そもそも違法な捕獲行為
ところでノネコ管理計画で使用している捕獲用の罠だが、実はこの罠が、本来守るべき希少種であるアマミノクロウサギやアマミトゲネズミ、ケナガネズミ、そして国の天然記念物であるルリカケスなども捕らえてしまっていることがわかった。しかも、その中には死んでしまった例もある。この罠は捕獲用と言いながらも、かなりぞんざいな使われ方をしているのだ。
2019年8月に行われた「奄美のノネコ問題院内集会」(参議院議員会館にて)指摘された内容によれば、前述の希少種は150頭以上誤捕獲され、高温多湿という劣悪な環境に水や食料が与えられないまま24時間以上放置されていたというのだ。
しかもこの捕獲活動は、違法行為でもあった。公益財団法人どうぶつ基金が調査したところによると、罠である捕獲器は、道路占有許可及び道路使用許可を得ずに旧国道58号線上に設置されて道路を占有していた。また、罠である捕獲器の内部は54度を超え熱中症や脱水により死ぬ可能性があり、雨が吹き込めば低体温症になる可能性が高い。
となれば、ノネコ以外の動物(がほとんどのようだが)については動物愛護法44条違反となる。動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)の第44条には「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。」とある。
そして「愛護動物」とは、第44条の4に「一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」「二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬は虫類に属するもの」と説明されている。
つまり、ノネコ以外の猫が含まれるのだ。
ここまでして猫を3000匹も殺処分する理由
さて、以上のように、どうにも説明がつかない猫の殺処分について、公益財団法人どうぶつ基金とNPO法人ゴールゼロ、そして福岡大学評議員・教授の山崎好裕氏らが2019年4月11日に『「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」(2018~2027年度)の見直しと猫3000頭捕獲・殺処分の中止に関する要望書』を環境大臣原田義昭、財務大臣麻生太郎、鹿児島県知事三田園訓、および奄美5市町村長宛てに提出した。
詳しい内容はプレスリリースを参照していただきたいが、気になる部分があったので以下に抽出する。
まず、ノネコ管理計画を中止すべきである理由は、すでに本稿で触れてきたこととおおむね重複するので省きたい。気になったのは、管理計画に約5億円の税金が投入されるということだ。要望書では財政逼迫のおりに税金を使うべきではないという主旨で用いられた金額だが、そこは私は興味がない(この国の仕組み上、財政逼迫などあり得ないからだ)。
問題は、約5億円が投入されるということは、そのお金を受け取る者がいるということだ。その者について、同書では「実験用のニホンザルを提供していた株式会社の後身の会社」と表現している。
「週刊文春」は、ノネコ管理計画は世界遺産登録を目指す自治体と環境省の思惑によるものだと示唆していた。しかし、この要望書からは違った面が見えてこないだろうか?
最後に、この問題を提起して筆を置きたい。24年前の1995年。奄美大島の住民たちは、アマミノクロウサギを原告として、ゴルフ場建設に反対して、県に森林開発の許可の取り消しを求める訴訟を起こした。山や森が削られるからだ。アマミノクロウサギを守るために殺処分されるべきは、猫なのだろうか。
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