挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

14章 転生龍と精霊からの依頼

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
335/373

329 レベル上げ

(たと)え魔物に囲まれていたとしても、()()で対応すれば殲滅することは難しいことではない。

 そう思える日が訪れることになろうとは、レインスター卿から指導を受けるまで、これっぽちも考えたことがなかった。


 しかし、いくら少しばかり強くなったとはいえ、接近戦オンリーという縛りを設けた途端、戦闘の難易度は跳ね上がり、かなりのリスクを強いられることが分かった。


 もちろん龍魔法を使用すれば不用意な怪我は負わないとだろうけど、消費魔力を考えると長時間継続することが出来る身体強化の方が効率がいい。

「それにしても、何で試してもいないのに出来ると思ってしまったんだか」

 きっとレインスター卿だったら、華麗にノーリスクでこの状況を打破していただろうに。

 そんなことを思ってしまうぐらい集中力が切れてきたので、聖域結界と物体Xで作った安全エリアへと逃げ込んだ。


「はぁ、はぁ、このままではまた魔力が枯渇してしまう。そろそろちゃんとした対策を練らないと……」

 魔力を込めた武器で魔物を斬らなければ魔法属性の熟練度は上がらない。

 だからこそ敢えて接近戦にこだわって仕掛けてはいる。

 だけど熟練度鑑定してみると、時空間属性魔法の熟練度はレベルⅠになる半分の数値にも達していなかった。


 このままでは時空龍のいる場所へ戻るまで、一体あとどれぐらいの時間が掛かるか分からない。

 きっと普通に転生龍を振り切って封印の間に到達出来たとしても、再びここへ転移させられるだろうから無意味になる可能性は高いし、時空龍を怒らせるのはもっとまずい。

 やはり地道に時空間属性の熟練度を上げることしかないんだけど……。

「はぁ~」 

 色々考えすぎて、無意識に大きな溜息を吐いた。


 この迷宮に試練の迷宮で出現していたゾンビの群れが現れてくれれば、こんな悩みもなかったのになぁ。

 きっとそれなら直ぐに熟練度が上がって、迷宮からも……まぁさすがに高望みし過ぎか。

 少し考察していくか。


 まずはこの迷宮の魔物だけど、一体一体が強くて大きい。

 だから倒すには首を落とすのが手っ取り早い。

 もちろん魔物を倒すことでレベルは上がっているし、全体的な力も上がってきている。

 だけどそれでも接近戦だけだと、魔物からの攻撃を受けるというリスクは高まったままだ。


 いくらレベルが上がっても、レベルアップの恩恵がゲームみたいにリアルタイムで身体にフィードバックされるようなことはない。

 そのため俺の戦闘の仕方が大幅に変わることはないのだ。


 致命傷だけは避けて、回復魔法と牽制の攻撃魔法を多用して戦闘するスタイルだ。

 だからこそ集中力が切れないようにこうして休憩をとっているんだけど。 

 出来れば何か効率的な方法を――。

 その時だった。


 ふと顔と上げた俺の目に映ったのは、転生龍がブレスを吐いて魔物達が吹き飛ぶ姿だった。その直後、轟音が耳に届いく。

「完全に忘れてたな。目的に集中し過ぎて周りが見えなくなるとか……一度、試してみるか」 

 その直感は何となく、そんな曖昧で単純な思い付きだった。

 もし駄目でも魔物を倒せばレベルが上がるし、もし成功すれば早い段階で時空龍の元へと戻れる。

 それと大幅なリスク軽減が決めてのことだった。


 内容はパワーレベリングと同じ一撃離脱で、後は転生龍に滅してもらう。

 違うのは魔力剣での一撃を入れることのみ。

 経験値が上がるなら熟練度も同じように上がってくれることを祈りながら、俺は行動することにした。


 今までは首や急所のみを狙っていたけど、攻撃してくる手や脚を浅く切りつけていく。

 無理に全ての魔物に攻撃することはせずに、ある程度の数が溜まったら、世界樹へと接近していく。


 そこで世界樹を守っていた暴走中である転生龍達がこちらへ向け複数のブレスが吐き出すのを待つ。

 俺は身体強化と魔法の力を使って、全力で転生龍から放たれたブレスを回避すると、面白いように魔物達がブレスに飲み込まれていく。

 正直な話、うまくいくとは考えていなかった。

 ただ何かのきっかけになればと動いただけだった。

「これは運が良いのか、それとも豪運先生と覇運先生が導いてくれたのだろうか……」

 それで結果が出たのだから、嬉しくない筈がない。

 ステータスを確認してみると、レベルも時空間属性の熟練度も大幅に上がっていた。   

「待っていろよ、時空龍。さっさとこの迷宮から解放してもらうからな」

 こうして俺は無限ループになっているこの森を走り出した。


 自分の進路にいる魔物を斬りつけ、世界樹周辺まで魔物を誘導して、転生龍に倒してもらう。

 その副産物のレベルが上がることで、付随して上がるステータス上の数値を確認して、森を走りながら身体を動かしていく。

 もっと出来る、もっとやれると自分に暗示を掛けながらすると、本当に出来るように思えてくるから不思議だ。

 ループするごとにレベルが上がり、熟練度も上がる。

 走っている場所もほぼ同じなので、落ちている魔石を魔法袋に収納することも出来る。

 とても素晴らしい環境を手に入れた。


 そうこうしているうちに時空間属性のレベルがⅠに達したので、早速魔法を使ってみる。

「【スローダウン】」

 これは対象のスピードを落とすことが出来る魔法で、もちろん俺が発動した相手は魔物だ。


 レインスター卿から教えてもらった通り魔法を発動したことで、熟練度は五増えていた。

 成功したとは思うけど消費魔力が十五とハイヒール並みだった。

 そうなると全ての魔物相手に発動することも出来ないので、少しだけ悩んだけど、走っている自分の体力と相談して、魔力が残り三割を下回ったら休憩することを決めた。


 休憩でメリハリがついたからか、目標に向けてのサイクルが確定したからなのか、世界樹の迷宮の森を駆けるのが徐々に楽しくなっていた。

 もちろん慢心をするつもりもなく、視覚だけでなく気配、魔力で位置を把握して、万が一の攻撃にも備えていた。

 時空間属性のスキルレベルはⅡ、Ⅲと上がっていく。


 対象の素早さを上げるスピードアップ、視線の届く範囲に転移することが出来る短距離転移。

 どちらも凄い魔法だけど、やはり消費魔力は大きい。

 スピードアップは身体強化とは違い、速く動けるだけで身体の強度は上がらない。

 その為、身体強化を使いながらこの魔法を使うのが有効に思えるものだった。

 そして短距離転移は、帝国の皇帝が使った魔法で間違いないだろう。

 実際に使ってみると、視線がぶれて違和感が半端じゃなく、あまり使いたいと思えるものではなかった。


 ただこうして時空間属性魔法を使えるようになったことで、ちゃんと成長が実感出来るので、モチベーションを高く保ったまま維持出来ている。

 ただレベルの上りが五百を越えたところで一気に鈍くなり、効率的に魔物を倒していくことも検討したくなってしまうのだった。

     

お読みいただきありがとうございます。


聖者無双二巻の原稿が校閲されて戻ってきたのですが、色々ありまして凄いことになってしまっていました。

色々な方に迷惑を掛けてしまっていることに反省しながら、もっと頑張ろうと心から思う一週間でした。

i349488
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。