クレーマー激増時代 背景にはネットの普及と「高齢化」
主婦のAさん(52才)の悩みは、同居している義母のこと。
「昔から小言が多い義母ですが、最近はまるで“クレーマー”。『孫の成績が悪いのは、あなたの育て方が悪いからよ!』と怒鳴られてしまいました」
こんな理不尽な叱責は、誰しも一度は経験があるだろう。この“クレーム”は、どうすれば解決できたのだろうか。
正解は、次の4つのうちにある。
【1】「ごめんなさい。私のせいです」と必死に謝る。
【2】「だったらお義母さんが叱ってください!」と言い返す。
【3】「私は仕事がありますし、塾に行かせていますから大丈夫ですよ」と笑顔で説明する。
【4】「そんなに子供のことを心配してくださって、ありがとうございます!」と驚き、喜ぶ。
公務員として1日200件近いクレーム処理をしているうちに「いつしか元クレーマーによるファンクラブができていた」という経験をもとに、のべ8000人以上にクレーム対応を指導している、山下由美さんによると、正しい答えは【4】。
「強く言い返せばけんかになってしまいますが、自分に非があるとして必死に謝ったり、笑顔でなだめたりするような“マニュアル対応”も、ますます相手を怒らせるだけ。身近な人だけでなく、どんな相手からのクレームにも、決まりきったやり方では通用しません」(山下さん・以下同)
ここ十数年の間で、かつてのマニュアルが意味をなさなくなるほど、クレームは多様化しているのだ。
◆クレーマー激増時代!“シニアクレーマー”に注意
クレームの多様化は「“ネットの普及”と“高齢化”が原因」だと、山下さんは言う。
「SNSなどの普及で、クレーマーたちは『ネットで拡散するぞ』という新しい“脅し文句”を得てしまいました。こちらに非がなくても、ウソや個人情報をネットでばらまけば、ごく短時間で相手を追い込むことができます。それを恐れて必死に謝罪したり、お詫びの品などを渡すと、それもまた“神対応”として拡散されます。すると、征服欲を満たすことや見返りを狙った悪質なクレーマーの“カモ”にされてしまうのです」
「マニュアルではなく、相手が本当に求めている“ゴール”を見抜くべき」と山下さんは言うが、高齢者の“ゴール”には注意が必要だという。
「年を取って仕事や子育てといった生きがいを失うと、承認欲求が満たされなくなり、クレーマーになってしまう高齢者が後を絶ちません。しかし、こうした“シニアクレーマー”は、はじめは善意で若者を“指導”する場合がほとんどで、八つ当たりしたいわけではないのです」
一度“指導”がうまくいくと「もっと何かしてあげたい」という思いが募り、悪く転べば暴走する。その結果、しつこく若者を指摘する“シニアクレーマー”になる。
前出のAさんの義母は、嫁を思って言っていた小言がエスカレートして孫のことにまで口を出すようになり、つい大声を出してしまった。
「この場合は『将来のため、孫によい成績をとってほしい』というのが、義母の本当の気持ち。怒鳴られたからといって、必死に謝罪や言い訳をするのは的外れです。“子供のことを大切に思ってくれているんですね”と、義母の気持ちを汲み取って代弁し、感謝の気持ちを表してください」
これまでは謝罪や賠償で“問題(不満)の解決”ができればよかった。しかし、今やクレーマーが求めるものや、その背景までもが千差万別であり、対応の仕方も難しくなっているのだ。
※女性セブン2019年10月10日号