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【女の議会みち】

(1)立候補決断の理由は わたしが変えてやる

さっそうと「仕事場」の議場へ向かう女性議員=東京都中央区で

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 人生、何が起こるか分からない。

 「役場行って、戸籍謄本を取ってきて」。榛名山のふもと、群馬県榛東村に住む南千晴(34)はその朝、ボランティア仲間から言われた。理由を尋ねると、耳を疑う返事が。「あなた、選挙に出るんだよ」。え? 村議補欠選挙の告示日だった。確かに、村の議員は17人中、女性はたったの1人で、平均年齢は63歳という高齢化ぶり。「若い人や女性の声を代弁する議員が欲しいね」と話したことはある。だけど、自分が出ようなんて言ってないし、思ってもいない。

 聞いてないよ!

 ◇

 全国の地方議会で、女性議員の割合は平均11.6%。人口の半分は女性なのに、なぜ極端な男性社会であり続けるのか-。そんな疑問から、本紙は東京都内各市区町村の女性議員アンケートを実施。セクハラの実態、女性が不利な点、議席への女性枠割り当てへの賛否について、今月16~19日の紙面で結果を紹介した。だが、寄せられた回答の中に、女性議員が増えない理由として、もっと根本的な指摘があった。

 「何をしているのか知られていない」

 ならば、と首都圏の女性市区町村議たちに、あらためて聞いた。議員ってどんな仕事ですか。あなたの、ここまでの道のりを教えてください。初回は「そもそも、なぜ立候補を?」。(敬称略、社会部・生活部取材班)

◆子育て、古い慣習、動かぬ行政…議員なら

 突然、出馬を言われた群馬県榛東村の南千晴(34)。ごく普通の会社員。子どもの時から地元の和太鼓チームに所属し、清掃ボランティアなど地域活動には積極的に参加していた。そんな中で知り合った同世代の仲間たちに担ぎ上げられた。

 「あそこへ行って」「これを書いて」。仲間たちは事前に話を決めていたようで、あれよあれよという間に準備は進む。両親は朝から村長選挙の手伝いに出かけ、相談もできない。泣きたい気持ちで受け入れるしかなかった。なぜか、もう一人の男性候補者が出馬を辞退し、無投票で二人目の女性議員となった。

 それから八年。今も村議を続け、三期目だ。「議会に入ったら驚くことばかりだった。これは自分がちゃんとやらなきゃ、と責任を感じちゃったんです」。相変わらず女性議員の少ない村議会で、子育て支援などを訴えている。

 東京都北区議一期の小野田紀美(きみ)(32)は、対照的だ。幼いころから政治家を目指していた。

 母は日本人、父は米国人のハーフ。保育園児のころからいじめられ「アメリカに帰れ」と石を投げられたことも。悪を倒す少年漫画のヒーローたちに憧れ、将来の夢は正義の味方だった。

 小学校に入り、図書室で手にしたのが、古代日本の女王、卑弥呼について書かれた本だった。男性の王では争いがやまなかったのを、卑弥呼の統治で国がまとまり、人々が安心して暮らせるようになったと読んで感動。「悪を一つ一つ、つぶすより、悪いことが起きない国をつくれば、最高の正義の味方だ」とひらめき、政治家を志した。「変わってるって言われます」

 子育てを通して地元の政治に目ざめた人もいる。

 フリーライターをしていた港区議一期の清家(せいけ)愛(40)は長女を出産し、保育所へ申し込もうとしたが、入れなかった。待機児童であふれ、区の職員は「フリーの仕事じゃ、永久に入れませんね」と平気で言う。ならばと幼稚園の三年保育を調べると、こちらも狭き門。たくさんの母親たちが幼稚園受験に泣き、追い詰められていた。

 区の子育て政策を市民が話し合う会議に出席すると、委員は高齢者ばかりで「子育ては家庭で」などと議論している。ブログでやりとりを紹介すると、母親らの不満や切実な声が集まった。「この声を生かすには、議員になって行政を動かすしかない、と思った」

 文京区議一期の海津敦子(54)は、知的障害のある三女(16)の子育てで、区がニーズの高い福祉施策をやりたがらないことに業を煮やしていた。ある区職員に「ひどい。変えなきゃいけない」と訴えると「それなら議員になるのが一番早いよ」と言われた。おそらく、諦めさせるための一言。だが、それで心が決まった。「本当に当選したら、びっくりしていましたよ」

 議員嫌いが高じて議員になったのは、板橋区議一期の井上温子(30)。NPO法人で子どもからお年寄りまで誰もが集まれる地域の居場所づくりをしてきた。全国からさまざまな人が視察に来たが、迎えて一番手応えのないのが議員だった。「偉そうに大勢で来るからこっちは一番緊張するのに、その後議会で取り上げてくれることもない」

 絶対頼らないぞと心に決めていた。一方、自分のように若い世代が関わろうとしないから、政治がいつまでも変わらないのかもと思うと胸がチクリとした。そして決断する。「私、議員になる」

 □   ■ 

 さまざまなきっかけで議会への道を歩みだした女性たち。次に待つものといえば-。 (敬称略)

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