スカーレット4話 感想あらすじ視聴率(10/3)時代は刻一刻と動いてんねん

紙芝居を見るにも金はいる

はい、神社の境内で紙芝居の時間です。紙芝居のおっちゃんが来ております。

「夢と希望の紙芝居が来たでぇ〜! 今からポンせん配るでよ。順番に並んで並んで、はいよぉ〜、はいはい!」

これがこの時代の娯楽です。お菓子を食べて、紙芝居を見る。それが楽しいことなのです。
戦争中はこんなこともできなかった。小さな子供たちにとって、平和をかみしめる時間でもあるのです。

水木しげる氏も、はじめは紙芝居作家デビューでした。
この紙芝居が貸し本漫画になって、雑誌になって、それからテレビ漫画になる。そこは『なつぞら』でも描かれましたね。

少年向け、少女向けの小説雑誌もありました。
それはちょっとお高く、かつ教育熱心な家庭向けです。

そんな紙芝居の列に並んでいる喜美子ですが、こう聞かれてしまうのです。

「お金は?」

「お金いんのん?」

妹だけでも欲しいと粘る喜美子です。

「うちの人に聞いて出直して来ぃ」

おっちゃんはちょっと辛そうに言います。

「すまんのぉ、キリないし、堪忍してや」

おっちゃんもな、こんな子供相手に金を要求したないねん。けど、これで食うとるからね。

しかし、クソガキは容赦がありません。
でたぞ、黒岩のクソガキや! まんまガキ大将ですね。

「どけや、お金ないくせに厚かましいわ!」

この憎たらしい、可愛げがまったくない顔! ええ顔や。感動的なクソガキや。

ここでクソガキコールです。

「厚かましい! 厚かましい! 厚かましい!」

睨み付ける喜美子に、こう来たわ。

「やるんけ?」

「……いこ」

喜美子は悔しさを噛み締め、直子に促します。

「みたことないさかい、みてみたい!」

直子にそう言われ、おっちゃんもこう促すのです。

「紙芝居見るだけならお金いらんで。おい!」

「行くで」

「紙芝居は?」

「腹の足しにならん、もういらん」

小さな胸にはプライドがある。
直子と違って、馬鹿にされながら見ることは、喜美子にはできないのです。

家に戻り、洗濯をする喜美子。

「見たかった! 見たかった!」

そんな姉に、洗濯物をぶつける直子。

「紙芝居見たかった! 見たかったぁ! 見たかったぁあ!」

直子はわがままで、姉に似ていないという意見もあるかもしれない。けれども、直子だって寂しくて、不安で、心に傷がある。

直子の喜美子への厳しい態度は、彼女なりの甘えだとは思う。
姉にしか、ああいう態度はとれへん。

直子はうるさいし、かわいげがないように思えるけれども。
だからといって、この子を責める気にはならん。きっとええとこもある。

そこを見守りたいと思います。

陶芸家になったらあかんで

このあと、喜美子は慶乃川の工房で待っておりました。

「失礼なこと、いうてすみませんでした!」

これには慶乃川もびっくりや。

「そんでわざわざ謝りにきはったん? 名前何やったかの? きみちゃんか。気にしんでええよ」

慶乃川は田舎に帰るつもりなのです。小さな畑を耕し、細々と暮らすそうです。
ただ、その前にええ茶碗を一つ作りたかったとか。

慶乃川はずっと陶工をやりながらも、陶芸家に憧れていました。陶工と陶芸家はちょっとちゃう。

自分だけの作品を作る芸術家――。

そういう存在になりたかったのだと。
売り物になる火鉢や皿を作りながらも、そういう芸術を生み出したかったんですね。

でも、そこで照れるのが、関西のおっちゃんやで。

「陶芸家はあかん。そもそもお金にならへん。陶芸家になったらあかんで」

金にならんことをやってまう。それもアホやからや。そこには、そういう照れがあります。

NHK大阪や!
これがその真髄やもしれん。そういうものがビリビリきましたで。

喜美子はキッパリと返します。

「お金にならんことはしません。失礼なこと言うてすみませんでした!」

「こちらこそ失礼な作品見せて、すみませんでした」

慶乃川は気持ちの整理がついたんやろね。
ユーモアで返す。いやぁ、これぞ関西の味ですね。

ここでおずおずと、喜美子は切り出します。

「あの、あれいらんのやったら、もらうてもいいですか」

そこにあるのは、紙でした。

喜美子ちゃんはええ子やな。
反省したら自分から謝るし、下手に出るし、そういうところはしっかりしてる。

気持ちの真っ直ぐさは伝わって来ます。

伊賀と甲賀は敵やない

このあと、大野雑貨店へ。
陽子はマツと喜美子に何かを渡しています。

「伊賀のおばあちゃんが甘やかしぃでな。新しいのこうてくれてん」

そう渡されて来たのは、絵の具のチューブです。
別にこの伊賀のおばあちゃんは、忍者やないで。多分。

そうそう。ここは信楽、甲賀です。伊賀は目と鼻の先。

何度でもいうたる。

伊賀と甲賀(と、根来衆あたりもか)が殺しおうとるのはフィクション、主に忍者ものの世界だけや!!
山田風太郎氏や横山光輝氏あたりがドカーンと爆発させた世界観やね。

※おもろいけどな

今はそれがよかったのか、伊賀と甲賀がセットで日本遺産「忍びの里」になっておりまして。手裏剣対決も開催されております。

とはいえ、そもそも伊賀と甲賀の住人全員が忍者の子孫ではない。
まぁでも……無関係というわけでもなくて、甲賀で火薬や薬が名産なのは、忍者の知識由来とは言いますね。

「甲賀流忍術屋敷」は最高です!
観光宣伝をなぜかしとる……それもこのへんで終わり。

喜美子ちゃんは、絵の具で何かをするようです。

酒臭いお父ちゃん、やめてーや

その晩、喜美子が紙に絵の具で何かをしておりますと、誰かが近づいてきます。

「うん、何や? まだ起きとったんか〜よっこらせ」

ジョーカスや。
清々しいほど、ジョーが今回もカスやで。

「くさっ!」

「丸熊の社長にええ酒飲ましてもろた」

そう言いながら、酒臭い息をはぁ〜はぁ〜とするあたりが、朝の爽やかさを台無しにする。
喜美子と直子がポンせんすら食べられなかったことをふまえると、ますますカスやね!

「社長の娘さん、お前と同じやいうとったぞ。て、て……」

「てるちゃん」

「そや! ちゃんと仲良くしとるか」

「もうええからねてーやー」

「草間さんどないなっとる?」

「知らんわ」

「いつになったら元気になって出て行くんやろ。あんなん誰が連れてきた〜……俺や」

一人ボケツッコミや。もうなんやねん。

「う〜んかわいいなぁ〜」

「ねてください!」

酒臭い息で娘のほっぺたをつまむあたり、鬱陶しくてカスの真髄を極めつつあります。

きみちゃんは読み書きが苦手。
でも、得意なことがありました――。

そう引っ張られる中、明日へ。

総評:自信があるなら、小細工は無用

本作関連ニュースをざっと見てはおります。

今年はメディアコントロールしてないのかな?
そんな印象を受けております。

女優叩きツイートを拾って加工する程度の記事はあります。
致命的なプロットホールではなくて(そもそも現時点でない)、叩きにせよざっくりした印象論加工のみ。

わざとらしい持ち上げ。
前作を叩いてから本作を持ち上げる記事も少ない。

誠意あるNHK大阪が戻ってきたですね。

本作チームは、前祝いしてもいいんじゃないですかね。
今回は、当たるで!

とりあえず北村一輝さん。
あと十年か二十年は、関西のええおっちゃん枠の横綱になれるパフォーマンスです。

カスだと毎朝書いていますが、このジョーカスを見ないと朝が来ない気がするほど好きになってしまいました。

朝ドラにはダメなおっさんがつきものとはいわれておりますが、今回のジョーはここ数年最大の収穫かもしれない。

最低の男は出てくる。
けれども、愛嬌と関西弁と酒癖の悪さが一体化して、憎めない。そんな昭和のおっちゃんは難易度高いと思います。

昭和のおっちゃんの価値観を今に持ち込むと、ただのあくどいだけに思える。だから丸めたくなるでしょう。そこはわかる。

それに高度経済成長神話とも違うんですよね。

大黒柱で、絶対に口答えできないというもんでもない。
昭和父暴虐の話はたくさんあるけれども。そう単純な話だけでもない。

そういうリアリティのあるおっちゃん像に、本作は迫るようでワクワクしています。

芸術論も出て来ましたね。

宗一郎からは、作り手の心のことを言ってきた。
慶乃川の、金にならんという話もおもしろい。それでも、彼は精神的な充足感は得ているわけです。

ここ数年、NHK大阪は京阪神企業ものが定番になっておりました。
堅いし、宣伝タイアップできるし、成功を追体験したい視聴者層にとっては鉄板ではあったと思います。

そこを敢えて捨てて、わかりやすい結果でなくて、自分たちの作りたいものを心をこめて作る。
そういうものを感じるのです。

関西という土を掘り、人が魂をこめてこねて、情熱の炎で焼き上げる――そんな作品になりそうで、毎日楽しみです!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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