抗体医薬品によるADCC活性とNK細胞について
抗体医薬品によってADCC(抗体依存性細胞傷害)活性を活用し、NK細胞のがん殺傷力を増強させます。ここではトラスツズマブ(商品名ハ―セプチン)を例にとって説明しますが、抗体医薬には他にも承認を取得したものがいくつもあります。
協和発酵キリンが承認取得したポテリジェント抗体医薬品は、ADCC活性を100倍程度高めることが実験レベルで分かっています。NK細胞の能力をひきだし高める治療は今後も注目されていくことでしょう。
ADCC活性とは?
ADCC(Antibody-dependent cellular cytotoxicity)活性はNK細胞のようなキラー細胞が持っている機能のひとつで、NK細胞や単球などの白血球が、抗体を介してがん細胞などの標的細胞を殺傷する活性が高まるものです。
がん細胞に抗体が結合すると、その抗体がNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せ、その抗体が結合しているがん細胞を殺傷します。抗体とNK細胞の複合体ががん細胞に結合してから標的細胞に結合しても同様に、標的細胞を傷害する効率が高まります。これがADCC活性です。
抗体は免疫系の中で重要な役割を果たしており、また、リンパ球には抗体を利用する機構が存在しています。特にNK細胞は、抗体のFc部分の一部があるタイプの抗体と結合しやすく標的によってはADCC活性が誘導されることがあります。体外培養環境下でADCC活性を測定したものが下記の表です。体内でも全く同じになると保証するものではないことはご注意ください。また他の培養技術による免疫細胞集団の傷害活性も併せて示しました。
このグラフは、一定の数の標的がん細胞と、免疫細胞を一緒に培養し、一定時間内に傷害されたがん細胞の比率を表しています。つまり、がん細胞を傷害する効率を示すものです。(標的細胞には、MHCクラスIを持つがん細胞を選びます。MHCクラスIを持たないがん細胞を標的とすると、最初からANK以外は反応できないため)
(※1)T-LAKというのは一般的な免疫細胞療法ですがキラーTが多めに増える条件を加えてあります。
(※2)CTL はキラーT細胞を教育して増殖したものですが、がん細胞を殺す力はANK治療よりはるかに弱いものです。しかも、がん細胞はしばしば姿を変える事がありますがCTLは姿を変えると認識できない為、教育されたがん細胞以外攻撃できないという弱点を持っています。
(※3)ANK細胞単独の場合を示しています。
(※4)また、ANK治療と抗体医薬品トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)を併用すると、更に攻撃力が増します。(ただし、HER-2抗原強陽性の場合に限ります。)
(※5)トラツズマブ(商品名ハーセプチン)は単独でがんを攻撃することはありません。
(※6)ごく一般的な免疫細胞療法(NK細胞療法など)
提供元:リンパ球バンク (社内での比較です)