平野義尚@奥多摩町議選11/17

以下、前衛の街頭論文より、抜粋。 ＜高浜町ーー関電協力金9億円の怪＞ 彼の名は、一瀬敏昭。58歳。元高浜町議会議長である。度重なる“糾弾”と脅迫、心労のために、脳卒中で倒れ、一命はとりとめたものに、半身麻痺、言語障害をきたし入院、治療中であった。↓

人差し指で彼は、私の掌いっぱいに大きく、一字一字ゆっくりと文字を書いた。「カ、ン、デ、ン、ノ、キ、ヨ、ウ、リ、ヨ、ク、キ、ン、ワ、9、オ、ク、ト、チ、ガ、ウ。ホ、ン、ト、ワ、25、オ、ク、エ、ン、ヤ…」…この人は原発を誘致した町首脳グループの一員ではなかったか。↓

「関電が億のつくてんぼうな協力金をばらまいたらしい。欲どし、はしかい奴らがうごめいてとる」人々の口に噂がのぼりはじめた1978年4月、マスコミがこの疑惑を報じた。町民にはひた隠しの”ワイロ”として私物化していた町長・助役は窮地に立たされた。↓

この金の預け入れ金融機関であった高浜町農協では、公表に先立ち吉野久男金融課長（当時）らが連日深夜におよぶ作業をすすめ、協力金の実際の受け入れ月日を改ざんした。こうして高浜町は8月になってようやく、「関電からうけた協力金9億円とその利子2800万円について」（町広報）発表した。↓

この協力金は76年10月から翌年6月にかけ3回にわけて浜田倫三町長の「個人名義の預金口座」に振り込まれたという。9億円のうち「3億3000万円を昭和53年4月に町内の5漁協に分配した。あとの残りは、昭和52年9月補正予算から3回にわけて町予算に入れた」とのことだ。まだ続いた↓

1979年9月町議会で、初当選した共産党町議の追及にしぶしぶ町長は「高浜1・2号機に関する協力金2億5000万円も、じつは関電が昭和44年から49年にかけて町に支払ったので、学校整備費等にあてた」と53年度決算案で、はじめて報告されたのである。10年も前に受け取っていた協力金が↓

いまになって突然報告されるのも異常なら、巨額の協力金が「町長の個人名義の通帳」に振りこまれていたというのも常識では考えられないことである。日本の地方自治体史上、前代未聞のできごとというべきであろう。↓

高浜町では、関電と直結した浜田倫三町長と森山栄治助役が、町行政の隅ずみにまで君臨し、私利私欲をもさぼっていた。町政の実質的なボスは森山助役であった。彼は、…自ら組織した「部落解放同盟」を指揮して、だれかれ容赦なく“糾弾”をくり返してきた。町議会までが町長・助役の脅迫に屈し↓

その”親衛隊”になりさがっていた。…1979年4月22日ーー結果は、堂々2位の上位当選。渡辺共産党町議の誕生は、またたく間に町民に伝わり、町の話題をさらった。↓

（小学校教員への解同の糾弾事件）を境に、高浜町の教育は重篤状態に陥っていた。町長、助役は、町内の各学校の運営、人事、教育にまで、我が物顔に介入しはじめたのであった。「盆暮、年度末にきてみなはれ。役場の職員も学校の先生も、助役につけ届けするのがあたり前になっとるのやな↓

新採用者なんか、10万円以下やと恥をかくといわれている」助役の自宅に近いある住民の証言である。↓

一瀬敏昭元町議会議長が、巧妙に仕組まれた糾弾のワナにかかったのは、1978年春であった。高浜原発建設にあたって、関電のために地元、内浦湾の漁民を説得したのは、この人である。一瀬氏と浜田町長は20年来の朋友であり、両者の間には「78年の改選で町長を交代する」という約束があった。ところが↓

浜田町長らは、76年夏頃から一瀬議長を敬遠しはじめ、とくに関電との会合から遠ざけるようになった。77年春、一瀬議長は…「出馬する」と表明。…このまますすめば、一瀬氏が勝つのは、目にみえていた。あわてた浜田町長、森山助役らからは「県会議員の方を引きうけてくれ」と出馬を断念させる要請が↓

執拗にくり返されたが、彼は応じなかった。…（一瀬）「関電の協力金の内訳をいうてくれ。政治資金に流した先は、だれとだれや？残りはどうした？」浜田町長の顔が凍りついたようにこわばり、みるみる血の気が失せた。この瞬間から、一瀬議長”糾弾”の周到な準備がはじまった↓

一瀬議長宅には…連日、電話や直接訪問の脅迫がはじまっていた。…平川土木建設・平川大益社長…は「あんた、もし町長選に出るなら血を見るぞ。これ、覚えときな…」とすごんでみせた。…高浜農協の時岡常治参事（後に県議）も「…“消す”しかないいうて、ヤクザが動いてるというで」と脅迫した。↓

一瀬議長は警察に身辺警護を要請した。が、それは即町長・助役に筒抜けになっていた。…切り札は“糾弾”であった。…「差別発言」なるものがねつ造された。…3月30日、町役場3階会議室で「議員同和研修会」なるものがひらかれた。召集状は議会事務局から発送されたハガキである。1人を除き、19人の町議

が出席…田中稔「解同」高浜支部長ほか…「こん中にも差別者がおる。自分で名のらんのなら、名指していおか。一瀬敏昭！あんたや」「差別発言、証拠があるで。何ならそのテープ、みんなの前で聞かせたろか」。第二幕は5月4日、「議員研修会」という名目で、一瀬元議長だけが呼ばれた。罵声がとび↓

糾弾は延々と続いた。…よろけるように自宅にたどりついた一瀬氏はその夜、卒中で倒れた。再起不能であった。このような状況下で、町はあわてふためき、得たいの知れない「9億円の協力金」なるものの存在をしぶしぶ公表したのである。↓

（差出人不明の手紙）高浜町では選挙のたびに不正が起こる。買収などは常識だが、町みずからが選挙法をふみにじっているーーという訴えだった。調査の結果は、実際ひどいものだった。その一つは主に役場、保育所、給食センターの職員、そして教職員への不在者投票の強要である。…不在者投票をしぶる↓

と、「だれのおかげで採用されたか、わかっているのか」とう上司さえいた。不在者投票所へいくと、森川助役や教育長が出迎え、傍らを離れなかった。…こうして78年9月の町長選では、不在者投票が…8.78％にものぼっていた。町選管が発注した投票用紙の増刷は…じつに450枚もの…予定の必要枚数の他に↓

追加された。開票場での…森山助役が開票事務責任者として指揮をとっていた。開票中に職員が票をもって部屋を出入りする場面さえ見られた。おまけに町長選の開票作業では2回も“停電”したのである。…助役が「時間の無駄を省くために一括点検方式をとりますので」…票を100枚ごとに束にくくり↓

各票点検を省略するということだ。…選挙の3，4ヶ月前に実態のない転入者が激増する。転入先へ訪ねても、そんな人物は住んでいない。しかし選挙人名簿に記載されるから、不在者投票はできる。…原発関係の建設企業の下請け労働者にその例が多かった。出稼ぎ労働者とその家族に転入手続きを↓

とらせていた。…こうして浜田倫三町長は辛くも当選した。対立候補との差、わずか390票であった。