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聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 作者:ブロッコリーライオン

14章 転生龍と精霊からの依頼

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328 自立を促す放任主義?

 それにしても、まさかこの段階で加護をもらえるとは思ってもいなかったし、そのおかげで時空間属性が使えるようになるとも思っていなかった。


 時空間属性は転生者であることが条件で、さらに百SPと引き換えという厳しい条件を満たさなければ、本来取得することが出来ないのだ。

 だからこそレインスター卿と戦っている時も、もしもの時の為にSPを使わず、時空間属性魔法を使うことは諦めて、知識だけを学んできたのだ。


「さて転生者君、お待ちかねの修行内容だけど、今のままだと基礎レベルが低すぎて、邪神の相手なんてとても出来ないよ」

「はい」

 時空龍の言っていることは俺も分かっている。

 あれだけ強かった師匠とライオネルが子供扱いだったのだから、多少俺が強くなったといっても勝てないと思う。


「だからまずは基礎レベルを上げながら、上に現れる魔物を倒し、時空間属性魔法を訓練してきなよ。あ、転生龍達はもう倒さないでね」

「えっ、あの時空間属性の訓練は?」

 まさか何も教えてくれないってことか? さすがにそれはないだろ?


「考えるのも特訓だよ。帰りは自分でここまで転移してくるように」

 それだけ告げると、俺の足元に魔法陣が出現した。

「……!?」

 俺はそこから逃げようとしたけど、どうやら時空龍に身動きを完全に封じられているようで、動くことが出来ない。

「どれだけ早く戻って来れるのか、楽しみに待っているよ」

 その声が聞こえたと思った一瞬、視界が歪んだ気がした。


 気がつけば視界に映る景色が変わっていて、最悪なことに魔物の群れに囲まれていた。

「ふ、ふざけるな!! あ、動ける!?」

 時空龍に身体の自由をあっさりと奪われたことに悔しさがこみ上げてきたけど、まずは自らの安全を確保するために動きだす。


 身体強化を発動して、魔物の群れから離脱を計りながら、周りにいる魔物を分析する。

 囲んでいた魔物はキマイラやオルトロス、ギガンテスにキングオーガで、上空には強化版翼竜が飛行していた。


「本当に戻ってきたのか……最悪だな。そもそも時空属性の魔法を手探りしろなんて、放任主義もいいところだ」

 俺は時空龍に大きな憤りを感じたけど、こちらもこの世界に来てずっと遊んでいた訳ではない。

 幻想剣に魔力を注ぎ、近くにいたキングオーガの首を刎ねてから、熟練度鑑定を発動させると、思っていた通り熟練度が上がっていた。

「待ってろよ時空龍。絶対直ぐに帰還してやるからな」

 俺は必死に魔力を込めた幻想剣を振るうのだった。


 ◇◆◇

 ルシエルを転移させた後、時空龍は倒れ込んだまま嗤っていた。 

「ははは。中々面白いじゃないか。まさかこの僕を吹き飛ばすとはね。人族の能力が退化していると聞いていたけど、僕にダメージを与えるなんてレイン以来だ」

そこへずっと無視されていた精霊女王が声を掛ける。

「時空龍、その依代はもう駄目でしょう。力尽きて消えてしまう前に、私をこの迷宮から出してほしい」

その一言で時空龍の纏っていた空気が変わる。


「はっはっは。ラフィルーナ、君の罪は消えた訳じゃないよ」

「レインが死んでから、新たな世界樹を育てるために魔力を提供してきた」

「それは望んだ罰だったよね? 今更とは感じないのかい?」

「そう。だけどあの邪神が復活したのなら話は別。今度こそ邪神を完全に滅するために戦うことに決めたの。それが終わったらまたここに戻ってくる」

「へぇ~。あの転生者君に期待しているんだね」

 精霊女王から強い意志を感じた時空龍は面白そうに訊ねる。レインが死んでから贄になることを望んだ時とは、まるで別の存在のようにも思えたからだ。


「六精霊と龍神の加護を受けた存在を信じない訳がない。それに期待しているのは時空龍も同じはず」

「まぁね。でも僕の場合は邪神が気に入らないからっていうのと、魔族よりも人の方が見ていて面白いからなんだけどね」

「それで出してくれるの?」

「そうだな~、もし転生者君……あのルシエル君が僕の消えてしまう前に戻ってくることが出来たら、解放してあげよう」

「無理なら?」

「僕のこの依代とともに、新たな世界樹の糧になってもらうよ」

「……いいでしょう」

「あはは。まさか先が読めない賭けに君が乗ってくるなんて、なんて面白いんだろう。一応加護も上げているし、僕も彼が戻ってくることに期待しようかな」

 精霊女王は時空龍の言葉を聞きながら、レインと同じニオイのするルシエルが戻ってくることを祈るのだった。

 ◇◆◇


 戦闘を行いながら熟練度の上がりを見ていると、魔物を龍剣や飛ぶ斬撃、魔法で倒した場合は熟練度が上がらなかった。

 魔力を込めて斬った時のみ熟練度が増加することを知ってからは、即死しないことだけ考えて戦っていく。

 レインスター卿に教わった通りに魔法を創造して使おうとしても、魔力が出ていく感じがしないので、スキルレベルがⅠになるまで、戦い続けようとした。

「はぁ、はぁ、駄目だ。さすがにきつい」

 一体一体の魔物を叩くことが出来るようにはなっていたけど、囲まれたままで戦い続けるのはさすがに厳しかった。

 物体Xと聖域結界を発動して何とか気力を保ちつつ戦闘していると、レベルが既に四百を超えていた。

「……上がり過ぎだろ。俺はレインスター卿のように千レベルまでは求めてないんだけどな」

 普通に生きることを望んでいるのに、何故か修羅の道を進んでいような気がするのは勘違いだと思いたい。

 そんなことを思いながら戦闘を続けるのだった。


お読みいただきありがとうございます。

短いです。


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