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【社説】

ウクライナ疑惑 トランプ氏は説明を

 政敵追い落としのため外国に協力を求めたと見られかねない言動だ。トランプ米大統領が民主党のバイデン前副大統領絡みの疑惑捜査をウクライナ大統領に要請した。トランプ氏に説明を求める。

 ホワイトハウスが公表した両国首脳の電話会談記録によれば、来年の大統領選で対抗馬になり得るバイデン氏とその息子に関して捜査するよう、トランプ氏はウクライナ大統領に求めた。

 トランプ氏がウクライナへの軍事支援を凍結する構えを見せて圧力をかけた、と指摘されていたが、会談記録にはそれに触れたやりとりはない。ただ、会談記録は一語一句をおこした発言録ではなく、事務方のメモと記憶に基づく。

 複数の政府関係者から会談内容の情報を得た情報機関関係者は、トランプ氏が職権を使って外国に大統領選への介入を求めたとして、監察官に内部告発した。監察官はその内容が議会に報告すべき「緊急案件」と判断した。

 ところが政権は議会に報告しなかった。そればかりか会談の全文記録を通常の文書管理システムから、機密保持が格段に厳しいシステムに移したという。

 トランプ氏の弾劾に動きだした民主党はこれを「隠蔽(いんぺい)工作だ」と非難する。弾劾問題は泥仕合になるのは確実だ。

 バイデン氏の息子が役員をしていたウクライナのガス会社に関する捜査を要請したトランプ氏の動機は、私利を離れたものだったのだろうか。そうであっても内部告発者が問題視したように、不正行為と受け取られても仕方がない。

 トランプ氏自身が昨年出した大統領令で、外国による選挙介入は「米国の安全保障と外交政策に計り知れない脅威になる」と指摘している。この危機意識を失ってはならない。

 ウクライナ絡みの疑惑は、二〇一六年の前回大統領選をめぐるロシア疑惑を呼び起こさせる。トランプ氏と争ったクリントン氏に不利になるよう選挙介入したロシアと、トランプ陣営が共謀してはいなかったか、というのが疑惑の焦点の一つだった。

 二年近くかけた特別検察官による捜査は、トランプ陣営もロシアの介入が有利に働くと期待したと認定しながらも、共謀の事実を立証できなかった。トランプ氏は事情聴取に応じず、捜査に協力的ではなかった。

 だが、今度は自ら進んで疑いを晴らさなくてはならない。

 

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