歴史の中に消えようとするデジタルコンテンツを収集し保存するボランティア団体「Archive Team」に所属するBen Latimore氏が、終焉の危機にひんしているFlashゲームを収集し、誰もがプレイできるプラットフォーム「Flashpoint」を公開してから1年が経つ。
「Flashpoint」には現在1万タイトルが登録されており、約57GBの「Flashpoint 5.3 Ultimate」をダウンロードすれば、完全にオフラインですべてのゲームをプレイすることが出来る。また、300MBの「Flashpoint 5.3 Infinity」は、ゲームプレイ時にサーバーに接続してゲームファイルをダウンロードする仕組みとなっている。
「殿堂入りゲーム」や「ハロウィーンテーマ」のほか、製作者らが制作したプレイリストがはじめから10本以上入っており、1万以上のゲームの中からリストに見合ったゲームが選出されている。
2017年7月、Adobeが「Adobe Flash」の配布とサポートを2020年いっぱいで終了することを発表した。2010年ごろからAppleを筆頭にFlashからHTML5への移行が続いていたが、ついに完全な終焉となる。
Latimore氏は、Armor Games、Kongregate、Newgroundsといった主要なFlashゲームポータルが2020年以降の展望を示しておらず、今行動しなければ、2年後には数十万ものFlashゲームがウェブ上から永遠に消えるだろうと警告している。
Flashゲームクリエイターの中には、今でもゲームクリエイターとして活躍している人も多い。一例を挙げると、『QWOP』を作ったBennett Foddy氏は『Getting Over It with Bennett Foddy』を制作して再び脚光を浴びた。
『The Binding of Isaac』のEdmund McMillen氏は『Super Meat Boy』の前身となるFlashゲーム『Meat Boy』の他、数十のFlashゲームを手がけていた。
なお、『QWOP』と『Meat Boy』も「Flashpoint」に収録されている。『QWOP』のような有名な作品はHTML5版が公開されているが、作者が関与しておらずひっそりと消えていく作品たちも多い。
なおLatimore氏は5月に自身が書いた記事で、「これは合法ですか?」という問いに答えている。「それが合法かどうかは誰にもわかりません。そして本当に、誰も気にするべきではありません。Flashゲームは大なり小なり消滅の危機にひんしており、早急に保存することが求められています。そして私が知る限り、実際にそれを試みているのは私だけです。永遠に失われる可能性のある歴史の価値は、それを消滅させるには高すぎます。ゲームにはそれ以上の価値があります」。
Latimore氏がひとりで始めた「Flashpoint」のプロジェクトは、この1年で50名以上のボランティアが参加するプロジェクトへと成長した。その過程で、プラットフォームとなる「Flashpoint」の軽量化やブラッシュアップだけでなく、Adobe Flash以外に、Adobe Shockwave、Unity Web Player、HTML5、Microsoft Silverlightなど、全部で9種類の技術を利用したゲームにも対応した。
Latimore氏はコーディングが得意な人だけでなく、たとえばFlashゲームの歴史に詳しければプレイリストを作ったり、実際に「Flashpoint」を使用してくれるだけでも支援になると語っている。
文/古嶋 誉幸