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  • 2019/10/01

IPアドレスに“国の情報はない”のに、なぜ「海外IPはダメ」とアク禁になるのか (2/2)

IPアドレスを移転させることは可能

 IPアドレスの枯渇が問題になったとき、払い出したIPアドレスの移転の必要性とその方法が議論された。

 インターネットに初期からかかわっている企業(たとえばIBMなどは、インターネット以前の研究と貢献、企業規模から、潤沢なIPv4アドレス空間を持つ)や、吸収合併により膨大なアドレス空間を持つ企業が、使いきれないIPアドレスを持っている不公平を解消する手段として、双方の合意の上でアドレスを融通しあえる仕組みが作られた。

 そして、アドレス空間の移転は、国やリージョンを超えて移転させることも可能だ。

 先ほど「海外のIPアドレスが他国で利用されることはない」と述べたが、これは表現が少々正確ではない。IPアドレス(IPv4、IPv6問わず)の体系には、そもそもエリアや国を表す情報は一切含まれていない。電話番号は国コード、市外局番、市内局番と、番号体系にエリアの属性が組み込まれているが、IPアドレスにはそのような機能や構造はない。

 以前は「アドレスクラス」という、割り振りのためのアドレス空間ブロックの考え方があったが、これも便宜上の分割単位であって、IPアドレスが国や所有企業を特定したり、住所や位置情報を示唆できるような情報は持っていない。

 IPアドレスで国を判別できているのは、IPアドレスの割り振りがIANAからRIR、そして国ごとのNIC、ナショナルレジストラと呼ばれる組織ごとに段階的な割り振りが行われているからだ。IANAは、どのアドレスがどの国に割り振られているかの情報をデータベース化している。

国内のIPアドレスが海外のものと判定される理由

 以上の前提を踏まえ、ネット上のゲームやサービスが、国内からのアクセスにもかかわらず、海外のIPアドレスとして遮断される状況を考えてみたい。

 実際に報告されている例では、通信事業者やサービスプロバイダーが、契約者にグローバルIPアドレスを割り当てるサービスを提供している場合だ。回線契約を切り替えたり、あるいは普通に使っていると、突然、特定のWebサイトにつながらなくなる。そのWebサイトに問い合わせると、「割り当てられるIPアドレスが海外のアドレスとして登録されているもの」という理由でフィルター等によってはじかれていることが判明する。

 しかし説明したように、他国に割り振られたIPアドレスを別の国が勝手に使うことはできない。もし、自国の通信事業者やプロバイダーが使っているIPアドレスが「他国のIPアドレスに見える」と言うなら、そのWebサービスの判断が間違っている可能性が高い。IANAが公開しているデータベースを参照していなかったり、移転情報が更新されていないといった可能性が考えられる。

 実は、IANAのデータベースとは、世界に割り振られたIPアドレスの総覧のようなもので、国との対応だけを示すものではない。そのため、IPアドレスで国を判定する場合、IANAの情報からRIRや国の情報を抜き出した別の一覧を作る必要がある。そして、この一覧表は、IPアドレスの移転情報を適宜アップデートしてやらなければならない。

 ポータルサイトやゲームサイトの運営者は、国別のフィルタリングを実施しているなら、IPアドレスの移転についてなんらかのウォッチを行い、適時、フィルターの設定を更新する必要がある。GeoIP(MaxMind)、Geolocation TechnologyのようなIPアドレスの位置情報や国情報を提供している企業を利用してもよい。

 もちろん、海外からIPアドレスを移転してきたプロバイダーも、自社サービスのスムーズな運営を考えたら、外部に向けた情報発信を行ったほうが良いだろう。

 インターネットには、アドレスやポート番号などを管理するIANA、ドメイン名を管理するICANN、RFCによりプロトコルを採択するIETFといった枠組みは存在するが、明確な中央集中管理を行う組織が存在しない。プロトコル上の規定がない、IPアドレスと国の関係についての管理は、それぞれの事業者の責任だ。

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