【日経新聞1面】SBGファンドの巨大マネーの威力、陰への不安も【本日の材料と銘柄】
SBGファンドの巨大マネーの威力、陰への不安も
ソフトバンクG 、新興AIのむ巨大マネー22兆円、市場の3割、「投資ありき」ゆがみも
投資会社に転身したソフトバンクグループ
<9984>が「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の第2号を設立し、近く投資を始める。課題だった米通信大手スプリントの合併にメドをつけ、投資会社として日本企業が出遅れがちなデジタル革命の先端を走る。ベンチャー投資市場の3割弱に相当する22兆円が世界のAI企業を引き寄せる一方、会長兼社長の孫正義が主導する矢継ぎ早の決定には「投資ありき」の危うさも見え隠れする。
孫を突き動かすのはネット革命時に米アマゾンに投資できなかった後悔。3割の株取得を巡って1億ドルを提案したが創業者ジェフ・ベゾスの希望に3000万ドル届かず、今の時価総額で30兆円を逃した。今回のAI革命では企業を「総取りする」という思いがある。
ファンドの投資が企業の成長を加速し、高い運用利回りを生んでいる。投資先73社のうち35社の評価額は、出資前比の上昇率が中央値で2.9倍。1号ファンドで普通株に出資した投資家の利回りは3月時点で年率45%とファンド平均10~20%を大きく上回る。利益のうち売却した現金分は約3割、残りは含み益。出資者への分配は、1号ファンドでは出資金の4割を占める優先株に年7%と、約30億ドルの配当も必要で、運用を終える29年まで継続的に現金化する実現益でも高い利回りを出さなければならない。
ファンドの武器は規模で、1号と2号の合計22兆円は世界のベンチャーキャピタルの運用資産8030億ドルの3割弱に相当、投資対象とするAIベンチャーの18年の資金調達額200億ドルの約10年分になる。従来は上場で得る大きな資金を上場前に供給し、企業の成長の果実を得る。しかし、大きさゆえの「死角」もあって、投資家の「自己評価」で出資ごとに価値が上がって行くことで、ファンドの投資そのものが企業価値を高めている面がある。
2000年までのITバブルはIT革命の高揚感と低金利政策が連動し、破裂するとアマゾン株でさえ20分の1に下がり、企業間電子商取引の企業を数多く傘下に収めた投資会社インターネット・キャピタル・グループ株も212ドルから1ドル以下になった。技術革新と金融緩和が重なる環境は当時と似ている。今回は上場株ではなく未上場株にマネーが流れ込み、SBGはその先頭を行く。AIへの期待が揺らげばマネーの磁力は消えかねない。
SBGの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は第1号が好調に収益を生み出し、第2号の運用開始も迫っている。合わせて22兆円の資金がAI企業向けを中心に大胆に供給されることで、事業化スピードが加速され投資先企業の急成長に繋がるなどの効果は大きいが、一方でバブル破裂の危険性を孕んでいるとも言えそうだ。
<9984>SBG{実体的には投資会社、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを運営}
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※この記事は、無料のスマートフォンアプリ「FISCO」に先行配信された記事を転載したものです。
《ST》