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(マツ)出ていったで 草間さん。(喜美子)ええ!?
草間さんが残した短い手紙は漢字が交じっていて喜美ちゃんはまだ全部を読むことができませんでした。
(照子)さあ うちと信作とで厳しく教えたげるわ。
は~い!
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
信楽に来て 初めての冬がやって来ました。
水道も電気もなかった喜美ちゃんの家に…。
(常治)よっしゃあ いくで。
(一同)お~!
電気がつきました。
電気や~。
♪~
・(常治)喜美子~! はよせえ 喜美子!
今 行く!
更に出来たのは…お父さんが仕事の合間に作った自慢のお風呂です。
新しいお風呂は 天国です。
天国を支えるのは 喜美ちゃんです。
炎の大きさを確認しながら 温度を見極め適切な量の薪をくべます。
最初の頃は 加減が分からずよく失敗しました。
はあ~。 あ~つ~!
・喜美子~!えっ?
何度も何度も失敗し 叱られ やり直しおかげで温度調節は玄人並みに鍛えられました。
はあ~ ええ湯加減やぁ。
おっしゃ!
庭を耕して 小さな畑も作りようやく収穫できるようになりました。
畑の世話も喜美ちゃんの役目です。
あ~ん…。
(直子)川原百合子さ~ん。
呼ばれたら 「は~い」やで。
川原百合子さん。 「は~い」は?
静かに食べえ。(マツ)問屋の集まり?
おう。 おやじさん調子悪いよって代わりに行け言われてな。
戻り 週明けになるかもしらんわ。
気ぃ付けて。おう。
お土産 買うてくるな。
ええ子にしとけよ。
喜美子 留守の間 頼んだで?
はい。 行ってらっしゃい。おう。 行ってきます。
行ってらっしゃい。おう。
えっ!? また足らへんの?
この前 持ってたお金は?オゥちゃんにラジオ頼んだんや。
ラジオの代金や。
今どき ラジオの1つや2つ持たんでどないすんのん。
困ったなあ。
すぐに羽 生えて… 飛んでくなあ。
パタパタ パタパタ…。いらっしゃい。
飲み過ぎておやじさんの顔 潰さんといてよ?
分かってる。 ほな 行ってくる。
お早うお帰り。
(本木)ちょっと見てきますわ。
(工藤)お宅… 川原さん?
川原常治いう男を訪ねてきたんですけど…。
だ… 誰や それ?
お宅…?
川原いう表札 見つけましたわ!ああ そこな! そこの川原っちゅう男か。
あっ おらんで。 さっき出てったわ。
しょうもない男やろ? あの 大阪で借金こさえて逃げてきたいう…。
ちゃう? そやろ? その川原やろ?
(工藤)知っとんかい?せやから さっき出ていったって。
はよ追いかけた方がええで。
琵琶湖… 琵琶湖の向こうまで行ってず~っと逃げる言うとったで。
ほんまか おい。ほんまや。
ほんまか お前。はよ追いかけな。 ほら。ほんまか お前。
いやいや ほんまやて。 ず~っと向こう。
ず~っと向こう。 琵琶湖の向こう。はよ行った方がええ。 早う。
ほらほら ほらほら。 あんなん捕まえてギャ~したったらええねん あんなやつ。
はあ…。
(望月)ええですねえ。
川原さんすっかり読み書きできるようになって。
絵も ほんま上手ですね。
誰のおかげ?
♪~
読み書きできるようになったん誰のおかげかしら~?
はあ…。
つい こないだまで毎週のように家に招いて算数まで教えてあげてた。誰のおかげ?
何してほしいのん?
信作 また熱出たん?
(陽子)ちゃんと食べさせてんのになあ体 弱あてかなわへん。
渡したいもんあって来たんやけど…。
(大野)喜美ちゃんジョーさん いつ戻るんや?
あっ ラジオや。来週 言うてたかな?
ほう。 ほな それまできれいに磨いとくわ。
えっ それ うちの?
もうお金も もろてるで。やった~! すごいでぇ!
あっ 渡したいもんて 何?
あ…。うん?
受け取ってくれた?
ああ…。
何て言うてた?
これ 恋文ちゃうの?ませた子やなぁ。
ほやけど自分の子が好かれて悪い気しいひんうれしいわ~。
喜んでた。
ほんま?
ほな 待ち合わせ場所に来てくれるやんなぁ。えっ?
「墓地で待ってます 照子」。
♪~
墓地なんて 普通 来えへんで。
知らんの?
若い男と女が 人目を忍んで会ういうたらこういうとこ来るんやで。
人目を忍んで 何すんのん?
いかんことやろ。いかんことって?
いけないことよ。
いけないことをしたくなるのが人を好きになるってことなのよ…。
はあ…。
お兄ちゃんも ここで会うてた。
お兄ちゃん?
あっ!
あ… よう来たな。 熱あるんちゃうの?
もっと向こうやし 来て。
大丈夫なん?
(信作)来いひんかったら余計 熱が出そうやったから…。
ああ。 ほな ごゆっくり。
何?ほんま言うて もうつらいねん。
考えると しんどい。「もう やめてえや」って言うてほしい。
自分で言え。
自分で!
帰った!?
何で ここまで来といて。
いけないこと したないんとちゃう?照ちゃんとは。
うすうす分かってたわ。
窯元の娘と雑貨屋の息子じゃ身分が違い過ぎる。
ほな そういうことで。
今日 お兄ちゃんの誕生日やねん。
えっ?挨拶してってえや。
うちのお兄ちゃんが眠ってやる。
お骨はないけどな。
学徒何とかいうのんで戦争行って帰ってきいひんかった。
年の離れた うちのこと…信作のことも ようかわいがってくれた。
去年まで一緒に ここでおめでとう言うてくれたのに…。
ほんま言うて もうつらいねん。考えると しんどい。
♪~
ここや ここ!
うわ~ ここか~!
ちょうど この木に寄りかかっててん。
お兄ちゃんは どっち?
あの辺から うち のぞいててん。
遠おて 相手のおなごの顔は見えへんかった。
せやからお兄ちゃんは どっちにおったん!?
お兄ちゃんは こっちや。ほんで おなごが こっちや。
出征する前の日やった。
あ~ こんな いけないことしてたん…。
もっと いけないことよ。
こんな感じやったんよ。
いつか うちらも こんないけないことをする日が来るんやねえ。
せえへんわ!
絶対 こんなこと ようせんわ!何してくれんねん!
ベッ! 汚っ…。
もう帰るで!
楽しかったなあ。楽しないわ!
楽しかったからお友達になってあげてもええよ?
いらんわ! べえ~だ!
あ… 待って!待てへん!
待って!待てへん!
ただいま。
お帰り。お昼 何するん?
お風呂たいてくれる?ええけど…?
お客さん来てるで…。
(工藤)琵琶湖の向こうまで行かされてな体 えらい冷えてもうてん。
(本木)お父さん帰ってくるまでおらせてもらいます。
大阪から来た借金取りです。
「どないしよう…」。震える思いで懸命に考えます。
そのころ…信楽に向かっている人がいました。
喜美ちゃん 知らん!?照子がいなくなったんや!
あっ 痛たたた…。
来い!女にも 意地と誇りはあるんじゃあ!
とやあ~!
大阪行ったら あかん。
うちは 信楽の子や。 信楽 好きや。