北朝鮮の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。米朝協議を前にした揺さぶりの一つとみられるが、現在の対立を乗り越え、日韓が安全保障で協力できるかも試されている。
懸念されるのは、落下したのが島根県沖合三百五十キロ付近の海域で、民間の船舶、航空機などに影響が出かねなかったことだ。
さらに北朝鮮が、自ら新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射に成功したと発表した点も重大だ。
海中から発射されるSLBMは、上空の偵察衛星などからの把握が難しく、迎撃も困難が伴う。
通常軌道で発射すれば、射程は最大二千五百キロになるとの見方もあり、米国本土への脅威となる。
もちろん、弾道ミサイルの発射を禁じた国連の制裁決議違反であり、国際社会は厳しく対応しなくてはならない。
九月に公表された二〇一九年版の防衛白書は、北朝鮮の核開発について「核兵器の小型化・弾頭化を既に実現している」と推定している。核弾頭を搭載したミサイルの脅威が、現実味を増している。
北朝鮮のミサイル発射は今年五月以降十一回となる。しかし飛行距離が比較的短距離にとどまっていたため、トランプ米大統領は問題視しない姿勢で、日韓も同調していた。今回の発射は、その隙を突かれた形だ。
北朝鮮の動きが活発化するなか、日韓関係は、昨年十月の元徴用工判決以降、悪化したままだ。
韓国は、日本政府による輸出規制強化に対抗し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)破棄を通告した。期限は来月に迫っている。
ただし北朝鮮のミサイルに関する情報は、米国と日韓が補完しあう関係にある。
北朝鮮に隣接する韓国は、発射時間や場所についての情報を迅速に入手できる。逆に日本側は、落下地点を把握しやすい。
日本政府は、今回発射されたミサイルの数を途中で訂正した。これは、韓国との情報共有が円滑に行われていないことが一因ではないか。
一方、韓国側はGSOMIAに基づいて、日本側に情報提供を求めてきた。北朝鮮の動きに対応するには、両国の連携が欠かせないことを示すものだろう。
まずは日米韓が、足並みをそろえることが必要だ。そのためにも日韓は、大きな視点に立って関係改善を進めてほしい。
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