糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの

10月05日の「今日のダーリン」

・昨日「音楽というものは、こころを響かせる」と書いた。

 <音楽によって、こころを響かせた人は、
 よろこぶにしても、悲しむにしても、
 力を増してしまうんだよね。
 空っぽになりかけていたところが、
 生きる素みたいなもので満たされてしまう。>
 ということなども書いた。

 それを、じぶんに確かめさせてやる機会があった。
 おなじみの六本木『アビーロード』という
 ライブハウスに、金曜の夜に予約してあったのだ。
 ビートルズのコピーバンドとして有名な『パロッツ』が、
 またまた腕を上げておたのしみを用意してくれていた。
 50周年記念エディションが発売されたばかりの
 アルバム『アビーロード』後半の長い長いメドレーを、
 見事なライブ演奏で再現してくれた。
 「この曲、こんなによかったんだ」ということを、
 コピーバンドのライブで気づかされるというのは、
 なんとも複雑でおもしろいことだ。
 夏バテとか言っていたこのところの疲れと渇きが、
 どこかへ飛んでいったような気分になった。
 「生きる素」みたいなものを、たしかにいただいたよ。

・もうひとつ、笑い話のようなマジメな話。
 もうすぐ1歳の誕生日を迎える娘の娘は、音楽が好きで。
 音楽が聞こえるとリズムに合わせて手や腰を振って動く。
 しかも、うれしそうに満面の笑顔になるので、
 ぼくらは、彼女になにかと音楽を聞かせようとする。
 ところが、最近、母である娘の撮った新作動画で、
 「音楽を聞いて悲しそうにしている赤ん坊」があった。
 呼吸もみだれて肩で息をしているようにも見える。
 涙は出ているかどうかわからないが、泣き顔である。
 こども向けのなにかのテレビ番組でやっている
 『黄金虫(こがねむし)』という歌。
 これが流れると、怖くなってしまうらしい。
 そうか、どんな歌でもよろこぶわけじゃないんだ。
 悲しい気持ちになる歌も、もうすでにあるものなんだね。
 こころっていうものの広さ深さ複雑さを感じるなぁ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
『黄金虫』つくった野口雨情と中山晋平、恐るべしだなぁ。