「日本のeスポーツ業界というのは、民間企業がたいして儲からないのに、良く分からない人たちがやってきて業界団体を立ち上げまくる地獄のような場所です」
センセーショナルな言葉とともに日本eスポーツ業界の現状を嘆いた但木氏のツイートは、1200RT、2200いいねを越えてシェアされ、大きな反響をよんだ。今回、本人にこの投稿の真意を紐解いてもらった。
2019年のeスポーツ産業の盛り上がりは1つのキーワードで表すことができる。「地方」だ。しかし残念なことに、利権のにおいを嗅ぎつけた団体がどこからともなく現れ、eスポーツのさらなる成長を脅かしているのもまた事実だ。
テレビ東京と電通が共催する高校生向けeスポーツ大会「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2019」には全国から1,475校、1,780チームが出場した。2019年8月には、予選大会を勝ち抜いた参加者たちによる決勝大会が舞浜アンフィシアターにて行われ、2日間の来場者数は2,800人を超えるほどの盛況ぶりだった。
国民体育大会の文化プログラムとして開催される「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」も大きなイベントの一つだ。全国各地で都道府県の代表を決める予選大会が行われ、15,000人もの生徒が参加している。
「STAGE:0」、「eスポーツ選手権」の参加者は全国各地の高校生だ。eスポーツ興行はゲーム企業が集まる首都圏を中心に勃興したが、今やその盛り上がりは日本全国に広がり始めている。
コミュニティから生まれた地方イベントも賑々しい。9月下旬、富山県高岡市の高岡テクノドームで行われた「Toyama Gamers Day2019 5G COLISEUM」のスポンサー企業には、NTTドコモ、コカ・コーラといった大企業の名前の横に、富山県の地元企業の名前がずらりと並んでいたほどだ。イベント内で高岡市長と魚津市長がエキシビションマッチを行うなど、行政の熱の入れ方も尋常ではない。
私は2017年頃から当時勤めていた出版社でeスポーツ産業の調査を始めた。調査結果をもとにレポートや記事を執筆する傍ら、Twitterを通じてeスポーツに関する情報を発信してきた。
2018年の夏頃、自身のTwitterのタイムラインに地方イベントや地方で活動するプレイヤーのツイートが頻繁に流れるようになり、興味をもった私はフォロワーに対して「地方の活動について情報を教えてほしい」と依頼した。するとたくさんのコメントが寄せられ、なかでも大分、静岡、茨城、大阪、岡山、徳島といった地域のコミュニティに関するコメントが多くを占めていた。
これらのコミュニティはやがて地域を代表する団体を組成し、興行などの取り組みを活発化させていく。いくつかの団体はその功績が認められて日本eスポーツ連合(JeSU)の地方支部としても公認されたのだ。
ゲーム好きの人たちが寄り合って小規模なイベントを開催していたコミュニティが、団体として認められ、大きなイベントに取り組めるほど成長している。企業やメディア、行政は地方eスポーツの盛り上がりにますます注目するだろう。
順風満帆にも見える地方の動きだが、同時にトラブルも増え始めた。団体が乱立しているのだ。