官民連携で設立した沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)の中島洋理事長が、2020年6月の任期途中で解職された。理事長職の勤務形態や報酬改善などで対立し、その交渉過程で信頼関係が崩れたことが要因だ。ただ、解職に至った背景や具体的な理由は公表されておらず、民間企業などからは解職やISCOの在り方に賛否がある。広く官民の資本や人材を活用する団体だからこそ、組織運営の方向性や必要なトップの資質についての検証を迫られている。(政経部・川野百合子)

那覇市IT創造館に入居するISCOのオフィス=那覇市銘苅

 解職が決まったのは、9月18日の臨時理事会。解職理由に(1)法人の利益より個人の利益を最優先させている(2)理事会の恣意(しい)的運用につながる言動がある(3)事務局に対してパワハラともとれる圧力、信義違反がある-など5項目を挙げた。

 理事会には理事11人のうち7人が参加。盛田光尚常務理事が解職動議を提案した。理事から「これが解職理由になるのか」という否定的な意見も一部出たという。ただ、2時間にわたる議論の結果、賛成多数で解職が決まった。

 中島氏は、公募で理事長職に決まった。当初は非常勤の勤務体系や報酬に特段の疑問を抱かなかったという。「団体や自治体との連携協定などで、業務が多忙になった。組織のトップとして最終的な責任を取る理事長に決裁権がないことにも疑問を感じ、勤務形態の変更を訴えた」と主張する。

 一方のISCOは、中島氏の常勤化と報酬増額の要求に、常務理事や事務局が約2カ月対応。担当者は「期中の役員報酬の変更は予算上難しく、理事会での決議事項であることなどを再三伝えたが聞き入れられなかった」と説明する。「要求方法やプロセス、コンプライアンスの問題だ。業務に支障が出るほど要求が続き、事務運営が混乱した。信頼関係を継続することが困難だった」とする。

 理事会以降、暫定的に盛田氏が理事長に就任した。ISCOは任期満了を待たず、理事会や評議委員会を通して、新たな理事長の公募条件や面接条件などを決める考えだ。

 最先端の情報通信技術を活用し、県内産業の振興を図るための産業支援機関として設立されたISCO。原点に立ち返り、組織の運営理念や行動規範を明確に整備する必要がある。

 後継の理事長に高度なITの知見を求めるか、組織統治の見識を期待するか、人物をどう見極めるか-。招へいの基準も精査する時だ。