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【国際】

香港、禁じ手で沈静化図る 一部暴徒化 戒厳状態進行も

4日、香港で、覆面禁止法に反対し、中国銀行の店舗を破壊し放火する若者ら=共同

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 【香港=浅井正智】長期化する抗議活動を前に、香港政府はマスクの着用禁止に乗り出し、運用次第では戒厳令に近い効力を持つ「禁じ手」の緊急状況規則条例を発動した。民主派やデモ参加者は強く反発、四日夜の集会は香港全土で十カ所以上に及び、一部が銀行や駅施設を壊すなど暴徒化した。今後、事態が沈静化しない場合、政府は同条例を使って会員制交流サイト(SNS)や交通の制限も可能で、香港が実質的な戒厳状態に陥る可能性も捨てきれない。

 「マスクをしてデモに参加するのは、将来、不利益を受けるのを避けるためだ。この政府は信用できない。闘争を続けていく」

 香港島中心部の公園で四日夜に行われた緊急抗議集会。マスクをして参加した男子大学生の陳さん(23)は、五日施行の覆面禁止法に反対の声を上げた。張達明(ちょうたつめい)・香港大法律学院首席講師は「邪道な方法で暴力を止めようとしてもダメ。根源的な問題を解決すべき」と批判した。

 夜には新界地区・〓湾(チュンワン)などで中国系銀行が放火され、同地区・沙田(シャティン)の駅では券売機や事務所が壊され、地下鉄は全線で一時運休を余儀なくされた。香港島の繁華街では、警察が多数の催涙弾を発射した。

 林鄭月娥行政長官は四日の記者会見で「どのくらい効果があるかは今は予測できない」と、本音を漏らした。デモ隊から匿名性を奪うことで過激化を抑える狙いだが、そもそも違法を承知で破壊活動をする参加者もいるからだ。

 政府は覆面禁止法の制定に際し、緊急条例を発動した。全面的に発動されれば、規制は通信や人の移動、財産差し押さえなどに及び、デモ隊が連絡手段として活用するSNSの遮断も可能になるとみられ、市民生活や経済活動に重大な影響を及ぼす。

 今回、緊急条例を発動しながら、林鄭氏は「緊急事態に入ったわけではない」と苦しい説明を繰り返した。立法会(議会)の審議を回避したにもかかわらず、十六日から立法会で覆面禁止法を審議すると付け加えたうえ、政府側は「外国の送金を制限することはない」とも述べており、緊急条例発動を小さく見せようとする意図がうかがえる。

 逃亡犯条例の改正問題をきっかけに始まったこの抗議活動だが、政府は条例案の棚上げや正式撤回など、タイミングを逸した小出しの対応に終始。その都度収束に失敗してきた。

 香港メディアは、香港警察が九月三十日付で武器使用の指針を改定し、使用基準を緩和したと伝えており、デモに対する圧力は確実に強化された。中国政府も四日、「暴力犯罪に歯止めをかけ、社会秩序の回復の助けとなる」と覆面禁止法を支持するコメントを発表した。覆面禁止法で事態が収束に向かわない場合、政府が今度こそ本格的な「緊急事態」を宣言し、さらに強硬な手段に訴える可能性は依然として残っている。

※〓はくさかんむりに全

 

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