正式署名へ 8日にも閣議決定
2019年10月04日
政府が日米貿易協定の正式署名に向けた閣議決定を8日に行う方向で調整していることが分かった。閣議決定後、日米両政府は速やかに署名式を行う。交渉関係者によると、署名式は大使・閣僚級で行い、米国での開催となれば、トランプ米大統領が立ち会う可能性もあるという。
同協定は25日(日本時間26日)の日米首脳会談で最終合意を確認。だが両国とも法的審査が間に合わず、共同声明への署名にとどまっていた。日本では協定の署名には事前の閣議決定が必要で、署名後、政府は10月中旬にも協定の承認案を臨時国会に提出する。米政府は来年1月1日の発効を想定しており、日本も早期の承認を目指す。
同協定は25日(日本時間26日)の日米首脳会談で最終合意を確認。だが両国とも法的審査が間に合わず、共同声明への署名にとどまっていた。日本では協定の署名には事前の閣議決定が必要で、署名後、政府は10月中旬にも協定の承認案を臨時国会に提出する。米政府は来年1月1日の発効を想定しており、日本も早期の承認を目指す。
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住民1/3が狩猟免許取得 自分の農地自分で守る 岩手県平泉町戸河内集落 岩手県平泉町の戸河内集落の農家らがまとまって狩猟免許を取得し、鳥獣害対策に乗り出した。人里に現れるイノシシや鹿が増えて田畑を荒らされる被害が増える中、69戸が暮らす同集落の約3分の1がここ3年でわな猟免許を取得。猟友会の狩猟者に指導を受けながら、捕獲頭数増加を目指す。 戸河内集落は人口のおよそ半分が65歳以上の高齢者だ。集落内の農家らは2016年度に6人、17年度9人、18年度は9人が主にわな猟免許を取得した。 4ヘクタールで水稲を営む自治会長の菅原悦朗さん(70)は、近年イノシシに集落内の田畑が荒らされる頻度が高まったことを受け、集落内の農家に免許取得を呼び掛けた。自身も16年度にわな猟免許、昨年は空気銃を扱う第2種銃猟免許を取得。自宅近くの山林に、くくりわなを設置している。 集団での免許取得について菅原さんは「地域の人がわなを設置できるかで(鳥獣害対策の成果が)大きく変わってくると思った」と振り返る。4月から7月末まででイノシシ14頭、鹿6頭などがわなにかかった。 約60ヘクタールの山地で林業を営む千葉繁明さん(36)も16年度にわな猟免許と第1種銃猟免許を取得した。「地域に貢献したいという思いがあった。被害拡大を防げるよう尽力したい」と意気込む。今年1月には猟犬2匹を加え、今後も狩猟に力を入れていく。 行政も農家の挑戦を後押しする。同町は試験会場までの無料送迎をし、県は免許更新料の半額助成などで支援する。 同集落で狩猟歴約20年のベテラン狩猟者、沼田秀夫さん(79)は新規に狩猟免許を取得した農家らにわなの設置方法を教えるなどサポートをしてきた。沼田さんは「人里に現れる獣が増え、自分の農地は自分で守らなければという農家の意識が高まっている」と、新人猟師を応援する。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月05日
[決着 日米協定](下) 未明の申し渡し 業界団体は一定の理解 対策予算が焦点に 26日の未明、午前1時すぎ。東京千代田区三番町の農水省共用会議所にJAグループや全国農業会議所、畜産・酪農などの団体幹部が次々と訪れた。 「日米貿易協定に合意しました。内容は……」 江藤拓農相や自民党の森山裕TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部長ら農林幹部「インナー」が待っていた。日米首脳会談が開かれた米国から合意の報告を受け、署名前に業界団体に結果の「申し渡し」をした。異例の未明となったが、自民党農林の伝統的な手法で理解を求めるのが狙いだった。 背景には、環太平洋連携協定(TPP)が、国政選挙での苦戦の一因になっていることがある。日米交渉では、生産現場の信頼が厚い森山氏が党の責任者を務めた。TPP反対を巡り政府・与党とJAグループの関係が悪化したことを受け、JA側は日米共同声明の順守を求めながらも、全国的な集会などは控えた。 「団体の方々にも結果をご評価いただけた」。26日未明の申し渡し後、森山氏は記者団にこう語った。JA全中の中家徹会長も同日に発表した談話で、米の「除外」を評価し、合意は「日米共同声明の内容を踏まえた結論」との考えを示した。 しかし、TPPと同様に関税(現行38・5%)を9%まで削減する牛肉を中心に、生産現場の不安は根強い。関東の肉用牛農家は「TPPの影響が小さいのは、発効して2年目だから。TPPの範囲内だから大丈夫とは思わない」と指摘する。 こうした声を念頭に江藤農相は26日未明、「不安に思う方々がいるのは十分理解できる。将来的なことを考えると、影響は無視できない」と記者団に強調。不安払拭(ふっしょく)に向け、国内対策を定めるTPP政策大綱を見直す考えを改めて示した。 国内対策は、見直し内容と共に予算確保が焦点になる。政府は2015~18年度に、TPP対策で計1兆2934億円の予算を計上。財政当局には「1兆5000億円程度で打ち止め」「TPPの範囲内なら新たな予算の理由がない」との意見がある。自民党や農水省は、輸出強化や地域政策など大綱に拡充や補強が必要な政策を盛り込むことで、予算確保を目指す。 政府・与党は4日召集の臨時国会に協定承認案を提出する。来年1月1日の発効に向けて早期の承認を狙う。 対する野党は「農産品で一方的に大幅譲歩した」(国民民主党の玉木雄一郎代表)などと批判を強める。 国会審議で与野党の激突は必至だ。TPP承認時には与党が採決を強行する場面もあった。東北のJA関係者は「米や牛肉など個別品目がどうだったかだけでなく、日本の食料や農村の将来をどうするのか議論してほしい」と訴え、日程ありきの審議にくぎを刺す。 2019年10月01日
川平慈英さん(俳優) 忘れられない母のケーキ 僕は沖縄で生まれ育ち、1972年の本土復帰の時に父の仕事の関係で東京に出てきました。 そんな僕のソウルフードは、沖縄で祖母が作ってくれた油みそです。みそにラフテー(豚の角煮)を加えたもので、ご飯に載っけて食べると絶品でした。 祖母は一緒に住んでいたわけではなかったんですが、僕たちが日曜に教会から家に帰ると、「また作ってきたよ」と油みそを持ってきて待っているんです。祖母はいつも香り袋を持っているから、玄関を開けたとたんに来ているのが分かるんですよ。「あ、油みそが来た」って。 沖縄独特の料理だと思っていましたが、実は全国に同じようなものがあるんですね。でもあちこちで食べましたけど、おばあちゃんの味にはかないません。とっても濃厚で、優しさにあふれていて。愛が詰まった味でした。 米国で農業体験 もう一つ忘れられない味は、母が作ってくれたキャロットケーキ。うちではキャロットブレットと言ってました。 母はアメリカ人で、カンザス州のヘストンという人口2000人くらいの農村の出身。実家は農家で、主に小麦と綿を栽培し、豚と羊も飼っていました。うちは男3人の兄弟ですが、川平家のしきたりとして、子どもたちは小学4年生になるとヘストンの伯父の農場に1年間ホームステイして、農作業の手伝いをさせられるんです。子どもであっても、戦力としてしっかり働かないといけません。 毎朝5時に起きて羊のわら替えをしました。コンバインやトラクターの運転も覚えさせられました。まだ小学4年生ですけど、交通のない私道で乗る分には問題ないというので。子どもの僕が、ジョンディアという緑色の大きなトラクターを運転したんです。 余談ですけど、おかげで18歳になって東京で運転免許を取る時、初日から半クラッチも坂道発進も縦列駐車も楽々できました。教官に驚かれましたね。 共演者にも好評 そういう農家に生まれ育ったわけですから、母のキャロットケーキは、たっぷり入ったニンジンの味が効いてました。ニンジンをすりおろすのは、僕たち子どもの役目。大きなボウルにたくさんすりました。生地はしっとり。レーズンが入っていて、酸味と甘味のバランスが良かったですよ。 母は去年の1月に亡くなりましたけど、それまで僕の舞台に必ずこれを差し入れしてくれたんです。あまりにおいしいので、共演の皆さんの間でも好評で、心待ちにされていたんです。「ジェイのお母さんのキャロットケーキ、今度は、いつ来るの?」と。それを母に言うと、満面の笑みで「え、そんなに有名なの?」と言って、作ってくれたものです。 4年前に突然、伯母が三線(沖縄の伝統楽器)を送ってくれました。「もう私はやらないから」と。僕は自分のルーツに強い興味を持ち始めていたので、練習を始めてみました。 半年後。東京に出てきている親戚らが集まる、恒例のクリスマスパーティーがありました。みんなチャンプルーなど沖縄料理を持ち寄り、母はキャロットケーキを作り、おいしく食べ、歓談しました。 そこで僕は三線で「てぃんさぐぬ花」を弾きました。このサプライズに、両親が号泣したんです。僕も演奏しながらもらい泣きをしてしまいました。母が亡くなる前に三線を披露できたのは、本当によかったと感じています。(聞き手=菊地武顕) かびら・じえい 1962年、沖縄県生まれ。上智大学在学中からミュージカルに出演。97年、「雨に唄えば」で読売演劇大賞男優賞受賞。読売サッカークラブユースなどでの選手経験を基に、サッカー中継ナビゲーターとしても活躍。11月1日から東京・シアタークリエでのミュージカル「ビッグ・フィッシュ」で主演。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年09月28日
[あんぐる] 酢っかりとりこ ミツカンミュージアム(愛知県半田市) 酢の産地として知られる愛知県半田市で、産地の歴史や製法を学べる「ミツカンミュージアム」が人気を集めている。体験型の多彩な展示物で思う存分“酢漬け”になれる博物館として評判を呼んでいる。 同館は市内に本社を構える酢の老舗メーカー、ミツカンが設けた。五つの展示室をツアー形式で巡ると、酢の知識を深めることができる。 異彩を放つのが幅約2メートル、長さ約8メートルのテーブルに並ぶ大量のすしの模型だ。マグロのにぎりずしやイクラの軍艦巻きなど1100貫が整然と並び、来館者の人気を集める。現在のにぎりずしの原型で、江戸で人気があった「早ずし」にも、同地で造られた酢が使われたという逸話にちなんだ展示だ。 この他、仮名の「す」の文字の一部になりきるコーナーや、オリジナルラベルのポン酢作りなど、ユニークな体験がめじろ押しだ。 醸造技術や歴史を紹介する一角では、江戸時代に実際に使っていた仕込みに使う直径約1・8メートルの木おけや、江戸まで酢を運んだ全長約20メートルの「弁才船(べざいせん)」を実物大で再現した物もある。同県東浦町から訪れた会社員、杉浦暁子さん(39)は「この船で酢が運ばれていたかと思うと感慨深い」と感心していた。 (写真左)江戸時代に作られた仕込み用のおけを見物する来館者(同・右)仮名の「す」の文字になりきる来館者 同市がある知多半島は古くから酒などの醸造が盛んだ。同社も造り酒屋がルーツで、江戸時代の1804年に創業者が酒造りの際に出る酒かすを活用した「粕酢(かすず)」を考案。米との相性の良さからすし酢として評判になり、江戸まで送るようになった歴史がある。 同館は酢の歴史や魅力の発信を目的に1986年に開館。2015年に展示内容を一新した。年間およそ16万人が訪れ、市内の観光の目玉になっている。榊原健館長は「酢がテーマの博物館は全国でここだけ。台所では脇役の酢もここでは主役。楽しみながら親しんでほしい」と話す。(富永健太郎) 「あんぐる」の写真(全5枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます 2019年09月30日
農政の新着記事
堆肥・化成混合OK 省力、低コスト期待 法改正 農水省は4日、堆肥と化学肥料を配合した「混合肥料」の製造販売を認めるなどの肥料取締法改正案を明らかにした。堆肥と化学肥料を混合した新しい肥料の開発や利用が可能になり、農家は土づくりと施肥が一度にできる施肥作業の省力化や経費削減などが期待される。農家が安心して肥料を活用できるよう、肥料原料として利用可能な食品残さなどの産業副産物に規格を設け、安全な肥料の確保にもつなげる。…… 2019年10月05日
日米協定 生産基盤強化で対策 臨時国会首相所信 輸出加速へ意欲 第200臨時国会が4日、召集された。安倍晋三首相は所信表明演説で、日米貿易協定について「生産基盤の強化など十分な対策を講ずる」と強調。環太平洋連携協定(TPP)などで農産物の輸出が増えたとして、新法の制定でさらに加速させる方針を打ち出した。豚コレラの早期終息を目指す考えも示した。 日米貿易協定の合意について「日米双方にウィンウィンとなる結論を得られた」と改めて評価。一方で「それでもなお残る農家の皆さんの不安にもしっかり向き合う」と、十分な対策を講じる考えも示した。政府・与党は今国会で同協定を承認したい方針だが、合意内容を巡って野党の追及は必至だ。「自由貿易の旗手」として、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉などを進めていく方針も示した。 豚コレラについては、「ワクチン接種をはじめ、あらゆる対策を総動員して、一刻も早い終息に努める」と強調した。 農産物の輸出を巡っては、TPPや日欧経済連携協定(EPA)の効果で「牛乳・乳製品の輸出は2割以上増加し、欧州への牛肉輸出は3割上昇している」と主張した。 「あらゆる農産品に、世界に羽ばたくチャンスが訪れている」とし、輸出加速への意欲を表明。農水省が今国会に提出する農林水産物・食品輸出促進法案の制定で「各国の輸入規制緩和に向けた働き掛けをオールジャパンで進める」とした。 「ベトナムやシンガポールでは最近、日本の粉ミルクが人気だ」「福島の農産品輸出は過去最高となった」「32の国と地域で(輸入)規制の完全撤廃が実現した」など、輸出に関する実績を並べて強調した。 東日本大震災からの復興に向けて「司令塔となる復興庁の後継組織を設け、復興に全力を尽くす」と訴えた。 「これからも、安倍内閣は経済最優先だ」と強調する一方、農政改革をはじめとする規制改革への言及はなかった。憲法改正論議の進展にも強い意欲を示した。 所信表明演説に対する各党の代表質問は衆参で7~9日に予定する。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月05日
群馬で感染イノシシ ワクチン対象県に 農水省検討 群馬県で豚コレラに感染した野生イノシシが4日、確認された。これを受け農水省は同日、飼養豚への感染を予防するワクチン接種の対象に同県を加えるかどうかの検討に入った。同県は関東最大の養豚地帯で飼養頭数は60万頭を超える。同省は現在の備蓄ワクチンで賄えるかどうかも踏まえて結論を出す。 群馬県は同日、豚コレラに感染した野生イノシシが藤岡市、上野村で見つかったことを発表した。同県での野生イノノシの感染は初めてで、国内では10県目。これまで同省は、ワクチン接種を可能にする推奨地域を豚やイノシシの感染を確認した埼玉、富山、石川、福井、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀の9県を想定していた。 江藤拓農相は同日の閣議後会見で、群馬県を接種対象にすべきかどうかについて、専門家でつくる同省の牛豚等疾病小委員会に「意見を求めることになる」と推奨地域に追加を検討する考えを示した。群馬と千葉、静岡の3県からも、ワクチン接種を認めるよう要望があることも明らかにした。 当初想定していた9県での飼養豚は合計で78万頭。群馬県を加えると141万頭に大きく増えるが、国が保有しているワクチンは150万回分。江藤農相は「現実に対応できる(ワクチンの)数量と区域は、現場の意見と状況を見極めながら決めたい」と述べた。 政府は同日、豚コレラ関係閣僚会議を開催。菅義偉官房長官は「極めて重大な局面」と危機感を表明。農水省を中心に関係省庁一体で野生イノシシ対策を強化し、飼養豚への予防的なワクチン接種の準備を早急に進めることを確認した。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月05日
脱粉 初の輸入枠縮小 ヨーグルト消費鈍る 農水省 農水省は4日、脱脂粉乳の2019年度の輸入枠について、当初計画から6000トン縮小し、1万4000トンにすると発表した。主な用途であるヨーグルトの消費が鈍り、在庫が積み上がっていることなどを理由に決めた。輸入枠の縮小は、乳製品輸入の国家貿易枠を設定した17年度以降で初めて。 脱脂粉乳は、8月末の在庫が前年同月比8・3%増の7万1000トン。実需者が必要とする在庫数量6万トンを大幅に超えている。 同省によると、4~8月の国内生産量は、同5・5%増の5万3000トンで、増加基調にあるという。5月時点は、当初予定の2万トンに据え置いたが、その後の輸入分の落札が低調であることなども考慮した。 脱脂粉乳は主に、ヨーグルトやアイスクリームなどの原料に使われる。近年、拡大していたヨーグルト市場に一服感が見られることを受け、在庫が積み増している状況にある。 バターは、最需要期の年末に向けて在庫量は十分とみられ、輸入枠は2万トンに据え置く。 19年度生乳需給見通し 都府県減産さらに Jミルクは4日、2019年度の生乳・牛乳乳製品の需給見通しを公表した。全国の生乳生産量は前年度比0・5%増の732万トン。前回7月の見通しから0・1ポイント下方修正した。北海道は増加基調にあるが、都府県では猛暑や台風による被害の影響もあって、一層の減産となる。道産への依存が高まる生乳生産の課題が、改めて浮かび上がった。 北海道は前年度比2・5%増の407万トン。7月時点では2・2%増と予想していたが、上振れした。生乳生産の主力となる乳用雌牛の2~4歳頭数が、ここ5年間で最多となるなど、見通しは良好だ。 一方、都府県は325万トンで前年度比1・9%減。7月予想時より0・5ポイント下落し、全体に占める割合も44・4%に低下した。7月の梅雨寒は暑さに弱い乳用牛にプラスに働いたものの、8月の猛暑や9月の台風の影響があった。 Jミルクは、台風15号による千葉県での搾乳、生乳集荷などへの被害に言及。「現在、生乳集荷量はほぼ災害前まで回復しつつあるものの、今後は乳用牛のダメージなどによる生産への影響が懸念される」として、状況の推移を注視する構えだ。 北海道から都府県へ運ぶ「道外移出量」は、前年度比9・8%増の54万トン。歯止めのかからない都府県の減産に応じて、当面は道産乳への依存が続く見通しだ。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月05日
検証 首相所信 好調な輸出実績強調 通商効果 根拠乏しい品目も 安倍晋三首相は4日の臨時国会冒頭の所信表明演説で、日米貿易協定交渉の内容や農産物輸出の実績などを政権の成果として訴えた。日米協定は日米双方に利益のある「ウィンウィン」の結果になったと強調。牛肉など輸出額が伸びている品目は具体的な数字を使いアピールした。だが、詳しく検証すると、根拠が乏しいと思える発言もある。一連の発言は、今後の国会で争点になる可能性がある。 日米貿易協定については「日米双方にウィンウィンとなる結論を得た」と強調した。農産品は米を関税撤廃、削減から除外。一方、牛肉の関税削減は環太平洋連携協定(TPP)並みを受け入れた。さらに、自動車・同部品はTPPで合意した撤廃期限が明記されなかった。 そうした結果を踏まえ、野党は安倍首相の発言に「どこがウィンウィンなのか」(農林幹部)と疑問視。今後の国会審議で追及する構えだ。 所信表明で言及した農産物の輸出実績のうち、「欧州への牛肉輸出は3割上昇した」は、19年2~8月の欧州連合(EU)への牛肉輸出額は前年同期比33%増の12億円。実績に裏打ちされた発言だった。 「昨年度、福島の農産品輸出は震災前から4割近く増加し、過去最高」とも発言。福島県によると、18年度の農産物輸出量は過去最高の218トンで、発言通り東日本大震災前の10年度の153トンから42%増えている。 一方、「TPPやEUとのEPA(経済連携協定)によって、牛乳や乳製品の輸出は2割以上増加した」の発言は、両協定を輸出増大の追い風とするには根拠が乏しかった。 農水省によると、日本の牛乳・乳製品輸出額(19年1~8月)は前年同期比23%増の123億円。実際の数字と発言は合致しており、TPP参加国への輸出額は56億円と5割弱を占める。一方、EU向けの輸出額は1323万円で全体の0・1%程度。発言の中にある「日欧EPA」の効果は見いだせない状況にある。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月05日
農相 日米協定の試算必要 野党は早期提示要求へ 江藤拓農相は4日の閣議後の記者会見で、日米貿易協定の影響試算は必要との認識を示した。政府は、臨時国会に同協定の承認案を提出する方針だが、影響試算を実施するかどうかは明確にしていなかった。野党は「試算は国会審議の前提だ」(立憲民主党農林幹部)として早期提示を要求する構えだ。 江藤農相は個人的見解とした上で、「やはり、このようなもの(貿易協定)が行われた場合には、影響試算はされるだろう」との見方を示した。 一方で「政府全体として(試算実施を)決定したわけではない」とも述べた。試算の作業は全く進んでいないとしつつ、国会審議では「質問には誠実に丁寧に答えたい」との考えを示した。 政府は、TPP交渉の合意後の2015年12月に経済効果分析を公表。TPP発効で国内総生産(GDP)は約14兆円拡大し、雇用は約80万人増加。農林水産物の生産額は価格低下で1300億~2100億円減少するとした。 TPPの経済効果は関税削減だけでなく、ルール分野の合意内容を踏まえて投資拡大などの効果を加味する一方、国内農業は国内対策を前提に生産量と農家所得、食料自給率は変化しないとした。野党からは「効果は過大に、農業の影響は過小に見せている」と疑問の声が出ていた。 政府は、日米協定の内容について「TPPの枠内」としており、同様の手法で試算すると効果も影響もTPPに比べて小さくなるとみられる。 与党内には野党に政府攻撃の材料を与えかねないとして試算公表に慎重論もある。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月05日
農政評価せず7割 基盤強化要望目立つ 本紙モニター調査 日本農業新聞は3日、本紙の農政モニターを対象にした意識調査の結果をまとめた。改造直後の安倍内閣の支持率は43・4%。前回7月の調査に続き、40%台を維持した。安倍内閣の農業政策について「評価しない」は66・5%で前回から1ポイント上昇。農政では食料自給率の向上や生産基盤強化を求める要望が目立った。 安倍内閣支持の理由で最も多かったのは「他にふさわしい人がいないから」の35・6%と消極的な理由からの支持が多かった。一方「支持しない」は55・8%。理由のうち、「食料・農業重視の姿勢がみられない」が上位に挙がり、農政への不満がにじむ。 安倍内閣の農業政策の評価のうち、最も厳しい「全く評価しない」は27・2%で前回調査から1・1ポイント上がった。「どちらかといえば評価しない」の39・3%を合わせると66・5%に達した。 日米貿易協定交渉の調査は、9月26日の最終合意前後の回答となった。合意内容の評価は、「米国に有利な結果」が66・3%。米は関税撤廃や削減の対象から除外しつつ、牛肉などで環太平洋連携協定(TPP)並みに譲歩し、日本にとって攻めの分野である自動車などで関税撤廃の時期を決められなかったことの不満が大きいとみられる。 TPP参加国からの低関税輸入が始まる中、加えて日米協定の発効による国内農業の影響は「かなり強まる」が51・2%。「やや強まる」の27・7%との合計は78・9%。通商政策の不安は大きく、国内対策の充実が欠かせない。 2020年3月に見直し期限を迎える食料・農業・農村基本計画を巡る議論で重視すべきテーマは「食料自給率の向上」が55・6%と最も多かった。18年度のカロリーベース自給率が過去最低の37%となる中、食料の安定供給への危機感が広がっているとみられる。 次いで「農業所得の増大」が49・5%、「担い手の確保・育成」が41・9%と続いた。生産基盤の弱体化が進む中、農業・農村再建のための政策を望む声が多い。 調査は、農業者を中心とした本紙モニター1024人を対象に9月中・下旬に郵送で実施。647人から回答を得た。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月04日
[ゆらぐ基 危機のシグナル](3) 集落営農組織の解散 残された負債と不安 「これ以上は続けられない」。広島県福山市の農事組合法人ファーム高浦沖で元代表の開原孝一さん(78)は、法人解散を決めた2018年2月の定期総会のつらい思い出を忘れない。 同法人は地域の田を引き受ける他、ため池整備に向け生産者7人を中心に08年に同市で四つ目の集落営農法人として設立。収益性の高いクワイやイチジクなどを導入する複合経営をしてきたが、高齢化と世代交代が進まず今年4月、10年の活動に幕を閉じた。解散時は組合員45人で8・3ヘクタールを管理していた。 地域では専業農家が少なく、開原さんは定年後に就農した。同じように定年退職者に声を掛け続けたが、法人で農業を志す者はいなかった。「定年後に再雇用で会社に残ることが一般的になったことも一因」とみる。 設立時から労力不足で15年ごろから解散を考え、同市やJA福山市に相談。設立10年未満の解散は市の助成金の返還義務があり、19年4月に解散した。資金繰りにも苦労し約300万円の負債があり、開原さんが肩代わりし共有財産のトラクター1台を譲り受けた。 放棄地増加も 法人解散後は農地を組合員に返した。組合員の多くは法人設立時にトラクターやコンバインを手放している。組合員は農地の維持、管理に向け、近隣農家に農機を借りて営農再開したり、作業委託先を新たに探したりするなどの対応に追われた。4戸の高齢農家は作付けを諦め、1・5ヘクタールが耕作放棄地になった。開原さんは「法人が何でも引き受けてしまったのが良くなかったかもしれない」と話す。 事態を重く見たJAは農機など共有財産の処理や負債整理でアドバイス。人手不足解消に向け、JAは19年6月に職業紹介制度を始めた。「人手を必要とする法人への人材をあっせんしたい」と支援に乗り出している。 若手おらず… 東北地方では、法人化まで至らず解散する集落営農組織が増えている。今年1月、秋田県大仙市中仙地区の八日市営農組合が解散した。解散時9戸25ヘクタールを運営、機械の共同利用などをしていた。06年に結成、水稲だけを栽培し、米価が不安定で高収益が見込めず、先行きの不透明さが理由だ。同組合は肥料を共同購入していたが、解散で今年は共同購入できず肥料コストは上がったという。 将来への課題が残る。元組合員は大半が兼業農家で年齢も1人を除けば全員50代以上。誰かが離農しても組合があれば農地を引き継げるが、解散でそれも難しくなった。 農水省によると、18年に秋田県は全国で2番目に多い29の集落営農組織が解散。大仙市では17、18年度で計六つの集落営農組織が解散した。少子高齢化や米価下落、米政策転換、事務員の確保困難など多くの要素が集落営農組織の発展を阻む。 組合長だった藤澤秀文さん(65)は「昨年も隣の集落営農組織が解散した」と説明、「自分たちの組織が解散したのは米価の不安定さの他、若い担い手が経営の中心にいなかったため」と話す。集落営農組織の解散は農村の衰退につながるだけに、人材育成を含めた組織が持続的に活動できる支援策が求められている。 農地受け皿 持続性が課題 農水省によると、2019年2月現在の集落営農数は1万4949で前年より1%減少した。集落営農組織は、担い手であると同時に離農する小規模経営体の農地の受け皿や地域活性化の旗振り役だ。一方で地域の農地を一手に引き受ける事例が多く、組織が倒れたら農地が丸ごと路頭に迷うことにつながりかねず、組織の持続性が課題だ。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月04日
防護柵義務化へ 飼養衛生管理基準 豚コレラ対策で 防護柵や防鳥ネットの設置義務化、食品残さ飼料の処理基準の強化などを盛り込んだ、養豚に関する飼養衛生管理基準の改正方針案が3日、明らかになった。農水省が食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会で示した。豚コレラの継続的な発生や、アフリカ豚コレラの侵入リスクの高まりを受けたもの。基準改正で養豚農家は、新たな費用負担が発生する懸念があるため、対策支援をする必要がありそうだ。 改正は、江藤拓農相の諮問を受けて始めた。改正案は、豚コレラ発生農場に対する疫学調査チームの指摘などを反映した。豚コレラ拡大の要因とされる野生イノシシや、ネズミなどの小動物を防ぐため、防護柵やネットなどの設置義務化を検討する。 食品残さ飼料の処理基準の強化は、肉を扱う事業所から排出される食品残さの飼料利用によるウイルスからの感染を防ぐための措置。処理時間を従来基準より高温にするなど国際基準に合わせる。また、加熱処理後の飼料について加熱処理前の原料との間での交差汚染防止措置を行う。 農場や畜舎に出入りする人・物品・車両などによる病原体の侵入防止措置も加える。着替えの前後での交差汚染の防止などを想定する。 疾病が発生した地域で畜舎外で豚を動かす際の消毒・運搬車の利用、飼料会社・運送業者などへの飼養衛生管理の周知徹底を盛り込む。今後は牛豚等疾病小委員会で議論し、意見公募などを経て農相へ答申、改定する。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月04日
自給率低迷に危機感 政党支持は自民1強 本紙モニター調査 日本農業新聞の農政モニター調査では、食料自給率向上のための政府の取り組みに対し、80・1%が「評価しない」と厳しい見方を示した。新たな自給率目標を定める食料・農業・農村基本計画では、引き上げの具体策が問われそうだ。政党の評価は、依然として自民一強の構図が続くが、無党派層も一定の割合を占める。次期衆院選の勢力図がどうなるかは不透明な部分も大きい。 政府取り組み評価せず8割 2018年度のカロリーベース自給率は、過去最低の37%となった。08年の41%を最後に下落が続き、一度も上向いていない。政府は25年に45%にまで引き上げる目標を掲げるが、目標と実態との差は縮まっていない。 これまでの自給率向上への政府の取り組みに対し、「全く評価しない」が49・8%、「どちらかといえば評価しない」が30・3%を占めた。「評価する」は13・9%にとどまった。 20年3月に見直し期限を迎える基本計画では、新たな自給率目標を定める。自給率の下落傾向を食い止め、上昇に転換させるには、カロリーベース45%という目標と達成の施策を定めた現行計画の検証が欠かせない。 基本方針議論半年は不十分 新たな基本計画の策定を巡り、農水省は9月に食料・農業・農村政策審議会に諮問し、議論を本格化させた。だが、見直し期限の20年3月まで半年程度しかない状況への不満は大きい。 過去の見直しでは、1年以上議論した上で新たな基本計画を策定した。それだけに「半年間では十分な議論ができない」とする回答は63・2%に上った。 一方、農水省は諮問前の約4カ月間、品目や地形条件などが異なる複数農家らの意見聴取を計8回実施。担い手や労働力の不足に直面している現場の実態を把握した。 審議の進め方の是非については、20・9%が「分からない」と回答。評価を保留する声も一定の割合を占めた。 野党支持停滞無党派層鍵に 政党の評価は「支持政党」「農政で期待」がともに自民党がトップとなった。ただ自民党支持層のうち、衆院選が年内にあった場合の投票先に、同党候補者を選ぶとした回答は84・7%にとどまった。安倍内閣の農政を「評価しない」が46・1%を占めるなど、磐石の支持基盤を築いているとは言い難い状況だ。 野党のうち立憲民主、国民民主、共産、社民4党は7月の参院選で、改選議席数1の「1人区」の全国32選挙区で統一候補を擁立し、10議席を獲得した。だが、その後の支持は広がっていない。 衆院選が年内にあった場合の投票先のうち、野党で唯一、10%台を超えたのは立憲民主党の14・2%。国民民主党は3・1%にとどまる。両党と社民党は共同会派を結成したが、今回の調査の支持数を合わせても、自民とは20ポイント以上の差がある。ただ、投票先を「決めていない」は28・1%に上る。「支持政党なし」の回答者の81・1%は、安倍内閣の農政を「評価しない」としており、次期衆院選の動向は無党派層が鍵を握るとみられる。 日本農業新聞の購読はこちら>> 2019年10月04日