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 北朝鮮が再び危ういミサイル発射を繰り返している。彼らが一歩ずつ大胆にふるまう余地を与えているのは、日本、米国、韓国の間の思惑のズレや摩擦であることを認識すべきだ。

 きのう撃たれたミサイルは、島根県沖の日本の排他的経済水域内に落ちた。韓国政府は、潜水艦から発射するように設計された弾道ミサイル(SLBM)の試射だった可能性がある、とみている。

 5月以降の各種の発射は、これが11回目となる。米韓の軍事演習への反発など、その都度、意図が込められているとみられるが、弾道ミサイルの発射を禁じた国連安保理決議を無視する姿勢は一貫している。厳しく批判されるべきだ。

 ところが結果として北朝鮮を抑制するどころか、助長しているのがトランプ米大統領である。「我々は短距離ミサイルは制限していない」と語るなど、決議違反を公然と黙認する姿勢を示してきた。

 北朝鮮は少しずつ各種のミサイルの能力向上を図りつつ、トランプ政権の出方を試しているのだろう。かねてSLBM搭載用の潜水艦の建造をすすめているとの指摘もある。射程の長いミサイルだけが米国の脅威とも言えなくなってきた。

 米国は、長く実現していない北朝鮮との実務協議をこの週末に開く予定だ。具体的な内容に欠けたこれまでの米朝首脳会談の教訓を踏まえ、非核化の定義などをしっかり北朝鮮側に認識させねばなるまい。

 同時に度重なるミサイル発射についても強く抗議し、止めさせる必要がある。日韓両政府は、射程を問わず、弾道ミサイルを許さない姿勢をとるようトランプ氏に求めるのが筋だ。

 だが実際は日韓ともに消極的だ。米政権への遠慮や、北朝鮮への接近をねらう打算などが絡んでいるようだが、近隣の懸念を置き去りにした米朝協議になっては困る。安保上の問題は明確に釘を刺しておくべきだ。

 一方、日韓両政府間の対立は依然、出口が見えない。韓国側は日本との軍事情報包括保護協定GSOMIAジーソミア〉)の破棄を通告しており、このままでは来月下旬に失効する。

 ところが韓国国防省はきのうの発射後、協定に基づく情報の共有を即座に日本側に求めた。歴史問題を経済や安保の分野にまで広げると、双方の国益を損なうことが改めて浮き彫りになった例といえるだろう。

 いま問われているのは、北朝鮮の暴走を止め、長期的に核のない朝鮮半島を築くための日米韓の結束である。3国の政府はただちに足並みをそろえる調整のための協議を急ぐべきだ。

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