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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

15章 運命を切り開く者(仮)

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349 二つの魔法陣

大変お待たせしてすみません。

 光が止むとそこは見覚えのある冒険者ギルド内のとある一室だった。

 どうやらちゃんと転移することが出来たらしい。

 冒険者ギルドは全て同じ作りだけど、これだけの瘴気が発生しているのだから公国ブランジュ内であろうことはまず間違いないだろう。

 それに転移して直ぐに嫌な感じがするのは邪神が近くにいるってことなのかもしれない。

 邪神の存在を捉えることが出来ないだけに不気味だ。

 俺は師匠とライオネルにオーラコートを発動して、現状とこれからのことを話すことにした。


「どうやら無事に転移は出来たみたいですね。凄い瘴気が見えたのでオーラコートを発動しました。一応確認ですが、師匠とライオネルには瘴気が見えますか?

「瘴気は見えないな……」

「ただ少しだけですが、まるで迷宮内にいるような感覚がしますね」

 やっぱり見えないか……正直この俺にだけしか見えない瘴気の影響がどれほどあるのかが分からないから怖いところではあるんだよな……。

 しかしライオネル……迷宮内いるような感覚なんて言葉にするのは止めてほしい。


 まぁその心配はないんだけど。

 瘴気が見えるようになってから分かったことだけど、実は迷宮自体は瘴気や魔力を吸収するだけで、直に発生させることはないのだ。

 確かに迷宮でも瘴気を見ることはあったけど、それは魔物が出現した時、倒した時、そして魔物本体が発するかのいずれかだけなのだ。

 なので迷宮が瘴気と魔力が混ざりあって出来ているというのは本当だけど、瘴気が漂っているというのは勘違いなのだ。

 だからまさかこの建物がこれから迷宮になるなんてことは……考えないようにしよう。

 結局のところ暗黒大陸を繋がれてしまったら、被害が多くなるだけだしな。


「しかし気になるのは、ギルド内に人の気配が全くないことだな」

 師匠の言葉通り、ギルド内に気配も魔力も捉えることは出来ない。

 但しそれはギルド内に限ってのことだけど……。


「そうですね。ただ人か魔族なのかは分かりませんが、ある方向に凄い数の魔力が集まっています。外に出て見ないと詳しいことは分かりませんけど、闇属性魔法による洗脳でもしているのかもしれません」

 もしくは扇動されているかだけど、まぁ冒険者ギルドの職員までいなくなっているんだから、間違いなく闇属性魔法による洗脳だろう。


「ルシエル様、これなら浄化波(ピュリフィケイションウェーブ)を人がいない方向へ向けて発動し、瘴気を取り除くことが可能なのでは?」

 確かにそうなのだけど、それだと奇襲することはもちろん様子見をすることが出来ないんだよな。

 それに浄化したとしても発生源を潰さなければその効果は薄い。


「出来る……けど、たぶん人を集めている理由は暗黒大陸を繋ぐための生贄にするとか、魔族化させるとかの碌でもないことだろう」

 自分で言っておいてあれだけど、それが一番ありそうなんだよな。

 召喚には代償が必要だから。

 それに邪神が本気を出したら、瘴気が一瞬で溢れてしまいそうだし……。


「街を浄化することが出来たとしても、洗脳を解く方が優先順位が高いってことだな?」

「はい。もちろん状況を見て変更することはあると思いますけどね。巻き込んでしまう可能性はありますが、やはり邪神討伐を優先にしましょう」

 まさか街中の人々を洗脳しているなんて思いもしなかったな……。

 斥候をお願いしていた商人や冒険者達からも、一切そんな報告がなかったから仕方ないけど……。


「それにしてもまさか街中の人間を集めるとは……」

「まぁ優先順位として一番高いのは召喚魔法陣の消滅。次に邪神討伐なのは変わらないです。ただ極力浄化波(ピュリフィケイションウェーブ)はあまり使いたくないです。もちろん危なくなったら迷わず聖域結界(サンクチュアリバリア)も発動しますが……」

「何も知らない一般人まで魔族化している可能性があるから、極力使いたくないんだろ?」

「はい」

 帝国では助けられなかった命が沢山あったけど、今なら知らないで魔族化している人達を元に戻すことが出来る。

 理不尽な運命に翻弄されて命を奪われることは一人でも少なくしたいからな。 


「ちゃんと腹は括っているんだろ?」

「はい。戦闘になったら止むを得ないと思います……。それでもさすがに邪神戦の後を考えると、被害は出来るだけ抑えたいですからね」

「フッ しかし始まる前から終わった後のことを考えるか……。だが必要なことだな」

「確かに。私も早く子供と会いたいですから、全身全霊を賭してこの戦いに勝利し、さっさと旋風に連勝しなくては」

「そんな意地を張らないでこの一戦の前にイエニスへ送ってもらえばいいだろ」

 これはさすがに師匠の意見に同意する。

 ただこれまで何度も機会はあったけど、頑なに拒否しているからな。

 ライオネルにとって譲れない思いがあるのだから仕方ないか……。


「旋風、その間にルシエル様と邪神を討伐する目論みだろ。そんなことはさせん」

「たまには弟子との共闘も面白そうだからな」

「やはりさっさとこの戦いを終わらせてからだ。ルシエル様、さっさと行きましょう」

 ニヤニヤとする師匠に青筋を立てながらライオネルが扉へ向かう。

 この二人のやりとりはいつもと変わらないな……それがとても心強い。 


「分かった。無理は……してもらうことになるけど、ライオネルも師匠もよろしくお願いします」

「任せろ(任せてください)」

 それからギルドを出るまで、いや、出てからも人影を見ることは一切なかった。

 しかしギルドを出て直ぐに、そんな些細なことは頭の片隅に追いやられてしまった。

 何故ならまだ未完成のようだけど、赤黒い空に巨大な魔法陣が浮かんでいるのを捉えたからだ。


「師匠、ライオネル……あの魔法陣は見えますか?」

「ああ……それと空が黒紫なんて不気味な色をしているのもな」

 どうやら見ているらしい。

 ただ間違いなく言えるのは、魔法陣が精霊女王の言っていた暗黒大陸を繋ぐ魔法陣だってことだ。


「ルシエル様、この陽炎のように地面から揺らめくのは一体?」

「瘴気だよ。しかし瘴気まで見えているのか……」

 あまり濃度は変わっていないけど、瘴気が地面から溢れ出ているし、もしかしたら暗黒大陸に近い状態なのかもしれないな。

 魔族や魔物が強化される……いや、本来の状態で動けるってことになるのか。


「ルシエル、あまり迷うな。魔法陣が見える場所にある以上、消滅させることが先決なんだろ?」

「はい。あの魔法陣はまだ完成していないみたいですし、魔法陣を聖域結界(サンクチュアリバリア)で封じ込めたいと思います」

「出来るのか?」

「やらなければいけないですからね」

「ルシエル様、人々が集められている城はどうしてますか?」

 そこが問題なんだよな……。


「まずは人々が集まっているあの城の上空へ転移して状況確認後に魔法陣を聖域結界(サンクチュアリバリア)で包み込みます。そして人々を聖龍に飲み込ませて保護します。邪神や魔族が襲ってきたら任せます」

 二人が同時に頷き、武器を魔法袋から取り出したのを確認して、精霊魔法を応用した風属性魔法の浮遊魔法を付与してから、城の上空へと転移するとそこには驚くべき光景が広がっていた。

 なんと城へと続く道や庭の全域に上空の魔法陣と同じような赤黒い魔法陣が展開されていのだ。

 そして集められていたほぼ全ての人々がその魔法陣を埋め尽くすよう倒れていた。

お読みいただきありがとう御座います。

聖者無双のコミカライズ二話がアップされていますので、良かったらご覧くださいませ。

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