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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

14章 転生龍と精霊からの依頼

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345 ランダムボス再び

 イニエスの屋敷へ無事に転移した後、師匠達にネルダールで起こったことを説明すると、二つ返事で俺の考えに賛同してくれた。

 まぁ賛同してくれたというより、元々レベル上げすることは計画にあったのが早まっただけという認識だった方が正しいけど……。


「それでルシエル、面子はどうするんだ? いきなり全員を連れてはいけないだろう?」

「はい。だからまずは防衛能力のある人を優先的に連れて行こうと考えています」

 これか俺の悩んで出した結論だった。

 師匠やライオネルのような万夫不当の英傑はもちろん必要だ。

 だけど個の力を持っている人達は遊撃に徹し、拠点を防衛する能力が高い人達に任せた方が効率は良い。


「防衛能力……それはあのゴーレムを操る嬢ちゃんのことか?」

「はい。まぁ技術開発部には作ってもらいたい魔道具もあるので、最初に連れて行って一気にレベルを上げます。そしてステータスの限界値を大幅に更新させたら、今日中にイエニスへ帰還させますけどね」

「最初っていうことは何度も行くんだな?」

「はい。あ、言っておきますが、師匠やライオネルは邪神と戦う時の戦力として計算していますから、謀略の迷宮で過ごしていただきますよ」

 それこそ師匠達が一緒に戦ってくれようとしなければ、邪神に挑むような気概が生まれる筈もない。 


「当然だ。今度こそ倒してみせる」

「同じ相手に二度も遅れをとることは出来ません」

 本当にこの二人に任せておけば、邪神も倒してくれるかも知れないと期待してしまう。


「それは良かった。ただ師匠はともかく、ライオネルはこれから子供が産まれるてくるんだから、邪神と戦うことを強制するつもりはないよ。大事な拠点であるこのイエニスを守る役目構わないからな」

「お気遣いは無用です。一度失った命を救ってくれたのはルシエル様ですから、ルシエル様の為に尽力するのは当然のこと。それに今度もルシエル様が治してくれると信じていますから」

 ライオネルの忠義が重い……。

 まぁ今度は攻撃を喰らてもアンデッド化しないし、色々と作戦もあるから即死だけしなければいくらでも完全回復させる自信はある。


「即死だけは絶対にしないで欲しい。そうすれば必ず回復してみせる」

「はっ」

「じゃあ昼食を終えたら出発しましょうか」

「直ぐじゃないのかよ」

「腹が減って効率が悪くなるのだけは勘弁願いたいので」

「そうだな」

 こうして俺達が食事中、色々とルシエル商会の従業員達が動いてくれたおかげで、食事を終える頃には出発の段取りはすべて完了していた。

 それから謀略の迷宮へ行く者達を一階のホールへ集めた。


 師匠とライオネル、それからバザックが固定メンバーとして、技術開発部の面々とリディア、サプライズでイエニスの教諭をしているクレシアを呼んだ。

 サプライズになってしまったクレシアだけど、弓のスキルレベルが高いことに加え、子供達の未来を本気で守りたいと願っていたので、イエニスを守護する存在として抜擢したのだった。

 最初は迷宮へ行くことを怖がられてしまったけど、今回はパワーレベリングになることを丁寧に説明して、矢を射るだけの作業になること伝えると安堵した表情をして了承してくれた。 


 そして技術開発部はそれこそ頼んだ魔道具を制作していたけど、竜の谷へ行ったことで、レベルアップの恩恵を強く感じていたらしく、二つ返事で了承してくれた。 

 ただ竜の谷に続き、留守番となったケフィンが不満そうに見えたので、技術開発部の面々は夜にはイエニス(こちら)へ戻し、メンバーの入れ替えすることを伝えると、気持ちの整理がついたのか頭を下げてきた。

 そんなケフィンに対して、俺は重要な役目を頼むことにした。

「ケフィン、ケティ。二人にはとても重要な任務を与える。転生者達の監視を頼む。何かしたら実力行使で止めてくれ」

「はっ」

「承りましたニャ」

 その返事を受けて、俺達は謀略の迷宮へと転移するのだった。



 謀略の迷宮内へ直接転移することは出来なかったため、入り口からのスタートになった。

 スタートしてから少しして、何となくだけど違和感を覚えた俺は、魔法袋から以前潜った時に描いておいた迷宮内の地図を取り出してみた。

 すると迷宮内の構造が変化していたことに気付いた。


「師匠、構造が変わっているので以前の地図はもう役に立ちません。もしかすると主部屋のレベルに応じて魔物が変わる仕組みも変わっている可能性があるかもしれません」

「な~に、そうなったらそうなったで龍や精霊に協力してもらえばいいさ」

 師匠はかなり落ち着いているようだった。


「協力ですか?」

「ああ。もちろん最良はここの主部屋に出る魔物が開いた者のレベルに応じた魔物が出ることだ。何度でも戦えるからな。だが、もしそれが叶わないのであれば、本気でレベルを上げるために暗黒大陸へこちらから行けるようにしてもらうんだ」

 師匠の顔はいつになく真剣で、冗談で言っている訳ではなさそうだった。

 どうしよう短期間で師匠の常識を壊してきたから、師匠の思考回路は完全に壊れてしまったんだろうか?

 こちらから暗黒大陸へ出向くとか、戦闘狂の発想でしかない。

 ……師匠はまぁ戦闘狂だけど。


「……師匠、さすがにそれはないです。わざわざレインスター卿が封印されたのには、それなりに理由があってのことだと思いますし」

「レインスター卿っていっても、過去の英雄の功績は捏造されたものが多いんだぞ。まぁ冒険者としてもかなりの実績を残した記録があるが」

 俺はその本人に鍛えてもらっているから、次元の違いを知っている……とはさすがに言えないけど。


「それについては精霊達や龍神達に聞いているから知っているんです。レインスター卿はあの邪神を一人で退け、その時に世界樹を切り倒してしまったらしいです」

「はぁ~、一度でいいから手合わせしたかったな」

 もしかして転生龍達との修行中、師匠の頭から常識というネジが二、三本飛んでいってしまったんだろうか? 俺が困惑していると狼系の魔物を倒したライオネルが話し掛けてきた。


「ルシエル様、先程の暗黒大陸へ行かれる際には私も同行致します」

 きっとまだまだ暗黒大陸へ修行へ行きたい者達はいるんだろうな

「俺はそうならないことを祈るよ」


 そんな会話をしながら、罠を探しては解除して進み、ようやくボス部屋へと到着した。

「じゃあ、俺が開けますから、皆はしっかりと戦闘準備をお願いします」

 俺は皆の準備が済んだことを確認して、扉を開いた。

 そして開いて直ぐに確信した。

 豪運と覇運のどちらも最大限にその真価を発揮していることを。


 ランダムボスで登場したのは、身体から瘴気を垂れ流す超巨大なコウモリだった。

 あの魔物がとても強い部類に入ることは間違いなさそうだった。

 レベル差を考えれば皆委縮してもしょうがないかもしれないと思い、すかさず浄化波を発動させた。


 そして皆の状況を確認しようとして超巨大コウモリから目を切ろうとしたら、既に皆の攻撃が始まっていた。

 まず師匠とライオネルは斬撃を放ちコウモリの左右の羽が切れ、リディアが補助して威力を上げたクレシアの放った矢が左目を突き刺さり、リシアンが青白く光る植物を操作して超巨大コウモリを縛ると、ポーラとドランの合作ゴーレムが頭から突っ込んでいった。 

 最後に少し遅れてバザックが四属性槍で攻撃を与え、土埃りが舞った。


「皆レベル差があっても委縮したりしませんでしたね。これなら直ぐにレベルを上げられそうです」

 俺は皆の方へ振り返って告げた。


「おいルシエル、まだ終わっていないぞ」

「大丈夫ですよ」

 土埃が消えると超巨大コウモリは無詠唱で発動していた聖域結界の中で苦しそうにしていた。


「ルシエル、何で倒さずに結界へ閉じ込めたんだ?」

「そんな変な目で見なくても。別に全員の攻撃が通っているかの確認するためですよ。それとこれからも同じ魔物と戦うなら、少しでも安全に戦うための情報収集をしてくべきだと思いました。どうやら二重聖域結界を壊すことは出来ないみたいなので、良かったです」

 俺はそう告げて聖域円環を発動させた。


 すると超巨大コウモリはいつも通り青白い炎に焼かれていったけど、驚くことに滅せられる寸前、人の形をして魔石を残して消えていった。

 もしかして魔族だったのか?

 それとも吸血鬼だったのだろうか?

 そんなことを考えながら、皆のレベルが思惑通りに上がったことに安堵して、次の戦闘へ向けた準備をするように声を掛けるのだった。 



お読みいただきありがとうございます。

i349488
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