にっぽんルポ
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【女の議会みち】(5)出産、育児背負って だからこそ課題が見えている
子どもが生後五カ月の時に仕事に復帰した四十代の女性区議は、ジレンマを抱えた。育児の都合で地域の会合に行けずにいれば「子どもが生まれたら顔も見せない」と言われるし、顔を出せば出したで「母親が夜、出歩いてていいのか」とか、「旦那のご飯はちゃんと作ってるのか」とか…。 議会中はベビーシッターに庁舎内で子守をしてもらい、議事の休憩時間になると授乳に走った。両立の工夫を重ねたが、子どもの寝かしつけのため、夜の付き合いは削らざるを得ない。出産前は地域の新年会に月四十件ほど行ったが、出産後は半分。子どもの急な体調不良でキャンセルすることもある。 「いろいろ言う人に悪気はないんだろうけど、悪気がないぶん根深いとも思います」 各地の議会はしばしば、少子化を課題に取り上げる。だが、足元の女性議員の日常に思いが至らないことも少なくない。 千葉県浦安市議一期の岡野純子(36)は昨年、第二子を出産した。現職議員の妊娠は初めて。周囲は「おめでとう」より先に、「えっ!」。産休制度はなく、議会事務局からは、休む理由を従来の規定にあった「事故など」の拡大解釈にしてほしいと言われた。 「そんなことを言っていたら、いつまでも女性議員は増えない」。交渉し、規定が「疾病、出産、その他の事故など」に変わった。 乳児を抱えての選挙も容易ではない。昨年末に長女を出産した東京都練馬区議二期の倉田麗華(33)は、出産後に選挙が来るように調整したが、産後の身動きの取りにくさは想像以上だった。これまで二回の選挙では欠かさなかった朝の街頭演説が、思うようにできない。二期八年の実績を街頭で直接訴えられず、「不完全燃焼になりそう」。 東久留米市議四期の原紀子(49)は三人の娘が保育園のころに初当選した。「幼児を抱えての議員活動を売り物のようにアピールするのも嫌だし、子どもの存在を感じさせないよう、がむしゃらに活動するのも変だと葛藤があった」という。 委員会が長引いたある日。園の迎えの時間が迫り、焦った。悩んだ末、挙手して「電話してきてもいいですか」と事情を説明した。委員会は休憩となり、近所の人に迎えを頼めた。 「子どもがかわいそう」「そんなにしてまでやりたいのか」と言われたこともあるが、二期目の選挙直前、活動報告に、自身が共働きの核家族で周囲の協力があって活動していることを、委員会での体験とともに掲載。「だからこそ女性の社会進出のため、保育園や学童保育の大切さを重要課題ととらえている」と表明し、吹っ切れた。 「子育て中という条件があって私の活動がある。議会にはさまざまな条件を抱えた人がいる方がいいと考えるようになった」 時には、一人では前に進めなくなることもある。彼女らを支えてきたものは-。 (敬称略) この連載へのご意見をお寄せください。 電子メール=shakai@tokyo-np.co.jp 手紙は〒100 8505(住所不要)東京新聞社会部統一選取材班。ファクス03(3595)6917 記事一覧
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