2019年8月29日、マイクロソフトは、自社のAI「Microsoft Suphx(スーパー・フェニックス)」(以下、「Suphx」)がオンライン麻雀ゲーム「天鳳」において、AIにとっての最高位の段位、10段(現状、最高位「鳳凰位」は、原則としてAIには許可されていない)に到達したと発表。全世界に衝撃を与えた。
これまでにも他のAIが「天鳳」に参戦したことは過去あったが、最高位に到達するのは初めてのこと。囲碁や将棋、チェスといったテーブルゲームとは異なり、不完全な情報が多く、また運の要素が絡むと言われる麻雀は、トッププレイヤーに匹敵するAIの実現が難しいとされてきた。
今回、『科学する麻雀』などの著書で知られる麻雀の科学的研究の第一人者・とつげき東北氏、「天鳳」の最終到達点である天鳳位を史上初めて獲得し、現在はMリーグ(2019年は本日9月30日から開幕、2018年に発足した競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ)選手として活躍するASAPINこと朝倉康心氏、ここ数年にわたって麻雀AI界の先陣を切ってきた麻雀AIソフト「爆打」の開発者・水上直紀氏による鼎談が実現。「Suphx」の実力、さらに麻雀AI、麻雀界の今後について語り尽くした。
とつげき東北(以下、凸):まずは、AIで初めての「天鳳」特上卓10段達成、これは偉大なことだなと思うのだけど、ASAPIN、トッププレイヤーのMリーガーとして率直な感想は。東大大学院で麻雀AIを開発されていた水上さん、研究者としての印象は。
ASAPIN(以下、A):いや、あっぱれというところですね。マイクロソフト来ちゃったらプロは勝てるのか、と。トップレベルの「鳳凰卓」の1ランク下の「特上卓」とは言え、和了率を23%に保ちながら、放銃率を10%まで下げるって相当しんどいところですよ。ぼくでもずっとできるのかわからない。本当に攻守ともに巧いなと。
水上直紀(以下、水):AI研究していた自分の立場からだと、「あ、マイクロソフト? 黒船来ちゃった」感はあります。