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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

15章 運命を切り開く者(仮)

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閑話 8 最強タッグ始動

皆様ご無沙汰しております。

聖者無双の更新は三月からなかったので、約半年間も休載していました。

この半年間で聖者無双三巻が発売され、コミカライズの一巻が発売され、有り難いことに重版までしていただきました。

本格的な再開まではもう少し掛かってしまうと思いますが、もう少々お待ちいただければ幸いです。


 ルシエルが聖都へと転移したことを確認したブロドとライオネルは、一瞬視線を合わせてから再び視線を瘴気を纏った騎士団へと移す。

 そしてルシエルが発動した浄化波を切った指揮官の騎士を筆頭に、軽く百を越える騎士団と今にも戦いが始まろうとする段階で、ブロドとライオネルは笑みを浮かべながらルシエルのことを話し始めた。


「ようやく行ったか。まさかルシエルにあそこまで心配される日が来るとはな……」 

「師としては複雑か?」

「ああ、それもある……あるんだが、どうもルシエルは俺が、俺達が弱くなったままのイメージが定着しているように感じる。それは戦鬼、お前も思っていることだろ? まるで護衛対象に護衛されている気分だったんじゃないか?」 

 ブロドはルシエルから信頼されていないとは思わなかったが、それでも一介の武人として、しかも弟子に心配されるということはあまり面白いものではなかった。

 ただそれはブロドに限ったことではない。ライオネルもまたルシエルは無意識なのだろうが、守られる対象に思われていることに憤りを感じていた。

 ただその理由も理解はしていた。


「確かに違いないが、ルシエル様の中で我らは一度弱くなってしまった。そして一人だけ一気にレベルが上がり強くなったことで、きっと昔よりも我らの能力が低くなったままに感じているのだろう」

「ルシエルは急にレベルが上り、戦闘能力が一気に開花して強くなったから、俺達の能力が強化させてもそこまで強くなっていないと思っているんだろうな」

 ブロドはルシエルに心配されたことが面白くなかったが、確かに昔は武術を教るために徹底的に(しご)いたし、あの時のルシエルとの差を考えればそう考えてもおかしくはないと自分を納得させる。

 昔はルシエルがどう足掻いたとしても負けることは元より攻撃が掠ることすらなかった。

 だが今がブロドとライオネルの全盛期の強さになっているのことをこのままルシエルに勘違いさせたままというのもまた面白くはなかった。

 その顔を見てライオネルはブロドを宥めることにした。


「仕方あるまい。未だ目立った実績も作っていないし、迷宮でのレベル上げはルシエル様が手伝ってくださっていたのだから」

「だが途中から本気出すのは止めていただろ?」

 二人のパワーレベリングにルシエルが手を貸し、レベルが上昇したことで順調にステータスは伸びていった。

 さらに二人は模擬戦を繰り返したことで、そのレベルが上がりステータスが上昇した自分の身体を十全に扱えるようになり、実は早い段階で全盛期の身体能力は戻っていた。

 しかしそのことに気付かないルシエルは二人のレベリングするために高レベルの魔物を出現させていた。そして途中からブロドとライオネルは魔物を一撃で倒さないように手加減を施したのだ。

 それに模擬戦も途中から相手の命を散らしてしまわないように急所を狙ったり、首を刈ったりすることはなかったのだ。


「魔物は全員のレベルを上げるために瞬殺することは止めていたし、ルシエル様を相手に本気を出す訳にもいかなかったから仕方がないだろう」

「まぁいいがな。これだけの瘴気を纏った騎士達を倒せば、もう心配されることもなくなるな。それで戦鬼はあの軍団をどう見る?」

「魔族化した訳ではなく、邪神に魅入せられて闇堕ちた者達だろう。しかしまさか己の力を増幅させる為に人の身で瘴気を纏うとは……なんと愚かな者達な」

「ああ、そうだな。もはや破壊衝動しかない戦闘狂(バーサカー)だ。しかし数は多いぞ?」

 二人の視線の先にはバラバラにこちらへと近づいてくるが、その数は目算で百を軽く超えていたが、既にライオネルの頭には騎士団ではなく、騎士団が出てきた城へと向けられていた。



「あれで理性を保ってているのであればまだ楽しめただろうが……。統率も取れていないし一気に終わらせるか。騎士達が出てきた城の中を探索した方が良いだろうしな」

「そうか……。今回の件で俺達に心配いらないことをルシエルに教えるにはちょうどいい相手になってほしいものだ……」

「そうだな。だがこんな伝説級の武具まで装備しているんだから、圧倒的な勝利を見せつける以外にそうなるのは難しいぞ。我らだけで邪神を倒せるならこんなことも関係はないんだが……それは望み過ぎか」

「ああ」

「はぁ~まぁいい。早速だが私は左半分とあの指揮官をもらうぞ」

「待て。左半分は任せてもいいが、あの指揮官はどう考えても俺の獲物だろ? 第一俺の方が右半分を直ぐに倒せるからな。まさか待っていなくてもいいんだろう?」

「はっはっは。いつから冗談が言えるようになったのだ。一人一人を倒していくよりも、一気に薙ぎ払うことが出来る私の方が左半分を殲滅するのは早いぞ」

「はっ、大した自信だな。それならあの指揮官は早い者勝ちでいいんだな?」

「無論だ」

「なら先制させてもらうぞ」

 ブロドはそう告げた直後、ライオネルの前から姿を掻き消し、ルシエルが張った結界の内側ギリギリのところまで移動すると斬撃を飛ばしていく。

 その攻撃に数名の瘴気を纏った騎士は躱抵抗するが、大半の騎士があっさりと飛ぶ斬撃に切り裂かれていく。

 その様子を後ろからライオネルは見ていた。


 ――張り切っているが全力ではないのか。それなら私は本気でいくか。

 ライオネルはそう思ったところで魔法袋から龍の牙から造られた大剣を取り出し、大剣に魔力を込めていく。

 そして狙いを定めて大剣に込めた魔力を解き放つ。

「瘴気ごと燃え尽きろ」

 ライオネルがそう口にして大剣を水平に振り切ると、凄まじい速さで一つの火の玉が瘴気を纏った騎士団へ向かって飛んでいった。

 ただその火の玉はどこからどう見ても速さだけが異常なだけな、一般の魔法士が使う火の玉程度の大きさしかなかった。

 瘴気を纏った騎士団にもそう見えたに違いない。


 しかしライオネルが炎龍の牙で造られた大剣を魔力を込めて振り切った火の玉が普通な訳がなく、ライオネルから離れていくにつれ、その形状を変化させていく。

 徐々に球体が潰れるように円盤状になって拡がっていき、高速で回転しながら肥大化していくところで、騎士団へ到達すると、炎の円盤が少し掠っただけで騎士達が燃えていく。

 しかしこの攻撃の本当に怖いのはここからだった。

 円盤状に拡がった炎が一瞬にして上空へ昇ると、それから火の雨が降り注いだのだ。

 しかもその火の雨一つ一つに意志があるように騎士達へ向かって降り注ぎ、ライオネルが引き受けた左半分の騎士団は一瞬にして殲滅されることになった。

 ――さて残すは指揮官だけになったが、今の攻撃を受けて立っているってことは少しばかり厄介な相手かもしれないな。だがやることは変わらない。

 気を引き締めたライオネルが大剣を肩に担いで指揮官へ走ろうとした時だった。


 一陣の風が吹くと同時にライオネルが燃やしていた騎士達が突如現れた竜巻に吸い込まれていく。そして竜巻が消えると瘴気を纏った騎士達は高く積み上げられていた。

 ただ竜巻に飲み込まれたはずなのに指揮官だけは、驚くことにライオネルの攻撃を受けた時と同様、まるで何事もなかったかのように結界へと迫っている。

 その指揮官へ向けて斬撃を飛ばしながら後退ブロドはライオネルの元へ移動した。


「戦鬼よ、火の雨を降らせたら街中が燃えてしまうぞ。あれは少しやり過ぎだろう」

「この拓けた場所だけだ。それに燃やし尽くしても構わないだろう。死体を放置すれば疫病になる恐れもあるからな。だが旋風こそ草木まで吸い込むような竜巻を放てば景観が崩れると思うが?」

「まぁどっちもどっちか。それであれをどう見る?」

 ライオネルの言葉を流しながら、ブロドはルシエルの浄化波を斬った指揮官へ視線を向けた。


「正直なところは分からないが、あれは異様過ぎる。私の炎で燃えたのにも関わらず動いているし、旋風の竜巻に切り刻まれたはずだが元気なままルシエル様の張った結界を破壊しに来ている」

「アンデッドか? それとも魔人か、はたまた邪神の依り代になっているなんてこともありそうだが……」

「まぁ言えるのはあれぐらい倒せなければ、邪神と戦うことは夢のまた夢ということだろうな」

「仕方ない。戦鬼、ここは共闘するぞ」

「ここで我を張って戦力外になる訳にはいかないからな……。ルシエル様に発動していただいた聖域鎧の効果が切れるまでに倒し切る」

「それじゃあ援護を……チッ」

 ブロドが舌打ちしたのは先程ライオネルが魔力を大剣に注いで放ったように、指揮官が剣に瘴気を注いでルシエルが発動させた聖域結界を切り裂こうとしたからだった。

 ブロドはその場から指揮官へ向けて斬撃を飛ばしながら、指揮官の首を刈に動き、ライオネルもまた旋風を援護するために指揮官へ向けて走り出した。


 こうして思わぬ形でブランジュでの戦闘は激化していくことになる。 








お読みいただきありがとうございます。

久しぶりにホームにログインしたら、なろうのシステムが変わっていることにビックリしました。


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