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【社会】

東電旧経営陣無罪で控訴 指定弁護士「正義に反する」

 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(79)ら旧経営陣三人について、検察官役の指定弁護士は三十日、三人を無罪とした十九日の東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。原発事故の刑事責任が経営トップらにあるのか、あらためて審理される。 

 指定弁護士は「地裁判決は巨大津波襲来を示す具体的な試算結果などを全く無視した。到底納得できない。このまま確定させることは著しく正義に反する」とのコメントを出した。

 ほかに強制起訴されたのは、原発の安全対策の実質的責任者だった武藤栄元副社長(69)と、その上司だった武黒(たけくろ)一郎元副社長(73)。指定弁護士は、いずれも禁錮五年を求刑し、三人は無罪を訴えていた。

 一審の争点は、海抜一〇メートルの原発敷地を超える津波を予見し、事故を防げたか。東電は事故前、国の地震予測「長期評価」に基づくと最大一五・七メートルの津波が原発を襲うとの試算を得ており、指定弁護士は「三人は大津波を予見できた」と主張した。

 地裁判決は、長期評価の信頼性を否定し、「事故を防ぐには原発の運転を止めるしかなかった。三人には運転停止義務を課すほどの予見可能性はなかった」と判断した。三人は、大津波を予見できたのに対策を怠り、原発事故で避難を余儀なくされた双葉病院(福島県大熊町)の入院患者ら四十四人を死亡させるなどしたとして強制起訴された。

 

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