韓国食品医薬品安全処に何が? 所属医師が幹部12人を告発

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 韓国の行政機関、食品医薬品安全処で勤務する14人の医師のうちの1人、カン・ユンヒ臨床審査委員は4日、ソウル中央地検に李儀卿(イ・ウィギョン)処長ら同処の元幹部・現幹部12人を職務放棄で告発した。カン・ユンヒ委員は今年7月から国会前で「食品医薬品安全処を改革しなければならない」として「1人デモ」を実施、ついに告発状まで出した。食品医薬品安全処を舞台に初めて公になった内部告発だ。食品医薬品安全処は先月中旬、指示拒否・業務秘密流出などの理由でカン・ユンヒ委員に3カ月の停職処分を下していた。カン・ユンヒ委員は「内部の意見は黙殺しながら、『業務上の秘密を流出させてはならない』という組織は正常でない。これまで手足が縛られたまま拷問されているような感じだった」と語った。

■「乳房インプラント、5年前に調査すると言っていたのに」

 希少がんとの関連性により販売が中止された多国籍企業アラガン(Allergan)社の乳房インプラント(人工乳腺バッグ)に関する措置を先送りしてきたことが食品医薬品安全処の現在の状況を示している、とカン・ユンヒ委員は主張する。アラガン社の乳房インプラントは、今年4月から5月にかけてカナダとフランスの関連当局が販売を中止していたが、食品医薬品安全処は7月に米食品医薬品局(FDA)が同製品の回収を決定した後に回収措置に入った。カン・ユンヒ委員は「食品医薬品安全処は2014年12月から『この製品は希少がん発生リスクがあるので追跡調査をする」と言っていたのにもかかわらず、回収措置を出した後に患者の把握に乗り出した。海外の保健当局は2011年ごろから乳房インプラント手術を受けた人を追跡調査してきたが、食品医薬品安全処は2014年末に調査すると言っただけだった」と主張した。カン・ユンヒ委員の主張に対して、食品医薬品安全処は「関連法上、乳房インプラントがどの医療機関に供給されたのかという程度は把握するとの意味だった」と釈明した。しかし、2014年に食品医薬品安全処が配布した資料には、「(希少がん発生の懸念があるため)乳房インプラントを販売する者と使用する医師に患者情報まで追跡させ、効果的に管理させる」と書かれている。


■「FDA発表に頼るなら、食品医薬品安全処は何のためにあるのか」

 カン・ユンヒ委員はまた、複数の製薬会社が臨床試験中の医薬品や既に販売されている医薬品の安全性について、6カ月ごとに提出する報告書なども食品医薬品安全処がきちんと見ていないと指摘した。専門性や業務処理速度が製薬会社の水準に達していないということだ。カン・ユンヒ委員は「最近発がん性物質が原料として使用されていたことが確認され、販売が禁止された269の胃腸薬のケースのように、FDAなど海外の機関で問題が発見された時に後続措置を取る程度なら、食品医薬品安全処が存在する意味がない」と話した。最大の問題として指摘されているのは専門家の不足だ。国会の鄭春淑(チョン・チュンスク)議員が食品医薬品安全処から提出を受けた資料によると、医師の資格がある食品医薬品安全処の職員数は昨年の20人から今年は14人へと減っているという。米FDAは医師が802人(歯科医を含む)に達する。FDA職員が食品医薬品安全処職員の6倍に当たる1万8000人いることを考慮しても、食品医薬品安全処の医師数はひどく不足していると指摘されている。

 食品医薬品安全処内部には、カン・ユンヒ委員の告発について、「業務の現実を無視して『一匹おおかみ』のようになっている」「食品医薬品安全処での勤務は2年なのに、『すべてを知っている』かのような考えは困る」という声もある。だが、一部には「食品医薬品安全処の規模がますます大きくなっているのだから、改革が必要だという指摘に耳を傾けるべきだ」という反応もあった。