最善のシナリオは4トライ以上での勝ち点5を手にすること。ただ、最優先は勝利。リスクをどこまで負って挑むか。現場リーダーの状況判断が重要な試合だった。
構図は予想通り、フィジカルを前面に出してくるサモアに対して、規律あるスピーディーなラグビーを仕掛ける日本、となった。連続攻撃を仕掛けられれば外側にスペースが生まれるが、前半は相手の数回のジャッカルで阻まれた。サモアはやはりパワフルである。
後半、涼しさもあって体力を奪われていないサモアは前半同様に個のパワーで勝り、一進一退の攻防が続いた。4点差に迫られ、ここというところで地元出身の姫野のジャッカルで流れが変わった。そして13分には自らトライも決めた。
圧倒的な声援を受け、ブザーが鳴っても最後の最後まで諦めることなく日本は攻め続けた。勝ち点5まであと1トライ。日本のスクラムは見事だった。世界の大男に対して、スクラムで勝負する姿は圧巻だった。
最後、松島の通算5個目のトライも見事だった。私の記録を超えてくれた。おめでとう。レメキも良かった。ラインアウトもほぼ100%ではないか。強い。本当に強くなった。みんな素晴らしいプレーだった。しかし、僕のMVPはやっぱり姫野。ここぞという時に本当に頼りになる男。次も頼むぞ、姫野。
改めてラグビーの素晴らしさに感動し、盛り上がりに驚かされた。こんなに声がかれるほど叫んだ試合は今まであっただろうか。観客がワンプレーワンプレーに一喜一憂し、大声援を送る姿を、1987年の第1回大会の頃に誰が想像しただろうか。ラグビーあっぱれ、日本ばんざい。(元日本代表)