか?
ああ。 おしんは
幸せに暮らしてる。
手紙 見たではねえが。
ああ。 んだったな…。
いがったな。
(くに)加代は 駄目だ。
おしん。 お前から
よ~く話してやってけろ。
女子っつうものはな
なんぼ 商売ができても
幸せには なれねえんだ…。
そこが 加代には分からねえんだ。
おばあちゃん…。
加代にはな 姉も妹も いねえ。
おしん お前だけが頼りなんだぞ。
力になってやってけろな。
大奥様…。
頼んだぞ。
おばあちゃん!?
まだ 死なねえ!
まだ 死なねえったら!
(加代)おばあちゃんが…
おばあちゃんが
気が付いたんだよ~!
加代の ぼんぼ 見るまでは
何たって 死なねえ。
燃え尽きる ろうそくの火が
一瞬 赤々と
最後の炎を燃やすように
いっとき 意識を取り戻した
くには
その夜明け
眠るように 息を引き取り
米問屋 加賀屋を
その肩に支え続けてきた
76年の生涯を閉じた。
大木が倒れたような くにの死は
おしんにとって
一つの時代が終わったような
不吉な寂しさであった。
…が おしんに くにの死を
悲しむ暇は なかった。
葬儀の表立った事は 加代や清太郎
番頭たちが取りしきったが
裏の事は みのを助けて おしんの
仕事になったからであった。
♬~
あと お膳を
10ほど お願いできますか?
(2人)はい。
(みの)悪いのう
忙しい思いさせて…。
いいえ。 これぐらい
手伝わせて頂かないと…。
あんたさ任せておけば
安心ださげ。
この家の事は おばあちゃんが
みっちり仕込まれたさげ
私より よっぽど
よぐ分かってくれてるもんのう。
大奥様には
本当に 女子としての しつけを
みんな 教えて頂きました。
ありがたいと思っています。
せめて 加代も
おしんの何分の1かでも
女らしいところ
あってくれたら…。
≪(清太郎)加代! これ 待て!
加代!
オレは やんだ! 追い返してくれ。
(みの)何が あったなだ?
政男が 線香 あげに来たんだよ。
よく来られたもんだ! あげな男に
線香 あげてもらって
おばあちゃんが喜ぶはずねえで
ねえが! 追い返してくれ!
(清太郎)んだども
政男は まだ 加賀屋の婿だぞ。
男は もう こりごりだ!
オレは 一生 一人で
この加賀屋どご 守っていぐ!
それで いいでねえが! なっ!
分かったら
さっさと追い返してくれ!
(2人)加代!
お加代様…。
お加代様には 大奥様のお気持ちが
お分かりにはならないのですか?
「加代の ぼんぼの顔 見るまでは
死なねえ」って…。
大奥様 最後まで それだけを…。
おしんに説教される覚えはねえ!
いいえ! 言わせて頂きます!
お前が口出しする事ではねえ!
大奥様は 「加代の事を頼む」と
私に おっしゃいました。
それが どういう意味だか
お加代様だって お分かりでしょ?
お加代様が いくら
加賀屋を もり立てられても
跡を継ぐ方が
いらっしゃらなければ
何にもなりません。
大奥様は 最後まで それを…
それだけを 心残りに
していらっしゃいました。
お加代様だって それは よく…。
子どもを産むために あの男と
より 戻せって言うんだか?
オレの事 何だと思ってるんだ!?
バカにするのも
いい加減にしてくれ!
お加代様…。
それが 加賀屋の跡継ぎに
お生まれなすった
お加代様の務めです。
このままじゃ 大奥様
きっと 成仏なさいません…。
旦那様と お加代様…。
もう一度 旦那様と なんとか…。
(ふじ)やっぱり
駄目だったのか…。
(りき)ああ。 んでもよ
おしんちゃんにも会われて…。
葬式の手伝いも 立派にして
おしんちゃんも 心残りねえべよ。
ただ せめて 初七日 済むまでは
仏様のそばさ いてやりたいって
おしんちゃん。
ああ 大恩受けたお人だ。
気の済むまで お仕えしたらええ。
あっ これ 大奥様の形見だ。
おふじさんにって…。
オレにまで…?
(加代)おばあちゃんも とうとう
こんな姿になってしまって…。
お加代様…。
旦那様と
ええ夫婦になられたら…。
きっと 大奥様
どっかで見ておいでになります。
はあ~! どんだけ 時間かかるか
分かんねえけど
まあ 努力してみるよりほか
ねえだろうのう!
お加代様?
男なんて
誰でも 大して変わりねえって
このごろ やっと
そう思えるようになった。
年だがな オレも…。
おしんだって そうだろう?
あんなに惚れて 一緒になった
竜三さんだって
おしんの事 一人で
放り出してるでねえが…。
おりきさんから聞いた。
おりきさんは
「おしんが ふびんだ」って言って
オレにだけは
何もかも 話してくれたんだよ。
おばあちゃんも 誰も知らねえ。
おばあちゃんは
おしんが幸せだって信じて
亡くなってった。
里さ帰っても いろいろあるって
おりきさんが…。
そりゃ もう 里だって 兄さんの
時代になってるんだもんな…。
出戻った女子には いろいろ
風当たりだって 強えだろうし…。
お加代様…。
どんな目に遭っても
私一人が つらい思いする分には
何でもありません。
ただ 母ちゃんが…
母が 私 かばおうとして
兄夫婦と どうしても
うまくいかないんです。
おしん… 酒田にいろ!
入れ!
ほれ!
おしん ここで 商売しないか?
ここのうちの主に
銭 貸してたんだけど
返せなくて とうとう
夜逃げしてしまったんだ。
おしんが 商売してえって
言うんだったら
ちょうどいいと思ってよ!
元手は 融通してやる。
もうかったら
少しずつ 返してくれればええ。
お加代様…。
おしんが 酒田にいてくれたら
オレだって 心強え!
おばあちゃんだって
きっと喜んでくれると思うんだ。
さて 何の商売がいいかな~!
おしんには
信じられないような話であった。
商売は おしんにとって 夢である。
…が そんなに やすやすと
できるものではない事も
知っていた。
おしんは 今
一つの大きな 人生の曲がり角に
立っている自分を見つめて
ただ 立ち尽くしていた。