https://ryukyushimpo.jp/news/entry-794147.html
「琉球新報」 2018年8月31日 09:56
■沖縄への基地集中は「人種差別」 国連が日本政府に勧告
国連人種差別撤廃委員会は30日、対日審査の総括所見を発表した。日本政府に対し、沖縄の人々は「先住民族」だとして、その権利を保護するよう勧告した。米軍基地に起因する米軍機事故や女性に対する暴力について「沖縄の人々が直面している課題」と懸念を示した。その上で「女性を含む沖縄の人々の安全を守る対策を取る」「加害者が適切に告発、訴追されることを保証する」ことなどを求めた。同委員会が勧告で、差別の根拠として米軍基地問題を挙げたのは2010年以来。
同委員会は10年、沖縄への米軍基地の集中について「現代的な形の人種差別」と認定し、差別を監視するために沖縄の人々の代表者と幅広く協議するよう勧告した。14年の前回勧告は基地問題に言及しなかったが、今回は再び言及した。
今回の総括所見は、日本政府が沖縄の人々を先住民族と認めていないことに懸念を示した。「琉球(の人々)を先住民族として認め、その権利を守るための措置を強化する立場を再確認すること」を勧告した。
総括所見は16、17の両日にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた対日審査の結果を踏まえ、まとめられた。
http://hrn.or.jp/activity/8655/
「Human rights now(ヒューマンライツ・ナウ)」 2016/09/21
■「沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害」
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、2016年9月13日から30日まで開催されている第33会期人権理事会に、声明「沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害」を提出しました。
日本語訳も作成しましたので、全文をご報告いたします。
声明全文 第33会期人権理事会 ヒューマンライツ・ナウ書面ステートメント [PDF]
※英語原文はこちらhrn-written-statement-on-okinawa-for-33rd-hrc [PDF]
沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害[1]
★1 米軍基地の新施設建設に反対する平和的抗議集会への抑圧
日本の南端に位置する沖縄県には34の米軍施設があり、総面積の約10%が米軍基地であるが、現在、新たな施設建設が進められ、これに反対する住民の抗議活動に対する深刻な暴力が続いている。
東村高江では、駐日米軍北部訓練場の新施設(ヘリパッド)の建設が日米両政府により予定されている。また、同県の辺野古でも、海を埋め立てて滑走路・軍港等の新施設建設が日米両政府により予定されている。これらの新施設建設の動きに対して、建設予定地付近では、地元住民等による座り込みなど平和的な抗議活動が続けられてきた。
日本政府は、これら抗議活動に対して機動隊を派遣し、過剰な警備を行うとともに、抗議に参加する一般市民を暴力的に排除している。昨年9月、海上保安庁の職員が辺野古での抗議運動参加の喉を掴み、大声で怒鳴りつけ、この暴行により参加者の男性は加療2週間の傷害を負った[2]。同年11月には、三日連続で、市民が海上保安庁の職員による過剰な暴力により身体的被害を受けている。[3]また今年1月20日、海上保安庁の職員が、同じく辺野古の海上での抗議活動に参加していた映画監督の景山あさ子に、船上で馬乗りになり、脚で体を押さえつけ、明らかに彼女のカメラを奪い取ろうとした。[4]
さらに今年7月19日以降、日本政府は全国から100名を超える機動隊を全国から動員して高江に配置し、[5]村民160名余の村を現在500ないし700名の機動隊が高江を包囲し、建設現場ゲート前に座り込む市民の身体を掴んで拘束し、実力で排除する暴行を繰り返している。その過程で複数の市民が機動隊に首を絞められ、72歳の女性が頭を打ち打撲で病院に搬送させられるに至っている。[6]さらに、機動隊の有形力の行使にわずかに抵抗しただけで不当に逮捕・拘禁される者も相次いでいる。[7]
さらに8月20日、機動隊は、東村高江での抗議活動を取材していた地元新聞社の記者の両腕を二度掴んで、背中を押して40メートル移動させ、停車させていた機動車両の間に押し込み15分ほどその身体を拘束した[8]。
こうした過剰な有形力の行使は今も日常的に続いており、無抵抗の市民の生命・身体に著しい危険をもたらし、市民の抵抗の権利を侵害している。
★2 米軍基地問題と先住民族の権利侵害
米軍基地の新施設建設等に反対する平和的抗議集会に対する抑圧は(単に集会の自由に対する侵害に留まるものではなく)、琉球/沖縄の先住民族の権利に対する侵害という側面も有している。
(1)沖縄県への米軍基地の偏在
米軍のみが使用する専用施設について、沖縄県には全国の74%が集中し ている[9]。2011年6月末の統計では、陸軍、海軍、空軍、海兵隊を合わせた在日米軍兵力の総数は3万6712人で、うち在沖米軍の兵力は70・4%に相当する2万5843人である。海兵隊は日本に駐留する1万7585人のうち沖縄県駐留は1万5365人を占め、割合は87・4%に達する[10]。なお、米軍は11年6月末を最後に在沖米軍の人数を公表しておらず、その後の統計は不明である[11]。
(2)米軍基地建設の歴史的経緯
辺野古や東村高江など現在、米軍基地として使用されている土地については、1956年に強制接収か任意での土地の提供か、二者択一の選択を迫られた地元住民の苦渋の選択の結果として提供されたに過ぎず、自由な意思に基づく土地提供がなされたわけではない。
1972年に沖縄県の施政権の米国から日本への返還にあたって、米国政府と日本政府は、再び地元住民の権利を排除して沖縄県の施政権返還の条件に関する協定を締結し、沖縄県の基地の大半を無期限かつ自由使用とする特権が米軍に与えられた。
このように沖縄県の米軍基地は、太平洋戦争中及び戦後、琉球/沖縄の人々の土地に対する権利を排除して建設されたのであり、沖縄県の米軍基地の存在により、琉球/沖縄の人々の伝統的な土地及び天然資源に関する権利が侵害されてきたのである。
(3)米軍基地移設問題における権利侵害
辺野古では2014年7月1日に普天間飛行場からの移設に向けた建物解 体作業が始まり、その直後から移設に反対する人たちがゲート前での座り込みを始めた[12]。先祖伝来の領域である辺野古崎・大浦湾に対して、琉球/沖縄の人々との協議の場もなく同意もないままに、日本政府は新たな立ち入り禁止区域とし、沖縄県における抗議集会への参加者を暴力によって強制的に排除するようになった[13]。琉球/沖縄の人々は、先祖伝来の領域に立ち入ることも禁止され、許可なく立ち入った場合には逮捕されると脅迫され、実際に何人もの逮捕者が出ている。北部に位置する東村高江は、森に囲まれた自然環境豊かな環境で、希少な野生生物が生息しているが、集落を取り囲むように6か所の巨大なヘリパット基地建設が計画され、既に2か所は建設され、これ以上の基地建設が進めば騒音公害と環境破壊で、人々は、先祖伝来の土地と住まいを奪われることになる。
★3 集会の自由の侵害および先住民の権利侵害
(1)集会の自由
今年3月の国連人権理事会で報告された集会結社の自由等に関する特別報告者が作成した報告書 (A/HRC/31/66[14])によれば、「集会は合法なものと推定されるべきであり、自由権規約21条で定められた制限のみに服する。」(パラ18)、「国が集会を制限するために国の安全及び公の秩序を援用する場合には、国は、当該脅威の正確な性質及び起こっている具体的な危険を示さなければならない。治安状況に一般的に言及するだけでは十分ではない。」(パラ31)、「法執行官による力の行使は例外的であるべきであり、集会は通常、力を行使せずに対処されるべきである。いかなる力の公使も、必要性及び均衡性の原則に従わなければならない。」(パラ57)、「いかなる力の行使も、暴力を用いている個人を対象として、又は差し迫った脅威を避けるために行われるべきである。」(パラ57)とされている。
自由権規約21条を中心とする国際基準に基づいたこれらの原則は、国連人権理事会決議においても、各国が十分に考慮するよう強く求められている(A/HRC/31/L.21[15])。
上記にみられるような海上保安庁や機動隊による集会参加者やジャーナリストへの有形力行使は、「必要最小限度」とは認められず、平和的集会の自由及び取材・報道の自由に対する重大かつ違法な侵害として許されない。
(2)琉球/沖縄の人々の先住民族としての権利
琉球/沖縄の人々が先住民族に該当することは、自由権規約委員会第6回日本政府報告書審査総括所見(CCPR/C/JPN/6)[16]及び人種差別撤廃委員会第3-6回日本政府報告書審査の総括所見(CERD/C/JPN/CO/3-6)[17]等において国連により認められている。
したがって、日本国政府は、「国連先住民族権利宣言」に基づき、琉球/沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」(同宣言26条)及び、その「影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利」(同宣言19条)を保障する措置をとるべきである。さらに日本国政府は、軍事活動で土地又は領域を使用する前に、当該先住民族の人々と実質的な協議をしなければならない(同宣言30条)。
勧告
よって、国際人権NGOであるヒューマンライツ・ナウ、IMADR(反差別国際運動),並びに沖縄国際人権法研究会は、日本政府に対して、以下の行動を行うよう勧告する。
・自由権規約21条を中心とする国際人権基準に基づき、辺野古及び高村における米軍基地移設・建設に反対する平和的抗議活動に参加する一般市民及びその取材を行うジャーナリストに対する過剰な警備及び暴力的な排除行為を直ちにやめること。
•自由権規約21条を中心とする国際人権基準に基づき、一般市民が米軍基地問題に反対する平和的抗議集会へ参加する権利を保障する具体的措置をとること。
•自由権規約19条を中心とする国際人権基準に基づき、米軍基地問題に反対する平和的抗議集会を取材・報道する権利をジャーナリストに保障する具体的措置をとること。
•琉球/沖縄の人々が先住民族であることを認めた上で、国連先住民族権利宣言26条及び18条に基づき、琉球/沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」及び「影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利」を保障すること
•国連先住民族権利宣言19条に基づき、琉球/沖縄の人々に自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意(Free Prior and Informed Consent)原則を遵守する効果的な政策決定への参加機会を保障して沖縄県への米軍基地の偏在を解消すること。
[1] Joint statement of Human Rights Now (HRN), International Movement Against All Forms of Discrimination and Racism (IMADR), and All Okinawa Council for Human Rights.
[2] http://www.japantimes.co.jp/community/2015/02/09/issues/injuries-okinawa-anti-base-protesters-laughable-says-u-s-military-spokesman/#.V7_6tq3HTXs
[3] http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-176412.html
[4] http://www.japantimes.co.jp/community/2015/02/09/issues/injuries-okinawa-anti-base-protesters-laughable-says-u-s-military-spokesman/#.V7_6tq3HTXs
[5] http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/54490
[6] http://ryukyushimpo.jp/news/entry-343437.html
[7] http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/58894
[8] http://this.kiji.is/140199620190143997
[9] http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245387.html
[10] http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245387.html
[11] http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245387.html
[12] http://mainichi.jp/articles/20160706/k00/00e/040/236000c
[14] http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session31/Documents/A.HRC.31.66_E.docx
[15] http://ap.ohchr.org/documents/dpage_e.aspx?si=A/HRC/31/L.21
[16] http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CCPR%2fC%2fJPN%2fCO%2f6&Lang=en
[17] http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CERD%2fC%2fJPN%2fCO%2f3-6&Lang=en
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-269541.html
「琉球新報」 2016年4月29日 13:07
■「国連勧告は危険」「撤回要求は県民侮辱」 「先住民族」で国会議員に賛否
【東京】木原誠二外務副大臣が、沖縄の人々を「先住民族」とする国連勧告に撤回を働き掛ける考えを示した件は、県関係国会議員の間で波紋を広げている。自民党国会議員からは「勧告は沖縄にとって危険な内容を含む」などと撤回に賛同があったが、慎重な意見もあった。一方、野党国会議員は「県民への侮辱だ」などと反発が大勢を占めた。
西銘恒三郎衆院議員(自民)は「国会議員の質問にコメントする立場にない。41市町村の市民、町民、村民は沖縄県民である。沖縄県民は日本国民である」と主張した。
国場幸之助衆院議員(自民)は「沖縄は言語学的にも民俗学的にも日本の源流を残す地域という特色もある。基地負担の在り方を含め、公平な国づくりの実現が不可欠だ」と指摘した。
宮崎政久衆院議員(自民)は「国連勧告は県民の知らない中で県民を先住民族とし、沖縄にとって危険な内容を含むことを広く県民に知ってもらいたい」と勧告撤回に賛同した。
比嘉奈津美衆院議員(自民)は「慎重かつ冷静に人権問題は議論しなければならないが、現状で県民は誇りある日本人として、政府から働き掛けていただきたい」と注文を付けた。
赤嶺政賢衆院議員(共産)は「勧告は国内の人権や自由を尊重するよう求めたもの。民意を一顧だにせず、新基地建設を押し付ける日本政府の姿勢こそ撤回されるべきだ」と訴えた。
下地幹郎衆院議員(おおさか維新)は「かつて『琉球』時代が長く『日本』でなかった時代があったのも間違いない。史実に基づいた学術的判断は政治家の領分ではない」とした。
照屋寛徳衆院議員(社民)は「国際機関の共通認識を否認し、撤回、修正を働き掛けるとの答弁は非常識。琉球王国の否定と併せ、構造的差別に抗(あらが)う県民への侮辱だ」と批判した。
玉城デニー衆院議員(生活)は「独特の文化、歴史、伝統、言語は今も県民の大切な帰属意識の源。それらを法的に保護し、差別を否定する勧告は政府も尊重すべきだ」と求めた。
仲里利信衆院議員(無所属)は「勧告は、基地の不均衡な集中や沖縄の歴史の否定が沖縄差別や人権侵害を招いていることを明らかにし、沖縄との対話を促しており評価する」とした。
島尻安伊子参院議員(自民)は「国連勧告への対応は外務省など関係省庁で適切に対応してもらえるだろう。沖縄振興を担当する大臣としてのコメントは控えたい」と言及を避けた。
儀間光男参院議員(おおさか維新)は「独自の伝統文化はあるが、それで先住民族と位置付けるのは拙速過ぎる。県民自体がその意識を持っているのか甚だ疑問がある」と指摘した。
糸数慶子参院議員(無所属)は「琉球併合は国際法違反で、本土防衛目的の沖縄戦、過重な基地負担など政府の沖縄差別は明確。政府は速やかに勧告を受け入れ是正すべきだ」とした。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-268867.html
「琉球新報」 2016年4月28日 11:52
■「先住民族」撤回要求 琉球王国の認識に違い
国連が沖縄の人々を日本の「先住民族」と認識していることに対し、外務省が否定しているのは、歴史認識の違いによるものが大きい。それは1879年の琉球併合(「琉球処分」)まで琉球王国が独立王国として存在していたかどうかへの評価に深く関わっている。
国連が規定する「先住民族」は、他者によって土地を奪われた、もともとその土地に住んでいた人々を指す。血統や言語といった人種や民族的同一性や違いも指標にはなるが、最も重要なポイントは、そこの土地はそもそも誰のものだったかという「土地の権利」だ。
国連が沖縄の人々を「先住民族」と認めたのは(1)琉球王国が1850年代に米国、フランス、オランダと修好条約を結び、国際法上の主体=主権国家として存在していた(2)79年に日本によって併合され沖縄県が設置された(3)その後日本に支配され差別の対象とされた―主にこの3点を事実として認定したからだ。
一方、日本政府側は琉球王国が国際法上の主体としての独立国家だったかどうかについて「『琉球王国』をめぐる当時の状況が必ずしも明らかでなく、確定的なことを述べるのは困難」という判断を避ける答弁を繰り返してきた。つまり公式には琉球王国の存在を確定的なものとして認めていない。
ただ、今回の国会答弁のように日本の先住民族は「アイヌの人々以外にいない」ということであれば、少なくとも1879年以前、琉球人は存在せず、琉球王国の国民は日本人だったことになる。琉球王国の存在を認めた場合、先住民族論に最も重要な根拠を与えることもあり、判断を避けているとみられる。
2007年に国連で採択された先住民族権利宣言は、先住民族の合意がない限り先住民族の土地を軍事に利用することを禁じている。日本政府が沖縄の人々を先住民族として認めると、日本政府は米軍基地問題などこれまでの沖縄政策で多くの「不正」を是正せざるを得なくなることも、認めたくない理由の一つだろう。(新垣毅)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-268866.html
「琉球新報」 2016年4月28日 11:45
■「先住民族」撤回要求 「人権侵害に目向けて」 沖縄県内、副大臣発言に疑問
国連が「沖縄への米軍基地の集中は現代的な人種差別」という見解を示し、県民の権利を保護するよう勧告した中で示された「先住民族」という言葉を巡り、政府と国連の認識の違いが、木原誠二外務副大臣の答弁で浮き彫りになった。木原外務副大臣が国連勧告の撤回、修正を求める方針を示したことに対し、県内の関係者からは「言葉に固執せず日米の沖縄に対する人権侵害に目を向けるべきだ」などと指摘する声が上がった。一方、昨年12月に勧告の撤回を求める意見書を可決した豊見城市議会からは「政府の後押しは心強い」との声があった。
シールズ琉球の元山仁士郎さん(24)=国際基督教大4年=は「先住民族という言葉に固執せず、沖縄で日本政府や米国によって人権侵害が行われている点に目を向けるべきだ。国際法上も独立国だった沖縄を、日本が強制的に併合した歴史を踏まえて議論する必要がある」と指摘した。
沖縄国際大学の大城尚子(しょうこ)非常勤講師=国際関係論=は「沖縄の自己決定権がないがしろにされており、民意が反映されていない状況がある。木原氏は国内法で解決できないから国連が介入しているという事実を把握しているのか」と疑問視した。
親川志奈子さん(35)=琉球大大学院博士後期課程=は「沖縄から国連人権委員会の先住民族作業部会に参加し、国連特別報告者による調査も踏まえて出された勧告だ。政府はその議論を無視している」と批判した。
豊見城市議会が可決した意見書の提案者の新垣亜矢子市議は「意見書を政府として後押しする答弁があったことは心強く思う。先住民族であるかの全県的議論はこれまでになされたことはなく、多くの県民も自分たちが先住民族だという認識は持っていないと考える」と述べた。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-268568.html
「琉球新報」 2016年4月28日 05:05
■「沖縄の人々は先住民族」の撤回要求 国連勧告で外務副大臣 琉球巡る歴史認識に隔たり
【東京】沖縄の人々を「先住民族」とし、日本政府に琉球・沖縄の言語や文化、歴史の保護などを求めた国連勧告について、木原誠二外務副大臣は27日の衆院内閣委員会で「事実上の撤回、修正を働き掛けたい」と述べた。国連は、琉球王国があった事実を基に勧告しているが、日本政府はこれまでその判断を回避してきた。琉球・沖縄を巡る政府と国連の歴史認識などに隔たりが大きいことがあらためて浮き彫りとなった。宮崎政久氏(自民)の質問に答えた。
国連は2008年に沖縄の人々を「先住民族」と公式に認め、過去4回勧告を出した。14年8月には国連人種差別撤廃委員会が沖縄の人々の権利を保護するよう勧告する「最終見解」を発表し、法制を改正しての土地や天然資源に対する権利の保障措置を求めている。
10年には「沖縄における軍事基地の不均衡な集中は住民に否定的な影響がある」とし、「現代的形式の差別」と断じた。
対して日本政府は、日本にアイヌ民族以外に少数民族は存在せず、沖縄の人々は日本民族で、人種差別撤廃条約の適用対象にならないと主張している。
同日の委員会で宮崎氏は国連勧告を「県民もほとんど知らない状況で勝手に先住民族として扱われている」と強調し、政府に「責任を持って抗議をしてほしい。民族分断工作と言ってもいいようなことを放置しないでほしい」と述べ、国連への働き掛けを求めた。
これに対して、木原氏は豊見城市議会が国連勧告撤回を求める意見書を賛成多数で採択したことに触れ「これまでも政府の立場と異なる意見、わが国の実情を正確に反映していない勧告、意見については事実上の撤回、修正をするように働き掛けており、これからもしっかり行っていきたい」などと述べた。
★議論のすり替え
島袋純琉球大教授の話 国連宣言での「先住民族」は、抑圧されている人たちの人権を保障するという概念で、国連人種差別撤廃委員会の勧告は構造的差別を受けている沖縄県民の人権を保障するというものだ。本土と同じ血筋や言語だから先住民族ではないとし、撤回を求めるとする国会のやりとりは的外れで、議論のすり替えだ。沖縄には民族分断をする危険な人たちがいるとのレッテル貼りの意図があるのではないか。仮に国連に抗議をしても沖縄の権利を奪う意図があるのかと思われるだけだ。
「琉球新報」 2018年8月31日 09:56
■沖縄への基地集中は「人種差別」 国連が日本政府に勧告
国連人種差別撤廃委員会は30日、対日審査の総括所見を発表した。日本政府に対し、沖縄の人々は「先住民族」だとして、その権利を保護するよう勧告した。米軍基地に起因する米軍機事故や女性に対する暴力について「沖縄の人々が直面している課題」と懸念を示した。その上で「女性を含む沖縄の人々の安全を守る対策を取る」「加害者が適切に告発、訴追されることを保証する」ことなどを求めた。同委員会が勧告で、差別の根拠として米軍基地問題を挙げたのは2010年以来。
同委員会は10年、沖縄への米軍基地の集中について「現代的な形の人種差別」と認定し、差別を監視するために沖縄の人々の代表者と幅広く協議するよう勧告した。14年の前回勧告は基地問題に言及しなかったが、今回は再び言及した。
今回の総括所見は、日本政府が沖縄の人々を先住民族と認めていないことに懸念を示した。「琉球(の人々)を先住民族として認め、その権利を守るための措置を強化する立場を再確認すること」を勧告した。
総括所見は16、17の両日にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた対日審査の結果を踏まえ、まとめられた。
http://hrn.or.jp/activity/8655/
「Human rights now(ヒューマンライツ・ナウ)」 2016/09/21
■「沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害」
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、2016年9月13日から30日まで開催されている第33会期人権理事会に、声明「沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害」を提出しました。
日本語訳も作成しましたので、全文をご報告いたします。
声明全文 第33会期人権理事会 ヒューマンライツ・ナウ書面ステートメント [PDF]
※英語原文はこちらhrn-written-statement-on-okinawa-for-33rd-hrc [PDF]
沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害[1]
★1 米軍基地の新施設建設に反対する平和的抗議集会への抑圧
日本の南端に位置する沖縄県には34の米軍施設があり、総面積の約10%が米軍基地であるが、現在、新たな施設建設が進められ、これに反対する住民の抗議活動に対する深刻な暴力が続いている。
東村高江では、駐日米軍北部訓練場の新施設(ヘリパッド)の建設が日米両政府により予定されている。また、同県の辺野古でも、海を埋め立てて滑走路・軍港等の新施設建設が日米両政府により予定されている。これらの新施設建設の動きに対して、建設予定地付近では、地元住民等による座り込みなど平和的な抗議活動が続けられてきた。
日本政府は、これら抗議活動に対して機動隊を派遣し、過剰な警備を行うとともに、抗議に参加する一般市民を暴力的に排除している。昨年9月、海上保安庁の職員が辺野古での抗議運動参加の喉を掴み、大声で怒鳴りつけ、この暴行により参加者の男性は加療2週間の傷害を負った[2]。同年11月には、三日連続で、市民が海上保安庁の職員による過剰な暴力により身体的被害を受けている。[3]また今年1月20日、海上保安庁の職員が、同じく辺野古の海上での抗議活動に参加していた映画監督の景山あさ子に、船上で馬乗りになり、脚で体を押さえつけ、明らかに彼女のカメラを奪い取ろうとした。[4]
さらに今年7月19日以降、日本政府は全国から100名を超える機動隊を全国から動員して高江に配置し、[5]村民160名余の村を現在500ないし700名の機動隊が高江を包囲し、建設現場ゲート前に座り込む市民の身体を掴んで拘束し、実力で排除する暴行を繰り返している。その過程で複数の市民が機動隊に首を絞められ、72歳の女性が頭を打ち打撲で病院に搬送させられるに至っている。[6]さらに、機動隊の有形力の行使にわずかに抵抗しただけで不当に逮捕・拘禁される者も相次いでいる。[7]
さらに8月20日、機動隊は、東村高江での抗議活動を取材していた地元新聞社の記者の両腕を二度掴んで、背中を押して40メートル移動させ、停車させていた機動車両の間に押し込み15分ほどその身体を拘束した[8]。
こうした過剰な有形力の行使は今も日常的に続いており、無抵抗の市民の生命・身体に著しい危険をもたらし、市民の抵抗の権利を侵害している。
★2 米軍基地問題と先住民族の権利侵害
米軍基地の新施設建設等に反対する平和的抗議集会に対する抑圧は(単に集会の自由に対する侵害に留まるものではなく)、琉球/沖縄の先住民族の権利に対する侵害という側面も有している。
(1)沖縄県への米軍基地の偏在
米軍のみが使用する専用施設について、沖縄県には全国の74%が集中し ている[9]。2011年6月末の統計では、陸軍、海軍、空軍、海兵隊を合わせた在日米軍兵力の総数は3万6712人で、うち在沖米軍の兵力は70・4%に相当する2万5843人である。海兵隊は日本に駐留する1万7585人のうち沖縄県駐留は1万5365人を占め、割合は87・4%に達する[10]。なお、米軍は11年6月末を最後に在沖米軍の人数を公表しておらず、その後の統計は不明である[11]。
(2)米軍基地建設の歴史的経緯
辺野古や東村高江など現在、米軍基地として使用されている土地については、1956年に強制接収か任意での土地の提供か、二者択一の選択を迫られた地元住民の苦渋の選択の結果として提供されたに過ぎず、自由な意思に基づく土地提供がなされたわけではない。
1972年に沖縄県の施政権の米国から日本への返還にあたって、米国政府と日本政府は、再び地元住民の権利を排除して沖縄県の施政権返還の条件に関する協定を締結し、沖縄県の基地の大半を無期限かつ自由使用とする特権が米軍に与えられた。
このように沖縄県の米軍基地は、太平洋戦争中及び戦後、琉球/沖縄の人々の土地に対する権利を排除して建設されたのであり、沖縄県の米軍基地の存在により、琉球/沖縄の人々の伝統的な土地及び天然資源に関する権利が侵害されてきたのである。
(3)米軍基地移設問題における権利侵害
辺野古では2014年7月1日に普天間飛行場からの移設に向けた建物解 体作業が始まり、その直後から移設に反対する人たちがゲート前での座り込みを始めた[12]。先祖伝来の領域である辺野古崎・大浦湾に対して、琉球/沖縄の人々との協議の場もなく同意もないままに、日本政府は新たな立ち入り禁止区域とし、沖縄県における抗議集会への参加者を暴力によって強制的に排除するようになった[13]。琉球/沖縄の人々は、先祖伝来の領域に立ち入ることも禁止され、許可なく立ち入った場合には逮捕されると脅迫され、実際に何人もの逮捕者が出ている。北部に位置する東村高江は、森に囲まれた自然環境豊かな環境で、希少な野生生物が生息しているが、集落を取り囲むように6か所の巨大なヘリパット基地建設が計画され、既に2か所は建設され、これ以上の基地建設が進めば騒音公害と環境破壊で、人々は、先祖伝来の土地と住まいを奪われることになる。
★3 集会の自由の侵害および先住民の権利侵害
(1)集会の自由
今年3月の国連人権理事会で報告された集会結社の自由等に関する特別報告者が作成した報告書 (A/HRC/31/66[14])によれば、「集会は合法なものと推定されるべきであり、自由権規約21条で定められた制限のみに服する。」(パラ18)、「国が集会を制限するために国の安全及び公の秩序を援用する場合には、国は、当該脅威の正確な性質及び起こっている具体的な危険を示さなければならない。治安状況に一般的に言及するだけでは十分ではない。」(パラ31)、「法執行官による力の行使は例外的であるべきであり、集会は通常、力を行使せずに対処されるべきである。いかなる力の公使も、必要性及び均衡性の原則に従わなければならない。」(パラ57)、「いかなる力の行使も、暴力を用いている個人を対象として、又は差し迫った脅威を避けるために行われるべきである。」(パラ57)とされている。
自由権規約21条を中心とする国際基準に基づいたこれらの原則は、国連人権理事会決議においても、各国が十分に考慮するよう強く求められている(A/HRC/31/L.21[15])。
上記にみられるような海上保安庁や機動隊による集会参加者やジャーナリストへの有形力行使は、「必要最小限度」とは認められず、平和的集会の自由及び取材・報道の自由に対する重大かつ違法な侵害として許されない。
(2)琉球/沖縄の人々の先住民族としての権利
琉球/沖縄の人々が先住民族に該当することは、自由権規約委員会第6回日本政府報告書審査総括所見(CCPR/C/JPN/6)[16]及び人種差別撤廃委員会第3-6回日本政府報告書審査の総括所見(CERD/C/JPN/CO/3-6)[17]等において国連により認められている。
したがって、日本国政府は、「国連先住民族権利宣言」に基づき、琉球/沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」(同宣言26条)及び、その「影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利」(同宣言19条)を保障する措置をとるべきである。さらに日本国政府は、軍事活動で土地又は領域を使用する前に、当該先住民族の人々と実質的な協議をしなければならない(同宣言30条)。
勧告
よって、国際人権NGOであるヒューマンライツ・ナウ、IMADR(反差別国際運動),並びに沖縄国際人権法研究会は、日本政府に対して、以下の行動を行うよう勧告する。
・自由権規約21条を中心とする国際人権基準に基づき、辺野古及び高村における米軍基地移設・建設に反対する平和的抗議活動に参加する一般市民及びその取材を行うジャーナリストに対する過剰な警備及び暴力的な排除行為を直ちにやめること。
•自由権規約21条を中心とする国際人権基準に基づき、一般市民が米軍基地問題に反対する平和的抗議集会へ参加する権利を保障する具体的措置をとること。
•自由権規約19条を中心とする国際人権基準に基づき、米軍基地問題に反対する平和的抗議集会を取材・報道する権利をジャーナリストに保障する具体的措置をとること。
•琉球/沖縄の人々が先住民族であることを認めた上で、国連先住民族権利宣言26条及び18条に基づき、琉球/沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」及び「影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利」を保障すること
•国連先住民族権利宣言19条に基づき、琉球/沖縄の人々に自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意(Free Prior and Informed Consent)原則を遵守する効果的な政策決定への参加機会を保障して沖縄県への米軍基地の偏在を解消すること。
[1] Joint statement of Human Rights Now (HRN), International Movement Against All Forms of Discrimination and Racism (IMADR), and All Okinawa Council for Human Rights.
[2] http://www.japantimes.co.jp/community/2015/02/09/issues/injuries-okinawa-anti-base-protesters-laughable-says-u-s-military-spokesman/#.V7_6tq3HTXs
[3] http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-176412.html
[4] http://www.japantimes.co.jp/community/2015/02/09/issues/injuries-okinawa-anti-base-protesters-laughable-says-u-s-military-spokesman/#.V7_6tq3HTXs
[5] http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/54490
[6] http://ryukyushimpo.jp/news/entry-343437.html
[7] http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/58894
[8] http://this.kiji.is/140199620190143997
[9] http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245387.html
[10] http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245387.html
[11] http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245387.html
[12] http://mainichi.jp/articles/20160706/k00/00e/040/236000c
[14] http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session31/Documents/A.HRC.31.66_E.docx
[15] http://ap.ohchr.org/documents/dpage_e.aspx?si=A/HRC/31/L.21
[16] http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CCPR%2fC%2fJPN%2fCO%2f6&Lang=en
[17] http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CERD%2fC%2fJPN%2fCO%2f3-6&Lang=en
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-269541.html
「琉球新報」 2016年4月29日 13:07
■「国連勧告は危険」「撤回要求は県民侮辱」 「先住民族」で国会議員に賛否
【東京】木原誠二外務副大臣が、沖縄の人々を「先住民族」とする国連勧告に撤回を働き掛ける考えを示した件は、県関係国会議員の間で波紋を広げている。自民党国会議員からは「勧告は沖縄にとって危険な内容を含む」などと撤回に賛同があったが、慎重な意見もあった。一方、野党国会議員は「県民への侮辱だ」などと反発が大勢を占めた。
西銘恒三郎衆院議員(自民)は「国会議員の質問にコメントする立場にない。41市町村の市民、町民、村民は沖縄県民である。沖縄県民は日本国民である」と主張した。
国場幸之助衆院議員(自民)は「沖縄は言語学的にも民俗学的にも日本の源流を残す地域という特色もある。基地負担の在り方を含め、公平な国づくりの実現が不可欠だ」と指摘した。
宮崎政久衆院議員(自民)は「国連勧告は県民の知らない中で県民を先住民族とし、沖縄にとって危険な内容を含むことを広く県民に知ってもらいたい」と勧告撤回に賛同した。
比嘉奈津美衆院議員(自民)は「慎重かつ冷静に人権問題は議論しなければならないが、現状で県民は誇りある日本人として、政府から働き掛けていただきたい」と注文を付けた。
赤嶺政賢衆院議員(共産)は「勧告は国内の人権や自由を尊重するよう求めたもの。民意を一顧だにせず、新基地建設を押し付ける日本政府の姿勢こそ撤回されるべきだ」と訴えた。
下地幹郎衆院議員(おおさか維新)は「かつて『琉球』時代が長く『日本』でなかった時代があったのも間違いない。史実に基づいた学術的判断は政治家の領分ではない」とした。
照屋寛徳衆院議員(社民)は「国際機関の共通認識を否認し、撤回、修正を働き掛けるとの答弁は非常識。琉球王国の否定と併せ、構造的差別に抗(あらが)う県民への侮辱だ」と批判した。
玉城デニー衆院議員(生活)は「独特の文化、歴史、伝統、言語は今も県民の大切な帰属意識の源。それらを法的に保護し、差別を否定する勧告は政府も尊重すべきだ」と求めた。
仲里利信衆院議員(無所属)は「勧告は、基地の不均衡な集中や沖縄の歴史の否定が沖縄差別や人権侵害を招いていることを明らかにし、沖縄との対話を促しており評価する」とした。
島尻安伊子参院議員(自民)は「国連勧告への対応は外務省など関係省庁で適切に対応してもらえるだろう。沖縄振興を担当する大臣としてのコメントは控えたい」と言及を避けた。
儀間光男参院議員(おおさか維新)は「独自の伝統文化はあるが、それで先住民族と位置付けるのは拙速過ぎる。県民自体がその意識を持っているのか甚だ疑問がある」と指摘した。
糸数慶子参院議員(無所属)は「琉球併合は国際法違反で、本土防衛目的の沖縄戦、過重な基地負担など政府の沖縄差別は明確。政府は速やかに勧告を受け入れ是正すべきだ」とした。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-268867.html
「琉球新報」 2016年4月28日 11:52
■「先住民族」撤回要求 琉球王国の認識に違い
国連が沖縄の人々を日本の「先住民族」と認識していることに対し、外務省が否定しているのは、歴史認識の違いによるものが大きい。それは1879年の琉球併合(「琉球処分」)まで琉球王国が独立王国として存在していたかどうかへの評価に深く関わっている。
国連が規定する「先住民族」は、他者によって土地を奪われた、もともとその土地に住んでいた人々を指す。血統や言語といった人種や民族的同一性や違いも指標にはなるが、最も重要なポイントは、そこの土地はそもそも誰のものだったかという「土地の権利」だ。
国連が沖縄の人々を「先住民族」と認めたのは(1)琉球王国が1850年代に米国、フランス、オランダと修好条約を結び、国際法上の主体=主権国家として存在していた(2)79年に日本によって併合され沖縄県が設置された(3)その後日本に支配され差別の対象とされた―主にこの3点を事実として認定したからだ。
一方、日本政府側は琉球王国が国際法上の主体としての独立国家だったかどうかについて「『琉球王国』をめぐる当時の状況が必ずしも明らかでなく、確定的なことを述べるのは困難」という判断を避ける答弁を繰り返してきた。つまり公式には琉球王国の存在を確定的なものとして認めていない。
ただ、今回の国会答弁のように日本の先住民族は「アイヌの人々以外にいない」ということであれば、少なくとも1879年以前、琉球人は存在せず、琉球王国の国民は日本人だったことになる。琉球王国の存在を認めた場合、先住民族論に最も重要な根拠を与えることもあり、判断を避けているとみられる。
2007年に国連で採択された先住民族権利宣言は、先住民族の合意がない限り先住民族の土地を軍事に利用することを禁じている。日本政府が沖縄の人々を先住民族として認めると、日本政府は米軍基地問題などこれまでの沖縄政策で多くの「不正」を是正せざるを得なくなることも、認めたくない理由の一つだろう。(新垣毅)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-268866.html
「琉球新報」 2016年4月28日 11:45
■「先住民族」撤回要求 「人権侵害に目向けて」 沖縄県内、副大臣発言に疑問
国連が「沖縄への米軍基地の集中は現代的な人種差別」という見解を示し、県民の権利を保護するよう勧告した中で示された「先住民族」という言葉を巡り、政府と国連の認識の違いが、木原誠二外務副大臣の答弁で浮き彫りになった。木原外務副大臣が国連勧告の撤回、修正を求める方針を示したことに対し、県内の関係者からは「言葉に固執せず日米の沖縄に対する人権侵害に目を向けるべきだ」などと指摘する声が上がった。一方、昨年12月に勧告の撤回を求める意見書を可決した豊見城市議会からは「政府の後押しは心強い」との声があった。
シールズ琉球の元山仁士郎さん(24)=国際基督教大4年=は「先住民族という言葉に固執せず、沖縄で日本政府や米国によって人権侵害が行われている点に目を向けるべきだ。国際法上も独立国だった沖縄を、日本が強制的に併合した歴史を踏まえて議論する必要がある」と指摘した。
沖縄国際大学の大城尚子(しょうこ)非常勤講師=国際関係論=は「沖縄の自己決定権がないがしろにされており、民意が反映されていない状況がある。木原氏は国内法で解決できないから国連が介入しているという事実を把握しているのか」と疑問視した。
親川志奈子さん(35)=琉球大大学院博士後期課程=は「沖縄から国連人権委員会の先住民族作業部会に参加し、国連特別報告者による調査も踏まえて出された勧告だ。政府はその議論を無視している」と批判した。
豊見城市議会が可決した意見書の提案者の新垣亜矢子市議は「意見書を政府として後押しする答弁があったことは心強く思う。先住民族であるかの全県的議論はこれまでになされたことはなく、多くの県民も自分たちが先住民族だという認識は持っていないと考える」と述べた。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-268568.html
「琉球新報」 2016年4月28日 05:05
■「沖縄の人々は先住民族」の撤回要求 国連勧告で外務副大臣 琉球巡る歴史認識に隔たり
【東京】沖縄の人々を「先住民族」とし、日本政府に琉球・沖縄の言語や文化、歴史の保護などを求めた国連勧告について、木原誠二外務副大臣は27日の衆院内閣委員会で「事実上の撤回、修正を働き掛けたい」と述べた。国連は、琉球王国があった事実を基に勧告しているが、日本政府はこれまでその判断を回避してきた。琉球・沖縄を巡る政府と国連の歴史認識などに隔たりが大きいことがあらためて浮き彫りとなった。宮崎政久氏(自民)の質問に答えた。
国連は2008年に沖縄の人々を「先住民族」と公式に認め、過去4回勧告を出した。14年8月には国連人種差別撤廃委員会が沖縄の人々の権利を保護するよう勧告する「最終見解」を発表し、法制を改正しての土地や天然資源に対する権利の保障措置を求めている。
10年には「沖縄における軍事基地の不均衡な集中は住民に否定的な影響がある」とし、「現代的形式の差別」と断じた。
対して日本政府は、日本にアイヌ民族以外に少数民族は存在せず、沖縄の人々は日本民族で、人種差別撤廃条約の適用対象にならないと主張している。
同日の委員会で宮崎氏は国連勧告を「県民もほとんど知らない状況で勝手に先住民族として扱われている」と強調し、政府に「責任を持って抗議をしてほしい。民族分断工作と言ってもいいようなことを放置しないでほしい」と述べ、国連への働き掛けを求めた。
これに対して、木原氏は豊見城市議会が国連勧告撤回を求める意見書を賛成多数で採択したことに触れ「これまでも政府の立場と異なる意見、わが国の実情を正確に反映していない勧告、意見については事実上の撤回、修正をするように働き掛けており、これからもしっかり行っていきたい」などと述べた。
★議論のすり替え
島袋純琉球大教授の話 国連宣言での「先住民族」は、抑圧されている人たちの人権を保障するという概念で、国連人種差別撤廃委員会の勧告は構造的差別を受けている沖縄県民の人権を保障するというものだ。本土と同じ血筋や言語だから先住民族ではないとし、撤回を求めるとする国会のやりとりは的外れで、議論のすり替えだ。沖縄には民族分断をする危険な人たちがいるとのレッテル貼りの意図があるのではないか。仮に国連に抗議をしても沖縄の権利を奪う意図があるのかと思われるだけだ。