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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

14章 転生龍と精霊からの依頼

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334 友との約束

 龍神のお仕置きと師匠達との模擬戦も終えた俺は現在、魔石に時空間属性を付与しながら、邪神と各国の情報をどのように 探ろうか悩んでいた。

 するとフォレノワールがこちらへとやって来る。


「もう精霊女王とはいいの?」

「ええ。これからはいつでも話すことが出来るから。ねぇルシエル、母様を助けてくれて本当にありがとう」

 フォレノワールはとても嬉しそうで、相棒として純粋に力になれて良かったと思えた。


「フォレノワールの頼みだったからな。まぁ一番は俺が死にたくなかったからだけど」

「相変わらずルシエルらしいわね」

「俺は自分の命が一番大切だと思っているし、平穏な日々を過ごして、老衰することが目標だからな」

「えっ、もう無理だと思うけど?」

 相棒に笑顔で否定されると、本気で落ち込む。


 やっぱり新しい称号である世界を守護する者が原因か。

 でも邪神さえ退ければ、雲隠れすることだって可能になるはずだ。

 それに――。

「願ったり、思ったりするのは自由だろ?」

「まぁそうね。あ、ルシエル、一つお願いがあるんだけど、いいかしら?」

 どうやら色々察してくれたらしい。


「聞くだけ聞いてみて判断させて欲しい」

「他の上位精霊達も母様と会いたいと思っているはずなの。だから上位精霊のところに転移して欲しいの」

「それぐらいなら構わない。俺も各国の情報が欲しかったしな」

 あ、せっかく精霊がいる場所へ行くなら、ミディアを連れて行った方がいいか。

 そうすれば精霊契約が出来るだろうし、一石二鳥だ。


 それとどうせ各国を回って、知り合いから情報をもらえるようにした方がいいよな。

 そうなるとポーラとリシアンに魔通玉を複数用意してもらうと今後が楽になるか。

 あれこれと考えれば考えるだけ人員の移動も多くなるけど仕方ないか。

 せっかく得た能力を死蔵するなんてことは勿体ないし、面倒でも後々のことを考えると、少し無理はしておかないといけないところだからな。


「連れて行くのはフォレノワールや闇の精霊も一緒だよね?」

「もちろんと言いたいところだけど、魔力は大丈夫なの?」

 フォレノワールでも俺の魔力量は分からないか。


「魔力は以前よりもかなり多いから大丈夫だよ」

 魔力の自動回復量も上がっているしな。

 後でステータスを教えておくかな。


「それならお願いするわ」

「分かった。準備が出来たら呼ぶよ」

「ええ」

 フォレノワールは微笑みながら精霊女王の元へと戻っていく。


 するとそれを見計らっていたのか、龍神が酷い顔をしてこちらへとやって来た。

「どうしたんですか龍神様。凄い顔になってますけど」

「誰のせいだと思っているのだ。ああ呼吸をするだけで臭いし苦しいわ」

 怒っているはずだけど、顔色が悪くて怒っているようには見えないな。


「それは私のことを一切考えずに迷宮へ飛ばした方の責任ですね。それと三十分は経っているので、既に臭いはしないはずなんですが?」

「……龍化して巨大化していたからなのか、臭いが全く取れないのだ。どうにかして欲しい」

「一応それは私を迷宮へいきなり送った罰だと思っていただきたいんですけど」

「全面的に謝罪する。申し訳なかった」

「これは貸しですからね」

 一先ず頭を下げたところで溜飲を下げ、龍神の内部もイメージしながら浄化魔法をしようする。

 するとその効果は直ぐに現れた。

「おおっ! もう臭くないし、ちゃんと呼吸出来る」

 龍神のその姿を見て、本当に神々の嘆きとはよく言ったものだと、改めで物体Xに感心してしまった。

 まぁそれはさて置き、少し気になったことを聞くことにした。


「ところで龍神様を含めた転生龍達は、現在世界に干渉出来るのでしょうか?」

「いや出来ない。前にも言ったが、今いる我達は魂のような存在なのだ。世界に干渉するためには依代がなければ不可能なのだ」

「でも龍神様の依代はあるんですよね?」

「確かにあることはあるが、自由に空を飛ぶと、猛毒が世界を汚染してしまうから無理だな」

 何となく寂しそうに答えた。

 自由に飛行出来ないとは可哀想に思う。

 亜空間の中を泳ぐように飛ぶのと、景色を見ながら飛ぶのは別だろうしな。


「私が聖域結界を張っていればいけるのでは?」

「それはいい考えだ。もし百年後に他の転生龍達が転生したら、一度頼んでもいいか」

 色々縛りがある存在か。

 まだそれなら精霊の方が自由なのか、それとも精霊女王にも縛りがあるんだろうか。

 人の理とは違う理を持つ存在か。

 こうして話が出来ることで忘れそうになるけど、龍神達も苦労しているんだろうな。


「……百年後に生きていれば、やりますよ」

「高レベルの者は人族であっても長生きをするものだ。約束だぞ。それと不慣れな敬語はもう止めてよいぞ」

「分かった。まぁ龍神様にだけ敬語ってだいぶ違和感あるだろうしな」

「うむ」

 何だか友達みたいになっているけど、まぁそれはそれで面白いか。


「一度ここからは出て行く予定だけど、これからも修行に来ても平気ですか?」

「それはこちらから願い出たいことよ。転生までの間、転生龍達は暇で仕方ないからな」

「良かった。それならレベルを上げて身体能力の底上げが終わったら、また相手をしてあげて欲しいです」

 大型の生物で、即死だけはしないように気を使って攻撃してくれる相手は、早々見つけられるものではない。

 今後のことを考えるとこれがベストな選択だった。


「うむ。だが賢者ルシエルよ。お主だけは我ら転生龍が全員で相手をするぞ」

「……いきなり全員はきついので、徐々に増やす方式でお願いします」

「くっくっく。良いだろう。此度は良い刺激になったぞ」

 それから龍神に日が明けたら転移することを伝え、各々にも声を掛けて行った。

 するとナディアは、まだ龍の力をうまく引き出せないということで、ここに残ると言い出した。

 俺はそれを承認することにした。

 それ以外の全員は一度イエニスへと転移し、まずはケフィンとケティから情報収集することが決まった。


 そしてその情報を踏まえた報告を戦乙女聖騎士隊からは教皇様へ、ライオネルには新皇帝へ、師匠にはメラトニから冒険者ギルド本部へ報告をしてもらうことにした。


 次いでフォレノワールの頼みにリディアを連れて行き精霊巡りをした後、迷宮へと向かうことが決まり、宴会をすることになった――。



 そう。なったはずなのに、どうして俺は宴の楽し気な声が聞こえてくる中、迷宮で拾った魔石に属性魔法を付与しているんだろう。

「まぁ余計なことを宴会中に言ったからだろうけどさ……はぁ~」

 ことの始まりは魔通玉の使い勝手をどうにかしたいと、ドランに相談したからだった。



「ドラン、魔通玉だけど殆ど魔法袋にしまっているから、正直不便なんだ。何か持ち運べるような工夫をすることは出来ないかな?」

 この俺の発言を側で聞いていたポーラとリシアンの何かを刺激してしまったようで、土龍から使っていいと言われた開発室に連れ込まれてしまった。


 それから直ぐにブレスレット型の魔通玉の性能を持った魔道具を開発することになり、素材として竜の骨や竜輝石、それに伝説らしい鉱石を加工を使うことになった。

 そして加工する手伝いが思った以上の成果を上げてしまったらしく、現在は加工ではなく魔力属性を魔石に付与しているのだ。



「なぁもう今日はこれぐらいにして、龍達と楽しまないか?」

 魔力には余裕があるけど、せっかくの機会だから転生龍達と話したいと思っていたのだ。

「もうたらふく食べて飲んだではないか。龍達と話すのも貴重だが、今は先にするべきことがある」

「二時間は飲んで食べた。これはとても重要なこと」

「だからこそこれからはお仕事の時間なのですわ」

 宴会を中座して仕事させるなんてブラック企業だよ。

 しかし次のドランの言葉で、俺が折れることになる。


「これらの魔石が必要なのはルシエル様の従者達の装備を作り直すためなのだ。手を抜くことは一切出来ん」

「……そう言われたら何も言えないよ。はぁ~そうしたらどうすればいい?」

「では火属性と風属性の魔石が足らんから、直ぐに用意してくれ」

「ルシエル、竜輝石と時空間属性魔石の加工を手伝って欲しい」

「ルシエル様、聖属性と光属性の魔石が足りませんわ」

 次から次へと注文が入る。


「本当に今必要なことなんだよな? 新しい魔石が来たからストックしようとか、今なら俺が使えるとかは考えてないよな?」

「当たり前だ。ルシエル様の従者は数が多い。だから仕方ないのだ。これでもまだまだ足りんわ」

「そうか」 

 ポーラとリシアンは顔を背けたけど、ドランがそういうならそうなのだろう。


 俺は魔石に各魔力属性を付与していく。

 しかしまさか龍の谷へ来るまでと来てから、あれだけ大量の魔石を集めていたのに、たった十日で全て使い切っていたとはな。

 後であれだけの魔石を何に使用したのかちゃんと問いたださないといけないよな。

 しかし高純度の魔石を五十日ぶりに見た時の三人の狂喜した顔は、当分忘れられそうにないな。 

 そんなことを考えながら、ライオネル達が呼びに来るまで、ルシエル商会の生産技術部の手伝いは続いた。


 そして翌朝、転生龍達とナディアを残し、皆でイエニスへと集団転移を実行した。

お読みいただきありがとうございます。

龍神とは(物体X)飲み友です。

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