握ってもらった人がよろこぶ、最高のおにぎりのつくり方

おいしいおにぎりの要素とはなんでしょうか? 形が崩れず、お米のおいしさをしっかり味わえるおにぎりを衛生的につくる方法をご紹介します。

今日のテーマは行楽や運動会などの行事に活躍する『おにぎり』です。ご飯の炊き方を復習しながら、おいしいおにぎりについて考えます。

おいしいおにぎりに必要な要素は「口に入れるとほろりと崩れ」「噛むごとにお米のおいしさが味わえる」こと。また、持ち運ぶこともあるので、安全面への配慮も必要です。これらの要素を考えた結果、今回のレシピでは通常の炊飯とは異なる工夫をいくつかしています。詳しくは僕のnote『最高のおにぎりの作り方』にもまとめてありますので、興味がある方は読んでみてください。

そろそろ新米のシーズンですが、おにぎりに使うお米は新米でなくてかまいません。そもそも、新米は細胞組織がやわらかいため、おにぎりには不向き。普通に売られている米を使うほうがおいしくできますし、新米はやや割高なので経済的にも賢い選択です。


おにぎり

材料(4〜5個分)

米…300g(2合分、今回は山形県産『つや姫』を使用)
炊飯器の目盛り分の水…380ccが目安
塩…3g

海苔…適量
塩鮭切り身…適量(塩鮭をふっくら仕上げる方法はこちら


1.お米を研ぐ。野菜室で保存した冷たい状態のお米をボウルに入れ、冷たい水を浸るくらいまで注ぎ、熊手のように指を立てて、2、3周かき混ぜる。手早く水を足し、一度目の研ぎ水を捨てる。

米を研ぐという作業は混ぜることで米同士の摩擦をおこし、表面の膜を削るイメージです。力を入れると米が割れるので、力を入れずにやさしく研いでください。

一回目は手早く行います。研ぎ汁を含んだ水分を米に吸水させたくないからです。そこで研いだところに一気に水を加えて、余分なものを希釈して洗い流します。


2.1の作業を3回繰り返す。研ぎ水が写真くらい透き通ったら研ぎ終わりの目安。水をよく切り、炊飯器の内釜に移す。目盛りまで冷たい水を注ぐ。


3.塩3g(小さじ1/2)を加えて軽く混ぜてから通常通り炊飯する。(TIps 1 塩を入れて炊くと効率的な理由)

4.ご飯が炊きあがったらほぐし、バットや大きな皿などに移す。うちわで軽く扇ぎ、途中で一回天地を返し、お米を冷ます。目安は60℃程度。


5.ラップを敷き、ご飯、具材、ご飯の順番に盛る。ラップで包み、大まかな三角形に成形する。おにぎり一個分のご飯の重さの目安は普通100g〜120g。(僕は大きめなおにぎりが好きなので写真は150gで握っています)


6.半分に切った海苔の上におにぎりを並べ、海苔で包む。海苔で包んでから両側から挟むようにして最終的な形を整える。(TIps 2 おにぎりは一生懸命握らない)


★レシピの解説

【Tips 1】塩を入れて炊くと効率的な理由

通常のおにぎりの作り方は「ご飯がアツアツのうちに塩(または塩水)をつけた手にごはんをとり、三角形(または俵型)に握る」というもの。この方法だと毎回、手に塩をつけなければならず、また手の表面の雑菌がご飯に付着し、食中毒のリスクが上がりますし、雑菌が味を損ねます。

効率的なのは「はじめから塩と炊き込む」方式です。この方法であれば全体にまんべんなく塩味がつきますし、いちいち手に塩をつける必要もありません。

2合=300gのご飯を炊き上げると重量は2.2倍〜2.3倍になりますが(つまり660g〜690g)、ご飯を硬めに炊き上げたいおにぎりの場合の理想は、水分がやや控え目の660g。その重量比で0.5%程度の塩分である3gを一緒に炊き込みます。塩加減は好みで2g程度まで減らすことができます。

塩を炊き込むことでご飯の粘りが抑えられ、口に入れたときにほどける食感になるのもメリット。最近、主流となった粘りの強い品種の米を使う場合にも有効な手法だと思います。


【Tips 2】おにぎりは一生懸命握らない

この方法では炊きあがった米をバットにうつし、うちわで扇ぐことで余分な水蒸気を飛ばすとともに、粘りを抑えます。チャーハンのときにも説明しましたが、米の表面が冷めるとデンプンが老化し、粘りを失うのです。

塩を加えて炊き上げ、うちわで扇ぐことで米の粘りを抑えた米をまとめると、お米一粒一粒が面ではなく、点でくっついた状態になります。これが口に入れるとほろりと崩れる秘密。

これは言ってみれば酢飯と同じ状態。ガチガチに握った酢飯はおいしくありませんが、寿司職人は手のひらのなかで表面の米だけを固め、極上の鮨をつくります。職人のような技術がなくてもラップを使って、力を入れずに整形すればふんわりとまとめることができます。形を整えるのは海苔で巻いてからで大丈夫です。

使う海苔の好みは地方によって異なります。今のようにコンビニエンスストアのおにぎりが普及する以前では関西は味付け海苔、関東では素の海苔を巻くのが一般的でした。海苔の種類に関わらず、おにぎりにはある程度のグレード(価格)の海苔を使ってください。安すぎる海苔の場合は湿ると噛み切れず、食べるときにおにぎりがボロボロと崩れてしまいます。

購入してもいい海苔を見分けるには色を見るのが簡単です。あまりにも緑がかった海苔は避け、黒っぽい海苔を選びましょう。光に透かして穴が空いている海苔は薄く、口溶けがいいので、さらにオススメです。

アレンジ 大葉としらすのおにぎり

おにぎりの具材は鮭の切り身であれば一個につき1/2〜1/3程度。昔のおにぎりは梅干しが1個、あるいはおかかがすこしという具合に具材が少なめでしたが、バランス的には具材をもっと増やしたほうがバランスがとれると思いますし、あるいは具材をご飯に混ぜ込んでしまう手もあります。

おにぎり1個150g〜160gに対して千切りにした大葉4枚としらす10gをご飯に混ぜ込み、あとは同様にラップでまとめればOKです。

混ぜ込む方式であれば具材の偏りもなく作業も省けるのがメリット。お弁当を準備するのはなにかと時間がかかるもの。効率よく進めるために工夫できることは積極的に取り入れるといいですよね。

抑えておきたい料理の原理原則が30分でわかる!

この連載について

初回を読む
おいしい」をつくる料理の新常識

樋口直哉

食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

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コメント

naoya_foodlab 行楽シーズンにはおにぎり!   約1時間前 replyretweetfavorite

akaricream こちらの作り方勉強になった…(お気づきでしょうか、私… https://t.co/imfgZYvZ99 約1時間前 replyretweetfavorite

yuki_doro 簡単でシンプルだった!握るっきゃない! 塩をあらかじめ入れるとは目からウロコである。 約2時間前 replyretweetfavorite